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第2章
No.224
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叩かれた扉を直ぐには開けず、ステインは側に立て掛けておいた剣を手に取り、暫く無言で扉を見つめる。するともう一度、今度は何回かに分けて扉がノックされる。
ーートントン、トトン、トントン。
それを聞いて、ようやくステインは警戒を解き扉を開ける。扉の先には、茶色いローブをすっぽりとかぶった人物が立っていた。その人物が、自身の待っていた人物だと確認したステインは、部屋へと招き入れる。そうして、廊下に誰もいない事を確認してから扉を閉める。
パタンと言う扉を閉めた音を最後に、部屋に静寂が訪れる。
「………」
「………」
五分ほど経っただろうか。
先には沈黙を破ったのは、茶色いローブを着た人物だった。
「………久し振りだね、ステイン」
そう言って、その人物はローブのフードを取る。そうしてフードの下から現れたのは、ファウアーム王太子ドーベルだった。気の弱そうな少し青白い顔に気まずさを浮かべながら、目の前の異母弟に声をかける。
対するステインも、気まずげに話だす。
「…久し振り、ドーベル義兄さん。最後に会った時より、元気そうだな」
「…うん。あれから、体調を崩す事も少なくなってね。今では、殆ど倒れる事もないんだ」
「そっか。よかったな…」
「うん…」
「………」
「………」
そうして、また無言になり沈黙が訪れる。
だが、先程とは違い直ぐにステインがドーベルの目を見て口を開く。
「………ドーベル義兄さん。今回の事、手紙で教えてくれてありがとう。ドーベル義兄さんがアイツ等の企みを教えてくれたお陰で、バンラート陛下と取引が出来た。………本当にありがとう」
その言葉に、ドーベルは首を横に振る。
「礼など不要だ。本来なら、此方側から正式な謝罪をしなければならない事だ。それなのに、それもせずに今も馬鹿な計画を進める父上達を止める事が出来たねいない。………それなのに、バンラート陛下は寛大な対応をしてくれている。此方が誠心誠意感謝こそすれど、礼をされるいわれは無い」
そう言って、ドーベルは悔しそうに拳を握り締める。握り締めたその拳から、ポタポタと赤い滴が床に落ちる。
そんなドーベルを見ながら、ステインは穏やかな声で話だす。
「……俺、アルベール兄さんの娘を見つけたんだ。名前はマコト。俺はマコって呼んでる」
その言葉に、ドーベルは勢いよく顔を上げる。そして、震える声でステインに尋ねる。
「その子は……マコはどんな子なんだ?」
「とっても優しい子だよ。周りの人から好かれる所なんか、アルベール兄さんとそっくりだ」
「そう、か…」
それを聞いて、ドーベルは泣きそうな顔で笑ったのだった。
ーートントン、トトン、トントン。
それを聞いて、ようやくステインは警戒を解き扉を開ける。扉の先には、茶色いローブをすっぽりとかぶった人物が立っていた。その人物が、自身の待っていた人物だと確認したステインは、部屋へと招き入れる。そうして、廊下に誰もいない事を確認してから扉を閉める。
パタンと言う扉を閉めた音を最後に、部屋に静寂が訪れる。
「………」
「………」
五分ほど経っただろうか。
先には沈黙を破ったのは、茶色いローブを着た人物だった。
「………久し振りだね、ステイン」
そう言って、その人物はローブのフードを取る。そうしてフードの下から現れたのは、ファウアーム王太子ドーベルだった。気の弱そうな少し青白い顔に気まずさを浮かべながら、目の前の異母弟に声をかける。
対するステインも、気まずげに話だす。
「…久し振り、ドーベル義兄さん。最後に会った時より、元気そうだな」
「…うん。あれから、体調を崩す事も少なくなってね。今では、殆ど倒れる事もないんだ」
「そっか。よかったな…」
「うん…」
「………」
「………」
そうして、また無言になり沈黙が訪れる。
だが、先程とは違い直ぐにステインがドーベルの目を見て口を開く。
「………ドーベル義兄さん。今回の事、手紙で教えてくれてありがとう。ドーベル義兄さんがアイツ等の企みを教えてくれたお陰で、バンラート陛下と取引が出来た。………本当にありがとう」
その言葉に、ドーベルは首を横に振る。
「礼など不要だ。本来なら、此方側から正式な謝罪をしなければならない事だ。それなのに、それもせずに今も馬鹿な計画を進める父上達を止める事が出来たねいない。………それなのに、バンラート陛下は寛大な対応をしてくれている。此方が誠心誠意感謝こそすれど、礼をされるいわれは無い」
そう言って、ドーベルは悔しそうに拳を握り締める。握り締めたその拳から、ポタポタと赤い滴が床に落ちる。
そんなドーベルを見ながら、ステインは穏やかな声で話だす。
「……俺、アルベール兄さんの娘を見つけたんだ。名前はマコト。俺はマコって呼んでる」
その言葉に、ドーベルは勢いよく顔を上げる。そして、震える声でステインに尋ねる。
「その子は……マコはどんな子なんだ?」
「とっても優しい子だよ。周りの人から好かれる所なんか、アルベール兄さんとそっくりだ」
「そう、か…」
それを聞いて、ドーベルは泣きそうな顔で笑ったのだった。
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