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過去の記憶
ルールと八年の月日
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その後、私は女の子の家に行ってきちんと謝った。
彼女は、自分を突き飛ばして怪我をさせた私を笑って許してくれた。
『レムちゃんが態とじゃ無いって事は分かってるから。だって私を突き飛ばしたレムちゃん、すっごく傷付いた顔してたから』
彼女の膝の怪我も、殆ど目立たなくなっていた。
もう一度謝り、次にリュシュオンの家に行く。
(リュシュオン会ってくれるかな…)
不安になりながらも、家に着き戸を叩く。
「は~い。あら?レムちゃんどうしたの?」
中から、リュシュオンのお母さんのモーラさんが出てくる。
「あのっ!リュシュオン…居ますか?」
「あの子なら今部屋にいるわ。よかったら上がって頂戴」
「お邪魔します」
家に入ると、美味しそうなシチューの匂いがした。
「何かあったの?あの子、帰って来てから様子が変で…」
「実は…」
私は、今日あった事を全て話す。
自分の番がリュシュオンだと言う事。
嫉妬して、一緒にいた女の子を突き飛ばし怪我をさせた事。
リュシュオンに言われた事。
両親に言われた事。
彼女に謝った事。
自分の想いを。
「そう、そんな事があったのね」
「私、リュシュオンが好きです。番だからってだけじゃありません。確かに、あの時は番だからって気持ちが強かったけど、私はリュシュオンの優しい所とか真面目な性格とか、ちゃんとリュシュオン自身が好きです」
番だからリュシュオンが好き。
そう思われたくなかった。
ちゃんと私自身が彼を好きだと言う事を、彼の母親に知っていて欲しかった。
「正直に話してくれてありがとう。あの子もこんな可愛い子に此処まで好きになって貰えるなんて幸せね」
「そんな事ないです。私、リュシュオンを怒らせちゃったし…嫌われてるかも」
「そうだとしても諦めないんでしょう?」
「はい!」
モーラさんは、そんな私に優しく笑いかける。
「後は、当人同士が話し合って決めるべきね。部屋にいるから話し合って来てね」
そのまま料理を再開したモーラさんにお礼を言い、彼の部屋に向かった。
ーートントン。
「…リュシュオン。さっきは、急に番だなんて言ってごめんなさい。あの子にもちゃんと謝って来たよ」
部屋からは返事が無い。
それでも話し続ける。
「私、今日初めてリュシュオンを番だと認識したの。私…リュシュオンが好き。でもね、番だからリュシュオンが好きって訳じゃ無いの。本当は、ずっと前からリュシュオンが好きだった」
いつからだろう。
頼りになる兄の様な彼を、異性として意識し始めたのは…。
「だから…私と付き合って下さいっ!」
緊張で耳も尻尾もピンっと立ってるのが分かる。
「……俺は、レムをそんな風に見た事一度もない」
扉越しに彼が答える。
「今まで妹みたいにしか思った事ないし。それにレムも、今までそんな素振り見せなかったじゃないか」
「それは…」
(リュシュオンとの関係が壊れるのが怖かったから)
「急に言われても困る。大体、俺好きな子が居るし」
「っ!…それでも。それでもリュシュオンが好き!私、リュシュオンに好きになって貰える様に頑張るから」
「…勝手にしたら。でもいくつかルールを守れよ」
「ルール?」
ーーリュシュオンの好きになった子に手を出さない事。
ーーリュシュオンを束縛しない事。
ーー告白は1日一度だけ。
ーーリュシュオンの邪魔はしない事。
「これが守れないなら、俺に近付かないでくれ」
「わかった!ちゃんと守る」
そうして、次の日から私はリュシュオンに好かれる様に努力した。可愛く見える様に、今まで以上に外見や服装に気を遣い、苦手な料理も練習した。彼が成人し騎士団に入隊し会う時間が減ると、少しでも彼に会うために苦手な早起きをして僅かな時間を過ごす。
辛くないと言ったら嘘になる。
それでも、リュシュオンに会えるだけでレムは幸せだった。
そんな事を繰り返し、気付いたら八年もの年月が経っていた。
彼女は、自分を突き飛ばして怪我をさせた私を笑って許してくれた。
『レムちゃんが態とじゃ無いって事は分かってるから。だって私を突き飛ばしたレムちゃん、すっごく傷付いた顔してたから』
彼女の膝の怪我も、殆ど目立たなくなっていた。
もう一度謝り、次にリュシュオンの家に行く。
(リュシュオン会ってくれるかな…)
不安になりながらも、家に着き戸を叩く。
「は~い。あら?レムちゃんどうしたの?」
中から、リュシュオンのお母さんのモーラさんが出てくる。
「あのっ!リュシュオン…居ますか?」
「あの子なら今部屋にいるわ。よかったら上がって頂戴」
「お邪魔します」
家に入ると、美味しそうなシチューの匂いがした。
「何かあったの?あの子、帰って来てから様子が変で…」
「実は…」
私は、今日あった事を全て話す。
自分の番がリュシュオンだと言う事。
嫉妬して、一緒にいた女の子を突き飛ばし怪我をさせた事。
リュシュオンに言われた事。
両親に言われた事。
彼女に謝った事。
自分の想いを。
「そう、そんな事があったのね」
「私、リュシュオンが好きです。番だからってだけじゃありません。確かに、あの時は番だからって気持ちが強かったけど、私はリュシュオンの優しい所とか真面目な性格とか、ちゃんとリュシュオン自身が好きです」
番だからリュシュオンが好き。
そう思われたくなかった。
ちゃんと私自身が彼を好きだと言う事を、彼の母親に知っていて欲しかった。
「正直に話してくれてありがとう。あの子もこんな可愛い子に此処まで好きになって貰えるなんて幸せね」
「そんな事ないです。私、リュシュオンを怒らせちゃったし…嫌われてるかも」
「そうだとしても諦めないんでしょう?」
「はい!」
モーラさんは、そんな私に優しく笑いかける。
「後は、当人同士が話し合って決めるべきね。部屋にいるから話し合って来てね」
そのまま料理を再開したモーラさんにお礼を言い、彼の部屋に向かった。
ーートントン。
「…リュシュオン。さっきは、急に番だなんて言ってごめんなさい。あの子にもちゃんと謝って来たよ」
部屋からは返事が無い。
それでも話し続ける。
「私、今日初めてリュシュオンを番だと認識したの。私…リュシュオンが好き。でもね、番だからリュシュオンが好きって訳じゃ無いの。本当は、ずっと前からリュシュオンが好きだった」
いつからだろう。
頼りになる兄の様な彼を、異性として意識し始めたのは…。
「だから…私と付き合って下さいっ!」
緊張で耳も尻尾もピンっと立ってるのが分かる。
「……俺は、レムをそんな風に見た事一度もない」
扉越しに彼が答える。
「今まで妹みたいにしか思った事ないし。それにレムも、今までそんな素振り見せなかったじゃないか」
「それは…」
(リュシュオンとの関係が壊れるのが怖かったから)
「急に言われても困る。大体、俺好きな子が居るし」
「っ!…それでも。それでもリュシュオンが好き!私、リュシュオンに好きになって貰える様に頑張るから」
「…勝手にしたら。でもいくつかルールを守れよ」
「ルール?」
ーーリュシュオンの好きになった子に手を出さない事。
ーーリュシュオンを束縛しない事。
ーー告白は1日一度だけ。
ーーリュシュオンの邪魔はしない事。
「これが守れないなら、俺に近付かないでくれ」
「わかった!ちゃんと守る」
そうして、次の日から私はリュシュオンに好かれる様に努力した。可愛く見える様に、今まで以上に外見や服装に気を遣い、苦手な料理も練習した。彼が成人し騎士団に入隊し会う時間が減ると、少しでも彼に会うために苦手な早起きをして僅かな時間を過ごす。
辛くないと言ったら嘘になる。
それでも、リュシュオンに会えるだけでレムは幸せだった。
そんな事を繰り返し、気付いたら八年もの年月が経っていた。
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