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第2章

No.171

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「………」
「………」

(き、気まずい…)

現在、目の前には無言で紅茶を飲みながら睨み合うアルフォンスとステイン。漫画ならバチバチと火花を散らしているであろう状況に、どうしてこうなったのかと深い溜息を吐いた。

***

朝目覚めたら、上半身裸のアルフォンスに抱きしめられていると言う状況で目覚めた真琴。。何やかんやあったが、いつも通りにリディア天の助けによって救出された後、3人は朝食を摂る為に食堂に向かった。

「マコ、おはよう。それに、アルフォンス殿も」
「おはようございます、ステイン殿」
「あぁ、おはよう」

食堂には、既にラフな格好をしたステインが待っていた。ステインが、入って来た二人に挨拶をする。それに、二人も応える。

「マコ、俺の事は叔父さんでいいよ」
「あっ…」
「………まぁ、会ったばかりの人物をいきなり叔父さん呼びは難しいか。なら、今はステインでいいよ。でも、いつか叔父さんって呼んでくれよ?」
「はい」

ステインの気遣いに、真琴は微笑みながら頷く。

「さて、挨拶はこれくらいで食事にしよう」
「あ、ありがとうございます」

アルフォンスは、そう言いながら真琴の為に椅子を引く。日本ではされた事の無いエスコートに、毎度の事ながら照れてしまう。

真琴が座ると、その隣にアルフォンスが座る。真琴の目の前にはステインが。皆が座ると、支給のメイドが朝食を運んで来る。全てが運ばれて来ると、3人は食事を始める。

食事を始めて暫くすると、ステインが何かを思い出したかの様に話しかけて来た。

「そうだ。今朝、マコの驚いた様な声が聞こえて来たんだが、何かあったのか?」
「えっ!?」

(私、そんな大きな声出してた!?)

しかもその時の声は、多分アルフォンスの上半身裸に驚いた時の声だ。

「べ、別に何も無かったですよ?」

(い、言えないよ……)

上半身裸の恋人に抱き締められていて驚いたなんて、気まずくて言えない。身内の、しかも男性に言える訳が無い。だが、真琴の動揺をステインは見逃さなかった。

「………リディアさん」
「はい」
「今朝、マコの驚いた声が聞こえてんですが何かありましたか?」
「はい。実は、我が家の当主様が上半身裸でマコ様の寝室に忍び込んでいまして」
「リディアさん!?」

ステインは、壁際に控えているリディアを呼ぶ。そうして、今朝の出来事を聞いた。リディアは、迷う事なく今朝の出来事をステインに話す。まさか言うとは思っていなかった真琴は、驚いて立ち上がる。

「………へぇ」

それを聞いたステインは、無表情でアルフォンスを見る。だが、当のアルフォンスはデレデレとした顔で真琴の皿にデザートを自ら装っている。それを見たステインの眉間に青筋が立ったのを、真琴は確かに見たのだった。





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