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第2章
No.235
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書斎に入ったゼロとダグは、目の前の執務机に座るアルフォンスと対峙していた。
(流石は、『血濡れの火竜』と呼ばれる男だ。こうして向かい合っているだけで、身が竦む様な威圧感を感じる)
ゼロは、初めて直接見るアルフォンスを違和感が無い様に観察する。数々の危険な修羅場を経験して来たゼロ。その為、対面する相手の強さが自然と分かる様になっていた。
ゼロ自身とダグ、それにカレンを含めた三人で挑んでも、アルフォンスには決して勝てないと本能が告げていた。
「ジールにドッサ。お前達が急にやって来たという事は、緊急の案件だな?」
アルフォンスの言葉に、ドッサが答える。
「はっ!ハロルド副団長からの伝言です。現在、王都内で起きている謎の煙や爆発などが原因で多くの民が混乱状態。何とか、騎士団で沈静化を行っていますが、その為に原因究明をする人手不足が発生。その為、アルフォンス団長に応援を頼みたいとの事です!」
それに続いて、ジールが口を開く。
「また、アルフォンス団長には現場に居る数名の騎士と共に、最初に謎の煙や爆発の起こった中央噴水広場前の方を調べて欲しいそうです!」
今、二人の行った事は本当にハロルドが伝言した事だ。ゼロの魔法によって、ほんの直前までのジールとドッサの記憶を知っている二人。それに加えて、カレンの変身魔法によって姿形はおろか気配や匂いまで本物と同じだ。この方法により、三人は今までも多くの依頼を達成して来た。
「………そうか。わかった、直ぐに俺も出よう」
暫く考え込んでいたアルフォンスは、そう言って椅子から立ち上がる。如何やら、アルフォンスは二人の正体が偽者だとは気が付いていない様だ。
「お前達も、俺について来い」
「「はっ!」」
アルフォンスの言葉に、勢い良く返事をした二人。
(そろそろ、ダグが撒いた眠り粉が屋敷全体に広まる頃だ。耐性のある俺とダグ以外は、もう眠った頃だな)
そうして、アルフォンスがドッサの横を通り抜けようとした瞬間ーー。
ーードサリ。
「なっ……」
小さな驚きの声を上げて、アルフォンスも床に倒れる。そうして、直ぐに静かな寝息が聞こえて来た。
「………漸く眠ったな」
「はい、完全に。なんせ、俺達の身体にも大量の眠り粉が付いていますからね。………しかし、流石はドラゴニールの守護竜。まさか、効くまでにこれ程時間がかかるとは思いませんでした」
本来二人が身体に身に纏う眠り粉の量なら、1分足らずで眠りについてしまう筈なのだ。それなのに、眠りにつくまで5分も掛かった。
「正直、効かないのかと思って焦りました」
「だが、ちゃんと聞いた様だな。直ぐに、動くぞ」
「とどめを刺さなくていいんですか?」
「本来なら、とどめを刺すところだが…。今は、そんな事をしている時間は無い。この混乱で、王都をの出入りに規制がかかっている筈だ。時間が経つほど、出る事が厳しくなる。だから、早く女を拐って国を出るぞ」
そう言って、ゼロは倒れているアルフォンスに目をくれずにダグを連れて書斎を出るのだった。
(流石は、『血濡れの火竜』と呼ばれる男だ。こうして向かい合っているだけで、身が竦む様な威圧感を感じる)
ゼロは、初めて直接見るアルフォンスを違和感が無い様に観察する。数々の危険な修羅場を経験して来たゼロ。その為、対面する相手の強さが自然と分かる様になっていた。
ゼロ自身とダグ、それにカレンを含めた三人で挑んでも、アルフォンスには決して勝てないと本能が告げていた。
「ジールにドッサ。お前達が急にやって来たという事は、緊急の案件だな?」
アルフォンスの言葉に、ドッサが答える。
「はっ!ハロルド副団長からの伝言です。現在、王都内で起きている謎の煙や爆発などが原因で多くの民が混乱状態。何とか、騎士団で沈静化を行っていますが、その為に原因究明をする人手不足が発生。その為、アルフォンス団長に応援を頼みたいとの事です!」
それに続いて、ジールが口を開く。
「また、アルフォンス団長には現場に居る数名の騎士と共に、最初に謎の煙や爆発の起こった中央噴水広場前の方を調べて欲しいそうです!」
今、二人の行った事は本当にハロルドが伝言した事だ。ゼロの魔法によって、ほんの直前までのジールとドッサの記憶を知っている二人。それに加えて、カレンの変身魔法によって姿形はおろか気配や匂いまで本物と同じだ。この方法により、三人は今までも多くの依頼を達成して来た。
「………そうか。わかった、直ぐに俺も出よう」
暫く考え込んでいたアルフォンスは、そう言って椅子から立ち上がる。如何やら、アルフォンスは二人の正体が偽者だとは気が付いていない様だ。
「お前達も、俺について来い」
「「はっ!」」
アルフォンスの言葉に、勢い良く返事をした二人。
(そろそろ、ダグが撒いた眠り粉が屋敷全体に広まる頃だ。耐性のある俺とダグ以外は、もう眠った頃だな)
そうして、アルフォンスがドッサの横を通り抜けようとした瞬間ーー。
ーードサリ。
「なっ……」
小さな驚きの声を上げて、アルフォンスも床に倒れる。そうして、直ぐに静かな寝息が聞こえて来た。
「………漸く眠ったな」
「はい、完全に。なんせ、俺達の身体にも大量の眠り粉が付いていますからね。………しかし、流石はドラゴニールの守護竜。まさか、効くまでにこれ程時間がかかるとは思いませんでした」
本来二人が身体に身に纏う眠り粉の量なら、1分足らずで眠りについてしまう筈なのだ。それなのに、眠りにつくまで5分も掛かった。
「正直、効かないのかと思って焦りました」
「だが、ちゃんと聞いた様だな。直ぐに、動くぞ」
「とどめを刺さなくていいんですか?」
「本来なら、とどめを刺すところだが…。今は、そんな事をしている時間は無い。この混乱で、王都をの出入りに規制がかかっている筈だ。時間が経つほど、出る事が厳しくなる。だから、早く女を拐って国を出るぞ」
そう言って、ゼロは倒れているアルフォンスに目をくれずにダグを連れて書斎を出るのだった。
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