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牙を剥く狂気
助け
しおりを挟む(もう駄目!)
ぎゅっと目を瞑り、襲い来る恐怖に耐えようとした。しかし、いつまで経っても痛みが襲って来ない。
(あ…れ?)
そっと目を開くと、レムリアの身体に突き刺さる寸前で止まっているナイフ。恐る恐る視線を上げると、ヴォーグは此方を見ていなかった。
「ようやく来たか」
その言葉にドアの方を見ると、其処には無表情のリュシルが剣を手に立っていた。
「リュ、シル…」
その姿を見て、レムリアの目から涙が溢れる。
あれほど怖かったのに、リュシルを見た瞬間に身体の強張りが解ける。
「レムリア、もう大丈夫だから。もう少し待ってて。…すぐ片付ける」
そんなレムリアを見て、リュシルは安心させる様に優しくそう言うと、ヴォーグに向かって剣を構える。
「ハハッ!!やっと来たな!予定では、レムリアの死体を見て絶望してるお前を殺すつもりだったんだが…まぁ、いいさ。漸くお前をこの手で殺せる!お前を殺したら、次はレムリアだ。あぁ、大丈夫。二人共、ちゃんと惨たらしく殺してやるよ」
「黙れ」
そう言って、リュシルが一気に間合いを詰めヴォーグに斬りかかる。ヴォーグは、その剣を避け持っていたナイフを投げるが、リュシルは剣でナイフを弾く。
「それだけだと思うなよ!」
ヴォーグはそう言って、隠し持っていた何本もの暗器をリュシルに向けて放つ。時折、レムリアに向けても放つが、全てリュシルが防ぐ。
そんな事を数回行う。
「………チッ!面倒だな」
ヴォーグがぼそりと呟き、懐に手を入れて何かを隠し持つ。角度的に、レムリアにはそれが見えた。
(あれは!)
リュシルはそれに気付いてなく、再びヴォーグに飛び掛かる。それを見て、ヴォーグは手に持っていたその薬をリュシルに投げつけようとした。
「駄目!!」
痺れる身体をなんとか動かし、ヴォーグの足にしがみ付く。
「っ!?」
レムリアの思わぬ行動に体勢を崩し、薬は地面に落ちる。薬が落ちた場所は音を立てて溶け、嫌な臭いが煙と共に現れる。
「よくも邪魔を!!」
ヴォーグの気が逸れたその一瞬を見逃さず、リュシルは彼を斬る。
「がぁっ!」
左腕を斬られ、そこから沢山の血が流れる。リュシルは血の付いた剣をそのままに、ヴォーグの喉元に当てる。
「これで終わりだ」
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