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第2章

No.216

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何処となく落ち込む自身の番を見ながら、アルフォンスは苛ついていた。

(俺以外の男の事で心を痛めるな)

自身の番が、己自身以外の男の子で心を痛めているのが許せない。だが、自身が信頼している人物に好かれてはいるが信頼されていないと知ったら誰でも悲しくなる事は当然の事だ。

分かっている。
分かってはいるが、納得出来るかは別だ。

(その心に、俺以外の存在を映さないで欲しい…)

そう思いながら、拳を強く握りしめる。血が出そうな程に握り締めた手からの痛みに、心が少し落ち着く。

今は、番である真琴と一緒に暮らし、何処にでも居る幸せな恋人達に見える。だが、アルフォンスは一度堕ちかけた竜だ。その事実は決して変わらない。普段は穏やかな心だが、ふとした時にドス黒い何かに覆われる。

ーーそれは、真琴の関心が自分から逸れる時だ。

真琴の関心が、自身以外に向かうのがとてつもなく嫌だ、許せない。どうして、自分以外の存在を気にするのかと強い怒りが湧き上がる事がある。


ユルセナイ

オレヲミロ!

オレヲカンジロ!

オマエハオレノモノダ!

オレダケノモノダ!!


アルフォンスは、そんな自分を必死に抑える。
そうしないと、そんな感情に支配されるままに真琴を襲ってしまいそうだからだ。

(嫌だ。そんな事をしたら、真琴を傷付けてしまう)

大切な番を傷付けたくない、嫌われたくない。強くそう思いながら、その凶暴な感情に蓋をする。

「………?アルフォンスさん、どうしたんですか?」

先程から黙り込むアルフォンスに、真琴が心配そうな声をかける。自身に向けられた愛しい番の声に、アルフォンスの中のドス黒い何かがゆっくりと消えて行くのを感じる。それを感じ取って、アルフォンスは安堵した。

「いや、何でもない。ただ、真琴はいつ見ても美しいと思ってな」

アルフォンスの言葉に、真琴は顔を一気に赤くする。そうして、恥ずかしそうに口を開く。

「………ア、アルフォンスさんもいつ見ても素敵…です…」

とても小さな声だが、竜人であるアルフォンスの優秀な耳は、ちゃんと言葉を拾う。最近、真琴はアルフォンスの言葉を否定せず、逆にアルフォンスを褒める事が多くなった。アルフォンスの真琴への言葉を否定すればする程に、更なる恥ずかしい様な甘い言葉が返ってくると悟ったからだ。

そんな真琴に、アルフォンスは更に愛おしさが募る。

(そうだ。そうやって、俺の事だけを見ていてくれ…)


ーーそうやって、君の心に永遠に俺だけを住まわせてくれ。


いつか、俺が君を傷付けない様に。





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