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第2章

No.170

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「………んっ」

(寒い…)

肌寒さを感じて、真琴は身動ぐ。
すると、身体の右側に温もりを感じた。

(暖かい)

その温もりに、真琴は擦り寄る。
すると、その温もりは真琴の体を覆う様に包み込む。それにホッと、身体の力を抜く。

(………ん?包み込む?)

此処は、真琴のベッドだ。
部屋の住人は真琴だけ。それなのに、この背中に回る温もりは何?

薄らと目を開けると、視界に入って来たのは誰かの逞しいきめ細やかな肌だった。

(………うわぁ、綺麗な肌)

鍛え上げられた、とても逞しい胸だ。

「………えっ⁉︎」

(肌⁉︎一体誰の⁉︎)

慌てて顔を上にあげると、そこには大好きなアルフォンスの寝顔。真琴を抱きしめて眠るアルフォンスは、上半身裸だった。

「な、な、な、!!」

(何で裸⁉︎)

真琴の声に反応して、アルフォンスが目を覚ます。

「んっ。……起きたのか?」

動揺している真琴を、アルフォンスは抱き寄せる。そうすると、真琴は更にアルフォンスと密着する。

(む、胸が……!顔に当たって!!)

頬がアルフォンスの胸にピッタリと当たる。
アルフォンスの温かい体温に、ドクドクと脈打つ鼓動。それが、よりリアルに真琴に伝わる。

「おはよう、真琴。よく眠れたか?」
「ア、ア、アルフォンスさんっ!何で此処に居るんですか⁉︎それに何で裸……!」

叫ぶ様にアルフォンスに問う。
その間にも何とか離れようとするが、アルフォンスはギュッと腕に力を込めてそれを阻止する。

「服は、邪魔だったから脱いだんだ。それに、何故此処に?………番いの側に居るのは当然の事だろう?」

そう言って、真琴の顔にキスの雨を降らし始める。
こうなると、真琴に為す術は無い。アルフォンスにされるがまま、ジッと耐えるしか無い。

一度、耐えられなくて抵抗した事がある。
恥ずかしくて、必死に顔を背けたのだ。

***

『真琴。こっちを向いてくれ』
『い、嫌です!!向いたら、またキスしますよね!恥ずかしいから嫌です!!』
『どうしても?』
『どうしてもです!!』
『………そう』
『……っ⁉︎な、何を……!!』
『………何って。真琴がこっちを向いてくれないから、替わりにこの可愛い耳に相手してもらってるんだ』
『だ、だからって、耳を噛まないで下さいっ!!』
『真琴がこっちを向いてくれないんだから、仕方ないだろ?』
『んっ!や、やめ……』
『………真琴、可愛い』
『失礼します。マコ様、朝で………って、アルフォンス様!!またマコ様の部屋に忍び込んで!マコ様から離れて下さい!全く、朝から盛らないで下さい!!』

***

リディアが止めに入るまで、真琴はアルフォンスにされるがままだった。真琴の抵抗は、何ら意味を為さないのだ。ジッと、アルフォンスの気が済むまで終わるのを待つ。ーーそれか。

「失礼します、マコ様。………って、アルフォンス様!!いい加減にして下さい!」

こうして、リディア天の助けがやって来るのを待つしか無いのだ。





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