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第2章

No.197

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真琴とアルフォンスがそんな会話をしている頃。ステインはバンラートの執務室に居た。

「………さて、私達が貴方を呼んだ理由は分かっていますね?」

そう、執務机に座って必死に書類を捌くバンラートの隣に立つドランがステインに尋ねる。

「わかっています。義兄ドーベルからの手紙の件でしょう」
「そうです。…あぁ、敬語は無しで構いませんよ。此処には、私と陛下しか居りません。堅苦しいのは無しにして、スムーズに話をしましょう」

その言葉に、ステインは頷く。
ステインとしても、腹の探り合いの様な会話で時間を無駄にしたく無かったのだ。

「わかった。…それで?俺に何が聞きたいんだ?」
「では、単刀直入に言います。我が国ドラゴニールは、ファウアームをこれ以上野放しには出来ないと判断しました。ファウアーム次期国王ドーベル王太子殿下直筆の例の手紙の内容を、ドラゴニール友好国へと通達した所、各国の王達からも『ファウアームは危険』との返事を頂きました」

その言葉に、ステインはソッと目を伏せる。

分かっていた事だ。
あの国は、もうずっと昔から破滅の道を自らの意思で歩んで来たのだから。他国の人々がどんなに忠告しようとも、誰も耳を傾けてこなかった。

(わかっていた事だ…)

あの国には、良い思い出などありはしない。……それなのに、あの国が無くなると思うと不思議と少しの心細いという感情が胸をかすめる。

「………ですが、我々とて何も戦争をしたい訳ではありません。出来れば無血でファウアームを落としたいと考えて居ます。そこで、ステイン殿。貴方の出番です」
「俺の?」
「はい。貴方には、我々とドーベル王太子との間の連絡係として働いて貰いたいのです。我々も各国の王も、手紙で情報を伝えてくれたドーベル王太子にはとても感謝しています。この情報が無かったら、ドラゴニールだけではなく、他国も『常闇』の攻撃を受けて多くの民が傷付いていたのかも知れませんからね」
「では、ドーベル義兄さんは…」
「彼には、新しいファウアームの王として国を建て直してもらう必要がありますからね。彼の安全は約束します」
「…わかった。だが、無血でファウアームを落とすとは?」

その言葉に、ドランはニッコリと笑う。その笑みに、今まで無言で書類を必死に捌いていたバンラートがビクッと肩を震わす。

「我が国と他国から集めた、優秀な騎士で少数精鋭の班を幾つか作ります。その者達で、ファウアームの王宮に巣食う害ちゅ……ゴホンッ!王族の方々を一気に始末……いえ、拘束し王宮を掌握します。まぁ、完全に無血とは行かないでしょうが、これが一番流れる血が少ない方法です」

ドランは言わないが、複数の他国からは『国そのものを地図から消そう』と言う声も上がったのだ。確かに、それが一番簡単な方法だろう。

何百年もの間、獣人を蔑み人間至上主義の思想が根付いた国だ。王族を捕らえ新たな王を立てても、そう簡単に国は変わらない。

ーーだが、未だ小さな子供やこれから生まれてくる命には罪は無い。

それに、此方にはファウアームの国民を従わせる強力な切り札があるのだ。







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