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第2章

No.229

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「しかし、本当にこの幻の魔法は素晴らしいですね」

ドランは、感心した様にそう言った。
スンッと鼻を鳴らして辺りの匂いを嗅ぐ。すると、幻の筈なのに本物の爆薬の香りがする。

「視覚だけでなく、嗅覚、聴覚、触覚にまで影響を及ぼす幻覚魔法。本当に、素晴らしいです」
「当たり前だろう?代々の竜王が貯めてきた膨大な魔力を使ってるんだ。………まぁ、この魔法が使えるのは竜王が国中に巡らせた魔力の結界内限定だけどな」

今回の常闇が用意した本物とすり替えた偽物は、歴代の竜王が代々貯めてきた魔力を幻覚の魔道具に込めた物だ。それを王国騎士団達に渡し、王都内の至る所に仕掛けられた本物とすり替えさせたのだ。
歴代の竜王達の膨大な魔力を込められた幻覚の魔道具は、まるで本物の様に人々の五感にまで影響を及ぼした。

だが、歴代竜王の魔力を物にも欠点はある。

それは、竜王が張る結界内でしか使えないと言うものだ。どんなに竜王の魔力を込めた魔道具などでも、結界内を出た途端に全ての魔力が消えてしまう。

これらは全て、余計な争いを生まない為だ。
強大な力は、争いを生む。

誰かを傷付ける為でなく、国を守ることのみを考えた優しい竜王達の決意のあらわれだった。

「ですが、これで作戦はほぼ成功したと言っても過言ではありません。歴代の偉大な竜王達に感謝ですね」
「俺は?」
「早速、次の段階に進まなくては」
「ねぇ、俺は?」

ドランは、褒めて欲しいバンラートを無視して騎士団副団長ハロルドを呼ぶ。大柄で厳つい騎士には見えないハロルドは、直ぐにやって来た。

「お呼びでしょうか」
「第一段階は成功しました。次の第二段階に進みます。直ぐに騎士団長に連絡を。作戦通りに、半数は王都内の混乱の対応を。残りは、常闇捕縛の為にサザーランド邸へ」
「はっ!」

ハロルドは、勢いよく返事をすると直ぐに部屋を出て行った。

「………さて、私達も直ぐに動きましょう」

だが、バンラートはふてくされた様に執務机に寝そべっていた。

「ふんっ!ドランが全部やったらいいだろ?俺なんて、俺なんて…」

そんな彼に、ドランは素晴らしい笑みを浮かべて言った。

「陛下。これが全て解決したら、1週間の休みを上げる予定なのですが…」
「よし、直ぐにやるぞ」

その言葉に、ドランは満足気に頷くのだった。
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