209 / 244
第2章
No.208
しおりを挟む
「おいおい、マジか~……」
「陛下、はしたないですよ。そのアホみたいに開いた口を閉じて下さい。………まぁ、驚く気持ちは分かりますが」
そう言って、ドランは目の前に座る真琴と彼女の周りを楽しそうに飛ぶ精霊達を見つめた。
***
精霊が現れた次の日、真琴はアルフォンスと共に城へとやって来ていた。精霊が現れた事を、精霊の存在を知っているバンラートとドランに報告する為だ。
「きっと、彼奴ら凄く驚くぞ」
騎士に案内されて王の執務室に向かう途中、アルフォンスが心底楽しそうに笑う。
「バンラートは兎も角、もしかしたらドランの間抜けな顔が見られるかもしれないな」
「そうですか?……正直、ドラン様がそんな表情をする事が想像出来ません」
遠回しに、バンラートは間抜けな表情をすると思っていると言っている事に真琴は気付いていない。
「まぁな。ドランは、小さい頃から冷静な奴だった。だから、幼馴染みの俺とバンラートでもドランのそんな表情は滅多に見た事がない」
「でも、一度は見た事があるんですね」
「あぁ。ドランが番を見つけた時にな」
そう言って、その時の事を思い出したのだろう。クスクスと楽しそうに笑うアルフォンスを見て、その時の事が凄く気になった。
「そんなに面白かったんですか?」
「あぁ。ドランの番は、踊り子をしながら旅をしている猫の獣人だったんだ。その時も、ドラゴニールの祭りを見にやって来ててな。旅の資金を稼ぐ為に、広場で踊りを披露してたんだ。あの時、バンラートが祭りに行きたいと駄々をこねてな。余りにもしつこかったんで、仕方なく三人で祭りを見に出掛けたんだ」
***
『おい、見ろよ!あの肉美味そうじゃないか?』
『おいっ!勝手に動き回るな!』
『………全く。いいですか、陛下?祭りに行くのは許しましたが、3時間だけですよ?城の者達に、陛下がいない事を隠せるのが3時間だけですからね。その代わり、私達から決して離れないと約束しましたよね?』
『わかってるって、任せろ!………おっ!あそこで売ってる焼き菓子も美味そうだな!』
『だから勝手に動くな!』
『ハァ……。全く………っ!』
『………ん?ドラン、どうした?口が開きっぱなしだぞ?お前、何時もオレに言ってるだろう?「馬鹿みたいに口を開けていると、虫が入りますよ」って。なぁ、アル?』
『あぁ。………本当に、どうしたんだ?』
『………私の麗しき女神だ』
『『は?』』
***
「えっ!あのドラン様が、そんな事を言ったんですか!?」
真琴は、驚きの声を上げる。
正直、あのドランがそんな事を言うとは思わなかった。
「俺も、最初は自身の耳を疑った。後にも先にも、そんな事を俺達の前で言ったのはアレが最後だがな」
「到着しました。中で、王がお待ちです」
そんな話をしているうちに、王の執務室に着いたのだった。
「陛下、はしたないですよ。そのアホみたいに開いた口を閉じて下さい。………まぁ、驚く気持ちは分かりますが」
そう言って、ドランは目の前に座る真琴と彼女の周りを楽しそうに飛ぶ精霊達を見つめた。
***
精霊が現れた次の日、真琴はアルフォンスと共に城へとやって来ていた。精霊が現れた事を、精霊の存在を知っているバンラートとドランに報告する為だ。
「きっと、彼奴ら凄く驚くぞ」
騎士に案内されて王の執務室に向かう途中、アルフォンスが心底楽しそうに笑う。
「バンラートは兎も角、もしかしたらドランの間抜けな顔が見られるかもしれないな」
「そうですか?……正直、ドラン様がそんな表情をする事が想像出来ません」
遠回しに、バンラートは間抜けな表情をすると思っていると言っている事に真琴は気付いていない。
「まぁな。ドランは、小さい頃から冷静な奴だった。だから、幼馴染みの俺とバンラートでもドランのそんな表情は滅多に見た事がない」
「でも、一度は見た事があるんですね」
「あぁ。ドランが番を見つけた時にな」
そう言って、その時の事を思い出したのだろう。クスクスと楽しそうに笑うアルフォンスを見て、その時の事が凄く気になった。
「そんなに面白かったんですか?」
「あぁ。ドランの番は、踊り子をしながら旅をしている猫の獣人だったんだ。その時も、ドラゴニールの祭りを見にやって来ててな。旅の資金を稼ぐ為に、広場で踊りを披露してたんだ。あの時、バンラートが祭りに行きたいと駄々をこねてな。余りにもしつこかったんで、仕方なく三人で祭りを見に出掛けたんだ」
***
『おい、見ろよ!あの肉美味そうじゃないか?』
『おいっ!勝手に動き回るな!』
『………全く。いいですか、陛下?祭りに行くのは許しましたが、3時間だけですよ?城の者達に、陛下がいない事を隠せるのが3時間だけですからね。その代わり、私達から決して離れないと約束しましたよね?』
『わかってるって、任せろ!………おっ!あそこで売ってる焼き菓子も美味そうだな!』
『だから勝手に動くな!』
『ハァ……。全く………っ!』
『………ん?ドラン、どうした?口が開きっぱなしだぞ?お前、何時もオレに言ってるだろう?「馬鹿みたいに口を開けていると、虫が入りますよ」って。なぁ、アル?』
『あぁ。………本当に、どうしたんだ?』
『………私の麗しき女神だ』
『『は?』』
***
「えっ!あのドラン様が、そんな事を言ったんですか!?」
真琴は、驚きの声を上げる。
正直、あのドランがそんな事を言うとは思わなかった。
「俺も、最初は自身の耳を疑った。後にも先にも、そんな事を俺達の前で言ったのはアレが最後だがな」
「到着しました。中で、王がお待ちです」
そんな話をしているうちに、王の執務室に着いたのだった。
0
お気に入りに追加
6,593
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
私のことが大好きな守護竜様は、どうやら私をあきらめたらしい
鷹凪きら
恋愛
不本意だけど、竜族の男を拾った。
家の前に倒れていたので、本当に仕方なく。
そしたらなんと、わたしは前世からその人のつがいとやらで、生まれ変わる度に探されていたらしい。
いきなり連れて帰りたいなんて言われても、無理ですから。
そんなふうに優しくしたってダメですよ?
ほんの少しだけ、心が揺らいだりなんて――
……あれ? 本当に私をおいて、ひとりで帰ったんですか?
※タイトル変更しました。
旧題「家の前で倒れていた竜を拾ったら、わたしのつがいだと言いだしたので、全力で拒否してみた」
竜王陛下の番……の妹様は、隣国で溺愛される
夕立悠理
恋愛
誰か。誰でもいいの。──わたしを、愛して。
物心着いた時から、アオリに与えられるもの全てが姉のお下がりだった。それでも良かった。家族はアオリを愛していると信じていたから。
けれど姉のスカーレットがこの国の竜王陛下である、レナルドに見初められて全てが変わる。誰も、アオリの名前を呼ぶものがいなくなったのだ。みんな、妹様、とアオリを呼ぶ。孤独に耐えかねたアオリは、隣国へと旅にでることにした。──そこで、自分の本当の運命が待っているとも、知らずに。
※小説家になろう様にも投稿しています
勇者のおまけも大変だ!【改稿版】
見崎天音
恋愛
※一旦非公開にしていた作品の改稿版です。
ご迷惑をお掛けして申し訳ありません。
黒ずくめの怪しい男達から逃げる途中で男の子と共に異世界に転移してしまった私、氷室絢音。
目覚めるとなんと、子供になってた!なんで~?
一緒に異世界にきた男の子はどうやら勇者として召喚されたらしい。
あれ?じゃあ私は聖女様?えっ、ちがう?
まさか、勇者のおまけ?と、思っていたら事態は思わぬ方向へ。
帰りたいけど、帰れない!
ならばこの世界で幸せを掴んでやろうじゃないの。
これは勇者とともに異世界に召喚された女の子の奮闘記です。
設定はゆるふわです。
*大筋は変わっていませんが、主人公の年齢をひとつ下げました。
一部のキャラの設定が少し変更となってます。
他サイトでも掲載中です。
「白い結婚最高!」と喜んでいたのに、花の香りを纏った美形旦那様がなぜか私を溺愛してくる【完結】
清澄 セイ
恋愛
フィリア・マグシフォンは子爵令嬢らしからぬのんびりやの自由人。自然の中でぐうたらすることと、美味しいものを食べることが大好きな恋を知らないお子様。
そんな彼女も18歳となり、強烈な母親に婚約相手を選べと毎日のようにせっつかれるが、選び方など分からない。
「どちらにしようかな、天の神様の言う通り。はい、決めた!」
こんな具合に決めた相手が、なんと偶然にもフィリアより先に結婚の申し込みをしてきたのだ。相手は王都から遠く離れた場所に膨大な領地を有する辺境伯の一人息子で、顔を合わせる前からフィリアに「これは白い結婚だ」と失礼な手紙を送りつけてくる癖者。
けれど、彼女にとってはこの上ない条件の相手だった。
「白い結婚?王都から離れた田舎?全部全部、最高だわ!」
夫となるオズベルトにはある秘密があり、それゆえ女性不信で態度も酷い。しかも彼は「結婚相手はサイコロで適当に決めただけ」と、面と向かってフィリアに言い放つが。
「まぁ、偶然!私も、そんな感じで選びました!」
彼女には、まったく通用しなかった。
「なぁ、フィリア。僕は君をもっと知りたいと……」
「好きなお肉の種類ですか?やっぱり牛でしょうか!」
「い、いや。そうではなく……」
呆気なくフィリアに初恋(?)をしてしまった拗らせ男は、鈍感な妻に不器用ながらも愛を伝えるが、彼女はそんなことは夢にも思わず。
──旦那様が真実の愛を見つけたらさくっと離婚すればいい。それまでは田舎ライフをエンジョイするのよ!
と、呑気に蟻の巣をつついて暮らしているのだった。
※他サイトにも掲載中。
漆黒の私刑人〜S級パーティーを追放されたので今度は面倒事から逃げてのほほんとしたいのに・・・〜
KeyBow
ファンタジー
この世界では15歳になった秋に何かしらのギフトを得る。
ギフトを2つ得たランスタッドは勇者パーティーに入るも7年経過したある日、嫉妬からパーティーを追放され、ショックから腐っていく。
ギフトを2つ持つ者は記録になかったが、期待外れとされた。
だが、皮肉にもそれにより第2のギフトが覚醒。それは超チートだった。
新たに修行で得た力がヤバかった。
その力を使い秘密の処刑人になり、悪を断罪していく。
また、追放されて腐っている時に知り合ったルーキーを新たな仲間とし、立ち直ろうと足掻く。そして新たな出会い?
悪い奴は情け容赦なくぶった斬る!
夜な夜な私刑を行う。表の顔はお人好しな中級〜上級冒険者!
ここにダークファンタジー開幕!
竜の血をひく婚約者に溺愛されています。
夢見 歩
恋愛
領地に引き篭るように
慎ましく生活をしていたわたしに
いきなり婚約者が出来た。
その相手は竜の血を濃く引いている
自国の第二王子だった。
挨拶程度しか交わしていなかったのに
何故か第二王子に溺愛されていて…?
くたばれ番
あいうえお
恋愛
17歳の少女「あかり」は突然異世界に召喚された上に、竜帝陛下の番認定されてしまう。
「元の世界に返して……!」あかりの悲痛な叫びは周りには届かない。
これはあかりが元の世界に帰ろうと精一杯頑張るお話。
────────────────────────
主人公は精神的に少し幼いところがございますが成長を楽しんでいただきたいです
不定期更新
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる