上 下
220 / 244
第2章

No.219

しおりを挟む
現在、真琴はベッドに座りながらガチガチに緊張していた。外の風が窓を揺らす音にさえビクッと反応し、更に緊張する有様だった。

(落ち着いて、落ち着くのよ真琴…。そうよ、深呼吸するのよ。ヒッヒッフ~、ヒッヒッフ~)

別の呼吸法になっている事自体、緊張のあまり真琴は気が付かない。

そもそも、何故真琴がこんなにも緊張しているのか。ーーそれは、此処がアルフォンスの寝室だからである。

アルフォンスからのプロポーズを受けた後、屋敷内はお祭り騒ぎとなった。料理長がいつもより更に力を入れた料理を食べた後、アルフォンスが言ったのだ。

『今日からオレと同じ部屋で寝ないか?』

勿論、断ってくれてもいいと言われたが、もっと一緒に居たかった真琴は直ぐに頷いた。そこら辺は厳しいリディアからも、お許しが出る。そして、もっとも騒ぎそうなステインだが、彼は真琴達が帰って来る少し前に出掛けたっきり未だ戻って来ていない。その為、今日から真琴はアルフォンスと共に一緒に寝る事になったのだ。

お風呂に入り、髪などを手入れされ用意された服を着て寝室に入る。そうしてやっと、真琴は一緒に寝る意味に気が付いた。

恋人ーーいや、プロポーズされて夫婦になる二人が一緒のベッドで寝る。
それはつまりーー。

ボンッ!と音が出たと思う程に、真琴の顔は一気に赤くなる。

(わわわ私っ、これからアルフォンスさんと……)

真琴はこうなる事を意識して一緒のベッドで寝る事に賛成した訳ではない。だが、アルフォンスからしてみれば、それ込みでの誘いだったのだろう。

いくら「そう言う意味の誘いだとは思わなかった」と言っても、今更それを拒否するのは余りにも酷い。何より、今まで散々アルフォンスには怖がる真琴に合わせて色々と我慢させているのだ。此処でアルフォンスを拒んだら、恋人として、妻として最低であると真琴は思った。

(大丈夫。アルフォンスさんは優しくしてくれる…。それに、大人だから経験豊富だろうし!)

自分で経験豊富だと思っておきながら、気分が悪くなる。

(私の馬鹿っ!過去は過去、今は今でしょ!?)

大体、あのルックスに公爵家当主、そして騎士団長と言う肩書の男なのだ。そんなアルフォンスがモテない訳が無い。経験豊富と言う事実に嫉妬するが、逆に童貞だと言われたら…。それはそれで、微妙だ。

(何より、アルフォンスさんは出会ってからずっと誠実だった)

今までのアルフォンスを思い出すと、胸が暖かくなる。

「大丈夫。私は、アルフォンスさんを信じるだけ」

そうして、心を決めた真琴は緊張しながらアルフォンスを待つのだった。








しおりを挟む
感想 172

あなたにおすすめの小説

私の上司は竜人で私はその番でした。

銀牙狼
恋愛
2021年4月、私は仙台HBG(星川バンクグループ)銀行に就職。優しい先輩にイケメン上司、頑張るぞと張り切っていたのにまさかこんなことになるなんて。

愛人をつくればと夫に言われたので。

まめまめ
恋愛
 "氷の宝石”と呼ばれる美しい侯爵家嫡男シルヴェスターに嫁いだメルヴィーナは3年間夫と寝室が別なことに悩んでいる。  初夜で彼女の背中の傷跡に触れた夫は、それ以降別室で寝ているのだ。  仮面夫婦として過ごす中、ついには夫の愛人が選んだ宝石を誕生日プレゼントに渡される始末。  傷つきながらも何とか気丈に振る舞う彼女に、シルヴェスターはとどめの一言を突き刺す。 「君も愛人をつくればいい。」  …ええ!もう分かりました!私だって愛人の一人や二人!  あなたのことなんてちっとも愛しておりません!  横暴で冷たい夫と結婚して以降散々な目に遭うメルヴィーナは素敵な愛人をゲットできるのか!?それとも…?なすれ違い恋愛小説です。

美しき妖獣の花嫁となった

下菊みこと
恋愛
孤独な美しき妖獣と、孤独な男爵家の娘の異類婚姻譚。 愛をお互いに与え合う二人の行く末は。 小説家になろう様でも投稿しております。

竜帝と番ではない妃

ひとみん
恋愛
水野江里は異世界の二柱の神様に魂を創られた、神の愛し子だった。 別の世界に産まれ、死ぬはずだった江里は本来生まれる世界へ転移される。 そこで出会う獣人や竜人達との縁を結びながらも、スローライフを満喫する予定が・・・ ほのぼの日常系なお話です。設定ゆるゆるですので、許せる方のみどうぞ!

竜人のつがいへの執着は次元の壁を越える

たま
恋愛
次元を超えつがいに恋焦がれるストーカー竜人リュートさんと、うっかりリュートのいる異世界へ落っこちた女子高生結の絆されストーリー その後、ふとした喧嘩らか、自分達が壮大な計画の歯車の1つだったことを知る。 そして今、最後の歯車はまずは世界の幸せの為に動く!

【本編完結】番って便利な言葉ね

朝山みどり
恋愛
番だと言われて異世界に召喚されたわたしは、番との永遠の愛に胸躍らせたが、番は迎えに来なかった。 召喚者が持つ能力もなく。番の家も冷たかった。 しかし、能力があることが分かり、わたしは一人で生きて行こうと思った・・・・ 本編完結しましたが、ときおり番外編をあげます。 ぜひ読んで下さい。 「第17回恋愛小説大賞」 で奨励賞をいただきました。 ありがとうございます 短編から長編へ変更しました。 62話で完結しました。

白い結婚 ~その冷たい契約にざまぁを添えて~

ゆる
恋愛
政略結婚――それは貴族の娘にとって避けられない運命。美しく聡明なルシアーナは、シュヴァイツァー侯爵家の冷徹な当主セドリックと婚約させられる。互いの家の利益のためだけの形だけの結婚のはずだった。しかし、次々と巻き起こる陰謀や襲撃事件によって二人の運命は大きく動き出す。 冷酷で完璧主義と噂されるセドリックの本当の顔、そして家族さえも裏切るような権力争いの闇。やがてルシアーナは、ただの「道具」として扱われることに反旗を翻し、自分の手で未来を切り拓こうと決意する。 政略結婚の先に待つのは、破滅か――それとも甘く深い愛か? 波乱万丈のラブストーリー、ここに開幕!

くたばれ番

あいうえお
恋愛
17歳の少女「あかり」は突然異世界に召喚された上に、竜帝陛下の番認定されてしまう。 「元の世界に返して……!」あかりの悲痛な叫びは周りには届かない。 これはあかりが元の世界に帰ろうと精一杯頑張るお話。 ──────────────────────── 主人公は精神的に少し幼いところがございますが成長を楽しんでいただきたいです 不定期更新

処理中です...