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動き出す歯車

アグレ草

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「今日は付き合ってくれてありがとう」
「いえ、此方こそ誘って頂いてありがとうございます」

優しく笑うヴォーグさんに、私も微笑む。
今日はヴォーグさんと一緒に、前々から行きたいと思っていたある商会に来ていた。以前、ヴォーグさんにある商会にある調達したい薬草の話をした時。

『それなら、一緒に商会に行かない?』
『いいんですか?』
『ちょうど、俺も仕事で三日後にその商会に行くんだ。あそこは紹介状を持ってないと入れないからね』
『ありがとうございます!紹介状が手に入らなくて困ってたんです。それじゃあ三日後に』

そうして約束の三日後の今日、その商会に向かっている。私の欲しい薬草は、生産が難しく希少で滅多に市場に出回らない。手に入れるには、その商会に直接交渉しないといけないのだ。だが通常、紹介状が無いと門前払いされてしまうの。

「此処だよ。じゃあ俺は、自分の仕事の用事を済ませて来るからまた後で」
「はい」

紹介状を見せて中に入り、ヴォーグさんと別れる。レムリアは、薬草や薬を扱っている窓口へと向かう。受付には、綺麗な女性が座っており笑顔で此方を出迎えてくれた。

「いらっしゃいませ。本日は、どのようなご用件でしょうか?」
「今日は、アグレ草を買いに来たんですけど」

アグレ草は解毒剤の材料だ。
通常は、普通の解毒草を使う。アグレ草は解毒草よりも効果が強く、解毒草の効かない毒にも効果がある。しかしこの薬草は扱いが難しく、調合を少しでも間違うと依存性の高い薬が出来てしまう。なので、扱うには国に認められた薬剤師の監視の下でしか調合や使用が出来ない。

「紹介状などはお持ちでしょうか?」
「はい、これです」
「失礼します。……はい、確かに確認しました。それでは今すぐお持ちいたします」

(先生の紹介状持っててよかった。でも、商会の紹介状は自分で用意しろ…って)

商会の紹介状が手に入らなかったら、一体どうすればよかったのだろう。本当に、ヴォーグさんには感謝しか無い。

「こらちらでよろしいでしょうか?」
「……はい。大丈夫です」

そのまま包んでもらい、預けられていたお金を払い邪魔にならない様に商会を出る。

(ヴォーグさんはまだか…)

出入りする人をボーっと暫く見ていると、荷物を持ったヴォーグさんが出て来た。

「ごめん、待たせちゃったね」
「大丈夫です。もう終わりですか?」
「うん、レムリアちゃんも無事に終わったんだね。この後は、何処かに寄る?」
「いえ、特に何も無いです」
「じゃあ、帰ろうか」
「そうですね。今日は、本当にありがとうございました」

そうして行きと同じように、ニ人並んで歩き出した。
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