26 / 38
動き出す歯車
ギルバルト
しおりを挟む
今日は仕事が休みの日の為、朝から部屋の掃除をしていた。
「ふぅ~。こんなもんかな」
一通り綺麗になった部屋を見渡す。
開けた窓からは、優しい風が入って来て気持ちいい。
「レムリア~。掃除終わった?終わったなら、お使い行ってくれないかしらー」
母の声を聞きながら、ゴミを持って下に降りる。
「何買ってくればいいの?」
「卵とチーズとベーコンにリンゴ。はい、お金。余ったらお小遣いにしていいから。お願いね」
「ん、りょーかい」
家を出てゴミを捨ててから、店のある広場に向かう。
「最初に卵とリンゴを買ってからチーズとベーコンを…ん?」
考えながら歩いていると、視界を何かが横切る。
そちらに目を向けると、路地裏の影から一人の人物が此方を見ていた。私は、その顔に見覚えがあった。
(何してるのよ)
ハァ…と溜息をつき、その人物に声を掛ける。
「何してるんですか…ギル」
「…バレた?」
バレるも何も、此方をガン見しておいて。
何より、その大柄な身体が隠せていない。
「うわぁぁ~ん!!聞いてくれよレムリア~!」
泣きベソをかきながら此方に突進してくる巨体。彼の名はギルバルト。私のニ歳年上でローズの彼氏だ。
「今度はどうしたんですか?」
「ロ…ローズに!ローズに嫌われた~!!」
おいおいと泣く彼は、毎回ローズと何かあると私の所にこうして泣きながらやって来る。茶色の髪に同じ色のキリリとした瞳を持つ彼は普段は面倒見の良く年下からアニキと慕われる青年だ。しかし、ローズの事となると情けなくなってしまうのが玉に瑕だ。
(前回は、ローズに臭いって言われて泣いてたなぁ~)
「どうして嫌われたと思うんですか?」
「ローズがおっ…俺の事ウザいって!!ただローズの部屋に忍び込んで彼女を待ってただけなのに!」
はい、アウトー。
それは誰でも嫌になる。
ウザいと言われるだけで済んだのが奇跡くらいだ。
「ギル。彼氏だからって、彼女の部屋に無断で忍び込んだんだからそう言われて当然だよ」
「だって!ローズは美人だから変な奴が忍び込んでないか心配で!」
変質者が変質者を警戒している。何とも救われない話だ。
「それでも…です。ローズの家には、リュシルや両親が居るんだから大丈夫ですよ。それよりちゃんとローズのに謝って仲直りして下さい」
今頃、彼女は彼を待っているだろう。
「許してくれるかな?」
「許してもらえるよう努力するんです。…この前、新しく出来たウサギのペンダントを欲しそうに見てました」
「!!ありがとうレムリア!」
そう行って走り出すギルバルトを呆れた様に見送り、お使いをさっさと終わらせるべく再び足を動かした。
「ふぅ~。こんなもんかな」
一通り綺麗になった部屋を見渡す。
開けた窓からは、優しい風が入って来て気持ちいい。
「レムリア~。掃除終わった?終わったなら、お使い行ってくれないかしらー」
母の声を聞きながら、ゴミを持って下に降りる。
「何買ってくればいいの?」
「卵とチーズとベーコンにリンゴ。はい、お金。余ったらお小遣いにしていいから。お願いね」
「ん、りょーかい」
家を出てゴミを捨ててから、店のある広場に向かう。
「最初に卵とリンゴを買ってからチーズとベーコンを…ん?」
考えながら歩いていると、視界を何かが横切る。
そちらに目を向けると、路地裏の影から一人の人物が此方を見ていた。私は、その顔に見覚えがあった。
(何してるのよ)
ハァ…と溜息をつき、その人物に声を掛ける。
「何してるんですか…ギル」
「…バレた?」
バレるも何も、此方をガン見しておいて。
何より、その大柄な身体が隠せていない。
「うわぁぁ~ん!!聞いてくれよレムリア~!」
泣きベソをかきながら此方に突進してくる巨体。彼の名はギルバルト。私のニ歳年上でローズの彼氏だ。
「今度はどうしたんですか?」
「ロ…ローズに!ローズに嫌われた~!!」
おいおいと泣く彼は、毎回ローズと何かあると私の所にこうして泣きながらやって来る。茶色の髪に同じ色のキリリとした瞳を持つ彼は普段は面倒見の良く年下からアニキと慕われる青年だ。しかし、ローズの事となると情けなくなってしまうのが玉に瑕だ。
(前回は、ローズに臭いって言われて泣いてたなぁ~)
「どうして嫌われたと思うんですか?」
「ローズがおっ…俺の事ウザいって!!ただローズの部屋に忍び込んで彼女を待ってただけなのに!」
はい、アウトー。
それは誰でも嫌になる。
ウザいと言われるだけで済んだのが奇跡くらいだ。
「ギル。彼氏だからって、彼女の部屋に無断で忍び込んだんだからそう言われて当然だよ」
「だって!ローズは美人だから変な奴が忍び込んでないか心配で!」
変質者が変質者を警戒している。何とも救われない話だ。
「それでも…です。ローズの家には、リュシルや両親が居るんだから大丈夫ですよ。それよりちゃんとローズのに謝って仲直りして下さい」
今頃、彼女は彼を待っているだろう。
「許してくれるかな?」
「許してもらえるよう努力するんです。…この前、新しく出来たウサギのペンダントを欲しそうに見てました」
「!!ありがとうレムリア!」
そう行って走り出すギルバルトを呆れた様に見送り、お使いをさっさと終わらせるべく再び足を動かした。
1
お気に入りに追加
240
あなたにおすすめの小説
どうぞ二人の愛を貫いてください。悪役令嬢の私は一抜けしますね。
kana
恋愛
私の目の前でブルブルと震えている、愛らく庇護欲をそそる令嬢の名前を呼んだ瞬間、頭の中でパチパチと火花が散ったかと思えば、突然前世の記憶が流れ込んできた。
前世で読んだ小説の登場人物に転生しちゃっていることに気付いたメイジェーン。
やばい!やばい!やばい!
確かに私の婚約者である王太子と親しすぎる男爵令嬢に物申したところで問題にはならないだろう。
だが!小説の中で悪役令嬢である私はここのままで行くと断罪されてしまう。
前世の記憶を思い出したことで冷静になると、私の努力も認めない、見向きもしない、笑顔も見せない、そして不貞を犯す⋯⋯そんな婚約者なら要らないよね!
うんうん!
要らない!要らない!
さっさと婚約解消して2人を応援するよ!
だから私に遠慮なく愛を貫いてくださいね。
※気を付けているのですが誤字脱字が多いです。長い目で見守ってください。
この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。
天織 みお
恋愛
「おめでとうございます。奥様はご懐妊されています」
目が覚めたらいきなり知らない老人に言われた私。どうやら私、妊娠していたらしい。
「だが!彼女と子供が出来るような心当たりは一度しかないんだぞ!!」
そして、子供を作ったイケメン王太子様との仲はあまり良くないようで――?
そこに私の元婚約者らしい隣国の王太子様とそのお妃様まで新婚旅行でやって来た!
っていうか、私ただの女子高生なんですけど、いつの間に結婚していたの?!ファーストキスすらまだなんだけど!!
っていうか、ここどこ?!
※完結まで毎日2話更新予定でしたが、3話に変更しました
※他サイトにも掲載中
【完結】婚約者は私を大切にしてくれるけれど、好きでは無かったみたい。
まりぃべる
恋愛
伯爵家の娘、クラーラ。彼女の婚約者は、いつも優しくエスコートしてくれる。そして蕩けるような甘い言葉をくれる。
少しだけ疑問に思う部分もあるけれど、彼が不器用なだけなのだと思っていた。
そんな甘い言葉に騙されて、きっと幸せな結婚生活が送れると思ったのに、それは偽りだった……。
そんな人と結婚生活を送りたくないと両親に相談すると、それに向けて動いてくれる。
人生を変える人にも出会い、学院生活を送りながら新しい一歩を踏み出していくお話。
☆※感想頂いたからからのご指摘により、この一文を追加します。
王道(?)の、世間にありふれたお話とは多分一味違います。
王道のお話がいい方は、引っ掛かるご様子ですので、申し訳ありませんが引き返して下さいませ。
☆現実にも似たような名前、言い回し、言葉、表現などがあると思いますが、作者の世界観の為、現実世界とは少し異なります。
作者の、緩い世界観だと思って頂けると幸いです。
☆以前投稿した作品の中に出てくる子がチラッと出てきます。分かる人は少ないと思いますが、万が一分かって下さった方がいましたら嬉しいです。(全く物語には響きませんので、読んでいなくても全く問題ありません。)
☆完結してますので、随時更新していきます。番外編も含めて全35話です。
★感想いただきまして、さすがにちょっと可哀想かなと最後の35話、文を少し付けたしました。私めの表現の力不足でした…それでも読んで下さいまして嬉しいです。
契約結婚の終わりの花が咲きます、旦那様
日室千種・ちぐ
恋愛
エブリスタ新星ファンタジーコンテストで佳作をいただいた作品を、講評を参考に全体的に手直ししました。
春を告げるラクサの花が咲いたら、この契約結婚は終わり。
夫は他の女性を追いかけて家に帰らない。私はそれに傷つきながらも、夫の弱みにつけ込んで結婚した罪悪感から、なかば諦めていた。体を弱らせながらも、寄り添ってくれる老医師に夫への想いを語り聞かせて、前を向こうとしていたのに。繰り返す女の悪夢に少しずつ壊れた私は、ついにある時、ラクサの花を咲かせてしまう――。
真実とは。老医師の決断とは。
愛する人に別れを告げられることを恐れる妻と、妻を愛していたのに契約結婚を申し出てしまった夫。悪しき魔女に掻き回された夫婦が絆を見つめ直すお話。
全十二話。完結しています。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
私のバラ色ではない人生
野村にれ
恋愛
ララシャ・ロアンスラー公爵令嬢は、クロンデール王国の王太子殿下の婚約者だった。
だが、隣国であるピデム王国の第二王子に見初められて、婚約が解消になってしまった。
そして、後任にされたのが妹であるソアリス・ロアンスラーである。
ソアリスは王太子妃になりたくもなければ、王太子妃にも相応しくないと自負していた。
だが、ロアンスラー公爵家としても責任を取らなければならず、
既に高位貴族の令嬢たちは婚約者がいたり、結婚している。
ソアリスは不本意ながらも嫁ぐことになってしまう。
貴方の事を愛していました
ハルン
恋愛
幼い頃から側に居る少し年上の彼が大好きだった。
家の繋がりの為だとしても、婚約した時は部屋に戻ってから一人で泣いてしまう程に嬉しかった。
彼は、婚約者として私を大切にしてくれた。
毎週のお茶会も
誕生日以外のプレゼントも
成人してからのパーティーのエスコートも
私をとても大切にしてくれている。
ーーけれど。
大切だからといって、愛しているとは限らない。
いつからだろう。
彼の視線の先に、一人の綺麗な女性の姿がある事に気が付いたのは。
誠実な彼は、この家同士の婚約の意味をきちんと理解している。だから、その女性と二人きりになる事も噂になる様な事は絶対にしなかった。
このままいけば、数ヶ月後には私達は結婚する。
ーーけれど、本当にそれでいいの?
だから私は決めたのだ。
「貴方の事を愛してました」
貴方を忘れる事を。
【完結】私を虐げる姉が今の婚約者はいらないと押し付けてきましたが、とても優しい殿方で幸せです 〜それはそれとして、家族に復讐はします〜
ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
侯爵家の令嬢であるシエルは、愛人との間に生まれたせいで、父や義母、異母姉妹から酷い仕打ちをされる生活を送っていた。
そんなシエルには婚約者がいた。まるで本物の兄のように仲良くしていたが、ある日突然彼は亡くなってしまった。
悲しみに暮れるシエル。そこに姉のアイシャがやってきて、とんでもない発言をした。
「ワタクシ、とある殿方と真実の愛に目覚めましたの。だから、今ワタクシが婚約している殿方との結婚を、あなたに代わりに受けさせてあげますわ」
こうしてシエルは、必死の抗議も虚しく、身勝手な理由で、新しい婚約者の元に向かうこととなった……横暴で散々虐げてきた家族に、復讐を誓いながら。
新しい婚約者は、社交界でとても恐れられている相手。うまくやっていけるのかと不安に思っていたが、なぜかとても溺愛されはじめて……!?
⭐︎全三十九話、すでに完結まで予約投稿済みです。11/12 HOTランキング一位ありがとうございます!⭐︎
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる