154 / 244
第2章
No.153
しおりを挟む
ーーコツコツコツ
(誰か来る。アルフォンスさんかな?)
部屋で1人、息も荒く腕立て伏せをしていた真琴。
その真琴の耳に、近付く足音が聞こえて来た。真琴は慌てて身体を起こし、身嗜みを整える。
ーーガチャ
「真琴、すまない。随分、待たせたな」
乱れた髪を整えた所で、扉が開きアルフォンスが入って来た。そうして、運動で火照った真琴の頬に手を当てる。
「………どうしたんだ?少し熱いな」
「えっと…、ちょっと部屋が暑くて」
ーー言えない。
(1人で腕立て伏せをしていたなんて、絶対言えない…)
「そうか?それなら、我慢などせずに窓を開ければ良かったのに」
そう言って、アルフォンスは真琴の一房落ちていた髪を耳に掛ける。
「………あの、それで捕まってる男の人は如何だったんですか?」
アルフォンスが戻って来てからずっと気になっていた事を問う。すると、アルフォンスは少し難しい顔をする。
「………」
「……アルフォンスさん?」
難しい顔で何も話さないアルフォンスに、真琴は不安げな声でアルフォンスの名を呼ぶ。
(……もしかして、何かよく無い事があったのかな?)
不安になり、アルフォンスの服の裾を無意識に握り締める。それに気が付いたアルフォンスは、自身の愛しい番に優しく声をかける。
「あぁ、すまない。真琴を不安にさせてしまったな」
「何かあったんですか?」
「まぁな。………黙っていてもいずれ分かる事だ、きちんと話そう。実は、真琴の実の両親の事だ」
「私の実の……?」
「あぁ」
「少し話が長くなる」と、アルフォンスは真琴をソファーに座らせ自身も隣に座る。
「………さて、何処から話そう」
アルフォンスは、暫く頭の中で話を纏めてからゆっくりと話し始める。
「……真琴、落ち着いて聞いてくれ。真琴は、ファウアームの王族だ」
***
「ーーこれが、男から聞いた話だ」
アルフォンスの話を聞き終え、真琴は何も言葉が出なかった。
(私のお父さんが現ファウアーム国王の息子で私がファウアーム国王の孫……?)
「真琴、息を吸うんだ」
「っ…!」
どうやら、驚きの余り無意識に息を止めていたらしい。アルフォンスに言われて、漸く止めていた息をする。
「あ…の、私…」
何か話そうにも、言葉が出て来ない。
「驚くのも無理も無い。実際、俺も驚いたんだ。当事者の真琴はもっと驚いただろ?」
そう言って、アルフォンスに宥める様に優しく背を撫でられる。その優しい手に、次第に心が落ち着いていく。
「……それでな、男の事なんだが」
一旦間を置いて、アルフォンスは更なる混乱をもたらした。
「………実は、その男は真琴の叔父なんだ」
「は?」
もはや、真琴の頭は思考を放棄したのだった。
(誰か来る。アルフォンスさんかな?)
部屋で1人、息も荒く腕立て伏せをしていた真琴。
その真琴の耳に、近付く足音が聞こえて来た。真琴は慌てて身体を起こし、身嗜みを整える。
ーーガチャ
「真琴、すまない。随分、待たせたな」
乱れた髪を整えた所で、扉が開きアルフォンスが入って来た。そうして、運動で火照った真琴の頬に手を当てる。
「………どうしたんだ?少し熱いな」
「えっと…、ちょっと部屋が暑くて」
ーー言えない。
(1人で腕立て伏せをしていたなんて、絶対言えない…)
「そうか?それなら、我慢などせずに窓を開ければ良かったのに」
そう言って、アルフォンスは真琴の一房落ちていた髪を耳に掛ける。
「………あの、それで捕まってる男の人は如何だったんですか?」
アルフォンスが戻って来てからずっと気になっていた事を問う。すると、アルフォンスは少し難しい顔をする。
「………」
「……アルフォンスさん?」
難しい顔で何も話さないアルフォンスに、真琴は不安げな声でアルフォンスの名を呼ぶ。
(……もしかして、何かよく無い事があったのかな?)
不安になり、アルフォンスの服の裾を無意識に握り締める。それに気が付いたアルフォンスは、自身の愛しい番に優しく声をかける。
「あぁ、すまない。真琴を不安にさせてしまったな」
「何かあったんですか?」
「まぁな。………黙っていてもいずれ分かる事だ、きちんと話そう。実は、真琴の実の両親の事だ」
「私の実の……?」
「あぁ」
「少し話が長くなる」と、アルフォンスは真琴をソファーに座らせ自身も隣に座る。
「………さて、何処から話そう」
アルフォンスは、暫く頭の中で話を纏めてからゆっくりと話し始める。
「……真琴、落ち着いて聞いてくれ。真琴は、ファウアームの王族だ」
***
「ーーこれが、男から聞いた話だ」
アルフォンスの話を聞き終え、真琴は何も言葉が出なかった。
(私のお父さんが現ファウアーム国王の息子で私がファウアーム国王の孫……?)
「真琴、息を吸うんだ」
「っ…!」
どうやら、驚きの余り無意識に息を止めていたらしい。アルフォンスに言われて、漸く止めていた息をする。
「あ…の、私…」
何か話そうにも、言葉が出て来ない。
「驚くのも無理も無い。実際、俺も驚いたんだ。当事者の真琴はもっと驚いただろ?」
そう言って、アルフォンスに宥める様に優しく背を撫でられる。その優しい手に、次第に心が落ち着いていく。
「……それでな、男の事なんだが」
一旦間を置いて、アルフォンスは更なる混乱をもたらした。
「………実は、その男は真琴の叔父なんだ」
「は?」
もはや、真琴の頭は思考を放棄したのだった。
0
お気に入りに追加
6,591
あなたにおすすめの小説
愛人をつくればと夫に言われたので。
まめまめ
恋愛
"氷の宝石”と呼ばれる美しい侯爵家嫡男シルヴェスターに嫁いだメルヴィーナは3年間夫と寝室が別なことに悩んでいる。
初夜で彼女の背中の傷跡に触れた夫は、それ以降別室で寝ているのだ。
仮面夫婦として過ごす中、ついには夫の愛人が選んだ宝石を誕生日プレゼントに渡される始末。
傷つきながらも何とか気丈に振る舞う彼女に、シルヴェスターはとどめの一言を突き刺す。
「君も愛人をつくればいい。」
…ええ!もう分かりました!私だって愛人の一人や二人!
あなたのことなんてちっとも愛しておりません!
横暴で冷たい夫と結婚して以降散々な目に遭うメルヴィーナは素敵な愛人をゲットできるのか!?それとも…?なすれ違い恋愛小説です。
竜帝と番ではない妃
ひとみん
恋愛
水野江里は異世界の二柱の神様に魂を創られた、神の愛し子だった。
別の世界に産まれ、死ぬはずだった江里は本来生まれる世界へ転移される。
そこで出会う獣人や竜人達との縁を結びながらも、スローライフを満喫する予定が・・・
ほのぼの日常系なお話です。設定ゆるゆるですので、許せる方のみどうぞ!
彼等に密着取材っ!!〜婚約破棄の裏側は〜
ハルン
恋愛
我が社は今回、数日前に起こったあの婚約破棄事件の取材をする事になった。
あの日に至るまで何があったのか…。
あの事件の真相を我々は、関係者に取材をして解明しようと思う。
×月×日
アースケイム新聞社 『事件の始まり』より
竜人のつがいへの執着は次元の壁を越える
たま
恋愛
次元を超えつがいに恋焦がれるストーカー竜人リュートさんと、うっかりリュートのいる異世界へ落っこちた女子高生結の絆されストーリー
その後、ふとした喧嘩らか、自分達が壮大な計画の歯車の1つだったことを知る。
そして今、最後の歯車はまずは世界の幸せの為に動く!
【本編完結】番って便利な言葉ね
朝山みどり
恋愛
番だと言われて異世界に召喚されたわたしは、番との永遠の愛に胸躍らせたが、番は迎えに来なかった。
召喚者が持つ能力もなく。番の家も冷たかった。
しかし、能力があることが分かり、わたしは一人で生きて行こうと思った・・・・
本編完結しましたが、ときおり番外編をあげます。
ぜひ読んで下さい。
「第17回恋愛小説大賞」 で奨励賞をいただきました。 ありがとうございます
短編から長編へ変更しました。
62話で完結しました。
くたばれ番
あいうえお
恋愛
17歳の少女「あかり」は突然異世界に召喚された上に、竜帝陛下の番認定されてしまう。
「元の世界に返して……!」あかりの悲痛な叫びは周りには届かない。
これはあかりが元の世界に帰ろうと精一杯頑張るお話。
────────────────────────
主人公は精神的に少し幼いところがございますが成長を楽しんでいただきたいです
不定期更新
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる