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第2章

No.159

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「育ての親が亡くなって直ぐの事だった。兄さんと俺は、やって来た騎士達に城に連れて行かれた」

そして、そのまま王の前に連れて行かれた。
事実上の父ーー王は言った。

『我が子であるドーベルの体調が思わしく無い。万が一の時の為に、お前達を連れて来させた』…と。

「俺は王を憎んださ。兄さんと俺を捨てて、今まで何にもして来なかったのに無理矢理連行した挙句、我が子の体調が思わしく無い?万が一の為?何だよそれ。俺達は王太子のスペア?それって、王太子に問題が無かったら、興味無かったって事だろ?兄さんと俺は我が子じゃ無いのかってね」

その時、生まれて初めて人に殺意を抱いた。

「だけど、アルベール兄さんが言ったんだ」

『ステイン、落ち着け。これはチャンスだ。スペアとして連れて来られたって事は、最低限の教育はされる。学のない俺達がこの国トップの家庭教師達に師事出来るんだ。これは、いつか俺達の為になる。だから、どんなに辛くても耐えるんだ』

「それから6年間、兄さんと俺は学べるだけ学んだよ。王族の一員として認知されない中、必死に。勉強だけじゃ無い。騎士団に入って、身体も鍛えた。兄さんと俺を気に入らない奴等から身を守る為に」

王は、母親の時と同じ様に何もしなかった。
アルベールとステインが危険な目に遭っても、見て見ぬ振りをした。

王太子のスペアとして連れて来たのに何故?

恐らく、その頃にはドーベルの体調が回復していたからだろう。だから、スペアは要らなくなったのだ。

「本当に、俺達の父親は馬鹿だよ。また、いつスペアが必要になるか分からないのに。その時、要らなくなったからって捨て置くなんて」

そうして、王太子が完全に回復した時。
アルベールは、ステインに言った。

『ステイン。この6年間、俺達は貪欲に知識を吸収した。全ては、この日の為だ。ドーベル兄さんが完全に回復した今、俺達は不用品として処理される筈だ。あの嫉妬深い王妃が、俺達を二度も見逃すとは思えない。俺達は、この国から出るんだ。こんな小さな国では無く、外の大きな世界に飛び出すんだ。外には、様々な種族が手を取り合って暮らしてる。こんな狭い世界で無く、自由な世界に行こう』

そう言って、アルベールはステインと共に夜に紛れてファウアームを飛び出した。その時、アルベールは21歳、ステインは19歳だった。

国を出た2人は、別々の道を歩いて行った。
だが、時折手紙などを交換してお互いの現状を報告はしていた。そうして手紙には、アルベールが最愛の人と結婚し子供が生まれた事、人生で1番幸せだと綴られていた。

兄の幸せを、心から喜んだ。
ずっと、自分を守ってくれた兄の幸せ。

ステインは、暫くしたら兄夫婦に会いに行こうと思っていた。次の手紙が来たら書くのだ。

『自慢の兄の最愛の家族に会いに行く』…と。

ーーだが、それが最後の兄からの手紙だった。







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