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第2章

No.198

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サザーランド邸のアルフォンスの執務室にて。

「ーーでは、これで失礼します」
「あぁ、ご苦労だったな」

そう言って綺麗なお辞儀をするルドルフに、アルフォンスは礼を言う。パタンと扉を閉める音と共に、ルドルフは執務室を後にする。

足音が完全に聞こえなくなったと同時に、アルフォンスは今しがたルドルフが持って来た物に視線を落とす。執務机の机の上には、アルフォンスの両手に収まる程の大きさの箱が置かれていた。所々に宝石が埋め込まれた上品な印象を与える箱。

(やっと完成したか…)

何ヶ月も前から腕の良い職人に頼んでいた品が漸く完成したのだ。アルフォンスは、丁寧な手付きで箱を開ける。

「ーー流石、王都一と呼ばれる腕前の職人だな」

そう、満足げにアルフォンスは小さく呟いた。箱の中には、血の様に赤く輝く美しいルビーのネックレスが鎮座していた。これは、アルフォンスの魔力で作られた魔力の結晶だ。

竜人は、番を得ると自身の魔力ーー正確には血と魔力で作った結晶を贈る。それは、自身の全てを番に捧げると言う意味を持つと共に、番と同じ時を過ごす為の物だ。

竜人の番が、同じ種族だとは限らない。

同じ寿命の長命種ならまだ良い。だが、短命種だった場合は最悪だ。番が存在する獣人は、番を求める。だが、全ての獣人が番に出会える訳ではない。長命種なら確率が高まるが、短命種は長命種に比べると確率は低くなってしまう。

番に出会えない獣人は、番以外と夫婦になる者もいる。その場合は、普通に寿命を迎える事が出来る。

だが、番に出会った獣人は別だ。

番に出会った獣人は、番が死ぬと悲しみの余り後を追って死んでしまう。番が短命種の場合、長命種の獣人は番と同じ時間を生きる為に己の血と魔力で作った結晶を渡す。それを身に付ける事で、番は相手と同じ時を過ごす事が出来る様になるのだ。これは、番にしか効果が無い。

だが、稀にいるのだ。
この結晶を手に入れれば、永遠にも等しい長命種の時間が手に入ると勘違いをしている人間が。

「これで、真琴とずっと一緒にいられる」

本当は、ネックレスでは無く指輪にしたかった。だが、真琴が前に一度だけリディアと話していたのだ。

『この世界でも、結婚指輪ってあるんですね。もしも、私が結婚指輪をするならシンプルな指輪でいいです。だって、高価な宝石とか付いてたら「傷付けてしまうかも!」って毎日恐々としちゃいますもん』

番がそう言っていた為、指輪はシンプルな物にすると決めたのだ。ーー勿論、シンプルな見た目なだけで指輪はとても高価な物と決まって入るが。

まぁ、そう言う訳で結晶はネックレスになったのだった。
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