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第2章
No.220
しおりを挟むーーそうして、どのくらいの時間が経っただろう。
ガチャッという音と共に、寝室の扉が開く。
その瞬間、真琴は「ガチンッ!」と固まる。
「すまない、真琴。随分と待たせてしまったな」
そう言って入って来たアルフォンスは、一言で言えばヤバかった。
風呂に入っていたのだろう。
しっとりとした肌に、ほんのりと色づいた頬。いつも一つに結んでいる長い髪は、解かれ未だ濡れて背中に流れている。薄い寝巻きの胸元は大きく肌蹴ており、普段よりも一段と色気が出ていた。
(もう死にそう…)
その姿を見て、覚悟を決めた筈の心が折れそうになった。
ーーこんな色気の権化みたいな妖しく美しい男と、これから身体を重ねる……?
………無理だ。
色んな意味で死んでしまう。
「………真琴?どうしたんだ?」
目を見開いて固まる真琴に、アルフォンスは心配そうに声をかける。だが、真琴は何の反応も示さない。
「真琴、怒ってるのか?」
そう言って、アルフォンスは真琴に近付く。
(………あ、良い匂い)
動かない頭で、そんな事を思う。
自身の心臓の音が耳元で聞こえる。
その音は、優秀なアルフォンスの耳にも届いていた。
(真琴、こんな鼓動を速くして…)
呆然と自身に見惚れる番を見て、アルフォンスの鼓動も早くなる。番が自身のベッドの上に居て、興奮しない男はいない。平然を装ってはいるが、今直ぐにでも目の前の愛しい番を押し倒したい。
ーーだが、アルフォンスは今にも伸びそうな手をグッと抑える。
(落ち着け、落ち着くんだ俺…)
真琴は、一緒に寝る事を了承したが「そういう意味」も含めて了承したのでは無い事は分かっていた。
(今、感情に任せて襲ったら今までの苦労が全て水の泡だそ…!)
何の為に、今まで我慢したと思っている。
それは、全て真琴に嫌われない為だ。
それなのに、今手を出したら一生後悔する事になるだろう。だから、アルフォンスはグッと堪えながら口を開く。
「こんなに冷えて…。このままでは風邪を引いてしまう。ほら、おいで」
「え、あっ…!」
ソッと真琴の手を引いて、真琴と共にアルフォンスはベッドに寝転ぶ。ギュッと真琴を自身の腕の中に閉じ込めると、真琴は漸く動き出す。
「アルフォンスさんっ!あのっ、その…!」
「しぃ~。あまり大声を出すと、皆の眠りを妨げてしまうぞ?」
……まぁ、確かに夜遅いがこの時間帯では使用人達は未だ働いている。だが、それを知らない真琴は慌てた様に自身の口を塞ぐ。
「っ!」
「いい子だ…」
そう言って、ポンポンと一定のリズムで真琴の背中を叩く。その動きに、真琴の身体から力が抜ける。
(………温かい)
暗闇の中、愛しい恋人の温もりと鼓動を聞いているうちに真琴は静かに眠りに落ちていった。安心しきって眠る真琴を見て、アルフォンスも幸せな気持ちで眠りに付くのだった。
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