181 / 244
第2章
No.180
しおりを挟む
サザーランド邸での一悶着が落ち着いた夜。
ドラゴニール王国国境付近で怪しい動きをする者達がいた。
***
「ふあぁ~」
「おい、見張り中に欠伸なんてしてんじゃねーよ」
ドラゴニール王国国境で見張りをしていた一人の兵士。何も起こらない為、暇になり欠伸をする。そんな兵士の元に交代時間になってやって来た兵士が欠伸を注意する。
「職務怠慢だぞ」
「だってよ、暇なんだから仕方ないだろ?特に何か起こるわけでも無い、ただ暗闇を見張るだけなんだぞ?」
「前回、国境付近で怪しい奴等の目撃情報や不法入国者が居ただろ」
「でも、それからは何も無いじゃんかよ」
見張りの男が不満げに言う。
それに対して、交代の男は「お前は馬鹿か?」と言いたげに見張りの男を見つめる。
「………お前は、一体何の為に王都から騎士団が此処に派遣されたと思ってるんだ?」
「何でって…」
「国の上層部が未だ警戒してるって事だろうが。国の主戦力と言える騎士団を送るって事は、そう言う事だろ?」
その言葉に、見張りの男は身体を硬らせる。
「じゃ、じゃあ、今この瞬間にも……」
「何かあるかも知れないって事だ。だから、気を抜いてるんじゃねーよ」
「わ、わかった!」
そう言って、見張りの男は当たりを警戒する。そんな男の頭を交代の男が叩く。
「いてっ!」
「馬鹿。次は交代の俺が見張りの番なんだ。それなのに、今更お前が警戒してどうするんだよ」
「あっ、そっか…」
「………本当に、何でお前みたいなのが国境警備兵に慣れたんだ?」
「へへへ……」
「何笑ってんだ………ん?」
その時、交代の男が突然黙り込む。
そうして、スンスンと鼻を鳴らし始めた。
「どうしたんた?」
「………いや、今なんか甘い匂いがした気がしたんだが」
「甘い匂い?」
見張りの男も辺りの匂いを嗅ぐが、そんな匂いはしなかった。
「甘い匂いなんて全然しないけど?お前の勘違いじゃ無いか?それとも、鼻が詰まってたとか」
「馬鹿言うな。俺は、犬の獣人だぞ?鼻は、お前より百倍は良い。それに、例え詰まってても五十倍はましだ」
「そうだとしても、気がする程度だったんだろ?気にする事ないって!」
「………そうか?」
「そうだって。それじゃあ、俺はそろそろ仮眠しに戻るな」
「あぁ」
未だ納得していない様な交代の男に見張りを譲り、男は仮眠室に向かう。
「ふんふん~~」
暢気に鼻歌を歌う男の背後で、一瞬黒いローブが揺れた事に誰も気が付かなかった。
「………行ったか」
「案外、簡単に忍び込めましたね」
「あの獣人が匂いを嗅いだ時はヒヤッとしましたが、あの暢気な男のお陰で助かりました」
「無駄話はそれくらいにして、我々は仕事を済ますぞ」
そう言って、三つの黒い影はその場から一瞬にして姿を消した。
ドラゴニール王国国境付近で怪しい動きをする者達がいた。
***
「ふあぁ~」
「おい、見張り中に欠伸なんてしてんじゃねーよ」
ドラゴニール王国国境で見張りをしていた一人の兵士。何も起こらない為、暇になり欠伸をする。そんな兵士の元に交代時間になってやって来た兵士が欠伸を注意する。
「職務怠慢だぞ」
「だってよ、暇なんだから仕方ないだろ?特に何か起こるわけでも無い、ただ暗闇を見張るだけなんだぞ?」
「前回、国境付近で怪しい奴等の目撃情報や不法入国者が居ただろ」
「でも、それからは何も無いじゃんかよ」
見張りの男が不満げに言う。
それに対して、交代の男は「お前は馬鹿か?」と言いたげに見張りの男を見つめる。
「………お前は、一体何の為に王都から騎士団が此処に派遣されたと思ってるんだ?」
「何でって…」
「国の上層部が未だ警戒してるって事だろうが。国の主戦力と言える騎士団を送るって事は、そう言う事だろ?」
その言葉に、見張りの男は身体を硬らせる。
「じゃ、じゃあ、今この瞬間にも……」
「何かあるかも知れないって事だ。だから、気を抜いてるんじゃねーよ」
「わ、わかった!」
そう言って、見張りの男は当たりを警戒する。そんな男の頭を交代の男が叩く。
「いてっ!」
「馬鹿。次は交代の俺が見張りの番なんだ。それなのに、今更お前が警戒してどうするんだよ」
「あっ、そっか…」
「………本当に、何でお前みたいなのが国境警備兵に慣れたんだ?」
「へへへ……」
「何笑ってんだ………ん?」
その時、交代の男が突然黙り込む。
そうして、スンスンと鼻を鳴らし始めた。
「どうしたんた?」
「………いや、今なんか甘い匂いがした気がしたんだが」
「甘い匂い?」
見張りの男も辺りの匂いを嗅ぐが、そんな匂いはしなかった。
「甘い匂いなんて全然しないけど?お前の勘違いじゃ無いか?それとも、鼻が詰まってたとか」
「馬鹿言うな。俺は、犬の獣人だぞ?鼻は、お前より百倍は良い。それに、例え詰まってても五十倍はましだ」
「そうだとしても、気がする程度だったんだろ?気にする事ないって!」
「………そうか?」
「そうだって。それじゃあ、俺はそろそろ仮眠しに戻るな」
「あぁ」
未だ納得していない様な交代の男に見張りを譲り、男は仮眠室に向かう。
「ふんふん~~」
暢気に鼻歌を歌う男の背後で、一瞬黒いローブが揺れた事に誰も気が付かなかった。
「………行ったか」
「案外、簡単に忍び込めましたね」
「あの獣人が匂いを嗅いだ時はヒヤッとしましたが、あの暢気な男のお陰で助かりました」
「無駄話はそれくらいにして、我々は仕事を済ますぞ」
そう言って、三つの黒い影はその場から一瞬にして姿を消した。
0
お気に入りに追加
6,591
あなたにおすすめの小説
愛人をつくればと夫に言われたので。
まめまめ
恋愛
"氷の宝石”と呼ばれる美しい侯爵家嫡男シルヴェスターに嫁いだメルヴィーナは3年間夫と寝室が別なことに悩んでいる。
初夜で彼女の背中の傷跡に触れた夫は、それ以降別室で寝ているのだ。
仮面夫婦として過ごす中、ついには夫の愛人が選んだ宝石を誕生日プレゼントに渡される始末。
傷つきながらも何とか気丈に振る舞う彼女に、シルヴェスターはとどめの一言を突き刺す。
「君も愛人をつくればいい。」
…ええ!もう分かりました!私だって愛人の一人や二人!
あなたのことなんてちっとも愛しておりません!
横暴で冷たい夫と結婚して以降散々な目に遭うメルヴィーナは素敵な愛人をゲットできるのか!?それとも…?なすれ違い恋愛小説です。
竜帝と番ではない妃
ひとみん
恋愛
水野江里は異世界の二柱の神様に魂を創られた、神の愛し子だった。
別の世界に産まれ、死ぬはずだった江里は本来生まれる世界へ転移される。
そこで出会う獣人や竜人達との縁を結びながらも、スローライフを満喫する予定が・・・
ほのぼの日常系なお話です。設定ゆるゆるですので、許せる方のみどうぞ!
竜人のつがいへの執着は次元の壁を越える
たま
恋愛
次元を超えつがいに恋焦がれるストーカー竜人リュートさんと、うっかりリュートのいる異世界へ落っこちた女子高生結の絆されストーリー
その後、ふとした喧嘩らか、自分達が壮大な計画の歯車の1つだったことを知る。
そして今、最後の歯車はまずは世界の幸せの為に動く!
【本編完結】番って便利な言葉ね
朝山みどり
恋愛
番だと言われて異世界に召喚されたわたしは、番との永遠の愛に胸躍らせたが、番は迎えに来なかった。
召喚者が持つ能力もなく。番の家も冷たかった。
しかし、能力があることが分かり、わたしは一人で生きて行こうと思った・・・・
本編完結しましたが、ときおり番外編をあげます。
ぜひ読んで下さい。
「第17回恋愛小説大賞」 で奨励賞をいただきました。 ありがとうございます
短編から長編へ変更しました。
62話で完結しました。
くたばれ番
あいうえお
恋愛
17歳の少女「あかり」は突然異世界に召喚された上に、竜帝陛下の番認定されてしまう。
「元の世界に返して……!」あかりの悲痛な叫びは周りには届かない。
これはあかりが元の世界に帰ろうと精一杯頑張るお話。
────────────────────────
主人公は精神的に少し幼いところがございますが成長を楽しんでいただきたいです
不定期更新
新婚なのに旦那様と会えません〜公爵夫人は宮廷魔術師〜
秋月乃衣
恋愛
ルクセイア公爵家の美形当主アレクセルの元に、嫁ぐこととなった宮廷魔術師シルヴィア。
宮廷魔術師を辞めたくないシルヴィアにとって、仕事は続けたままで良いとの好条件。
だけど新婚なのに旦那様に中々会えず、すれ違い結婚生活。旦那様には愛人がいるという噂も!?
※魔法のある特殊な世界なので公爵夫人がお仕事しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる