上 下
137 / 244
第2章

No.136

しおりを挟む
王宮に着くと、初老の執事に連れられて王妃マリアンヌのいる応接間に案内された。少し不安になりながらも、きちんと挨拶をするべく気合いを入れる。
そうして、扉が執事によって開かれた瞬間ーー。

「まぁまぁっ!!貴女がアルフォンスの番のマコね!本当に可愛らしいわ!」

そんな声と共に、茶髪の妖艶な美女が椅子から立ち上がる。

ーー彼女こそ、王妃マリアンヌである。

マリアンヌ王妃は真琴を正面からギュッと抱き締める。

(いっ、息がっ…!!)

真琴より背の高いマリアンヌに抱き締められた真琴は、王妃の豊満な胸に顔が埋まり息が出来なくなった。

「本当に小さくて可愛いわっ!」

そう言ってマリアンヌは、真琴の匂いをスンスンと嗅いできた。

(ひぃ~~~!!何してるんですか!?) 

「はぁ~。……やっぱり、女の子はイイわぁ。柔らかくて甘くて最高。どっかの誰か達みたいにゴツくも無いし」

マリアンヌは、うっとりと溜息を吐く。
真琴は、酸欠と驚きで意識が遠のきかける。

「マリアンヌ様。好みの女性に会えて嬉しいのは分かりますが、そろそろマコ様を離してあげて下さい」

真琴達を案内してくれた初老の執事の男性が、マリアンヌにそう言った。マリアンヌは、「もう少しいいじゃない」と口を拗ねらせながらも渋々真琴を離す。

「ぷはぁっ!!」

(し、死ぬかと思った!!)

豊満な胸から解放されて、漸く新鮮な空気が肺を満たす。

(あ、危なかった。もう少し離すのが遅かったら死んでたかも……)

王妃の豊満な胸で窒息死なんて笑えない。

「マコ様、大丈夫ですか?」
「な、何とか…」

リディアさんの問いに何とか返事をする。

「ごめんなさいね。最近、面倒臭い夫と小煩い宰相とゴツい団長しか見てなかったから…」

それって、この国のトップ3の事ですよね?
国のトップ達をそんな風に言えるなんて流石は王妃。他の人物だったら、不敬罪である。

「自己紹介がまだだったわね。私はマリアンヌ。この国ドラゴニール国王バンラートの番で王妃よ」
「お初にお目にかかります、マリアンヌ王妃様。私は、アルフォンス・サザーランド公爵の番、真琴と申します」
「マ、マコーゥトゥー?」
「マコとお呼び下さい」

マリアンヌが、不思議な発音で真琴の名を呼ぶ。
何故かこの国の人には、真琴の名前は発音しにくいらしい。

「それじゃあ、マコって呼ぶわね。今日、マコを呼んだのは私と夫の友であるアルフォンスの番の貴女とお茶会をしたかったからなの。……本当は、もっと早く会いたかったのだけれど。あんな事件があったでしょ?」

だから今日まで気を使って呼ばなかったのだと、マリアンヌは告げる。

「さっ、嫌な話はこのくらいにしてお茶会にしましょう!私自慢の庭に用意させてあるのよ!」

そう言って、マリアンヌは真琴の手を引いて中庭に向かったのだった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

虐げられた落ちこぼれ令嬢は、若き天才王子様に溺愛される~才能ある姉と比べられ無能扱いされていた私ですが、前世の記憶を思い出して覚醒しました~

日之影ソラ
恋愛
異能の強さで人間としての価値が決まる世界。国内でも有数の貴族に生まれた双子は、姉は才能あふれる天才で、妹は無能力者の役立たずだった。幼いころから比べられ、虐げられてきた妹リアリスは、いつしか何にも期待しないようになった。 十五歳の誕生日に突然強大な力に目覚めたリアリスだったが、前世の記憶とこれまでの経験を経て、力を隠して平穏に生きることにする。 さらに時がたち、十七歳になったリアリスは、変わらず両親や姉からは罵倒され惨めな扱いを受けていた。それでも平穏に暮らせるならと、気にしないでいた彼女だったが、とあるパーティーで運命の出会いを果たす。 異能の大天才、第六王子に力がばれてしまったリアリス。彼女の人生はどうなってしまうのか。

好みじゃなかったはずのイケメン神様となぜか結ばれることになりました

かぐら
恋愛
 禁止されている魔導具、魔法薬を管理し新たなものを開発する国際研究機関、魔塔。  そこで五年も見習い魔具士として燻っていたターミガンだったが、ある日魔塔に雷が落ちた。  その雷が落ちた場所に、なんと雷神が魔力の枯渇で倒れていたらしい。  魔塔のトップである魔塔主から「君しか出来ないからよろしく」と雷神の世話をぶん投げられたターミガンは、魔力の譲渡をしつつ、その見た目麗しい雷神の目が覚めるのを待っていた。  ―― 雷神の目が覚めたあと、魔塔中の研究員が彼を崇拝する騒動に巻き込まれるなど、知らずに。  誰も彼も魅了する美しい雷神 ✕ 特殊な属性のせいで見習いから抜けられない魔具士のお話。  見習い魔具士視点、雷神視点+α予定。 ※ 盲目等の障がい、および人が死ぬ表現があります ※ 短編表記ですが、中編程度の文字数 ※ 世界観は長編「彼女が幸せを掴むまで〜」と同じです。 ※ 拙作「ようやく幸せになりました!」の六十六年前、「彼女が幸せを掴むまで〜」の二十二年前の話 ※ カクヨムにも公開しています

貴方にとって、私は2番目だった。ただ、それだけの話。

天災
恋愛
 ただ、それだけの話。

よりにもよって和風ホラーゲームの生贄少女に転生しました。悲壮感漂う状況ですが、大団円エンドを目指します

相原
ファンタジー
生まれつき病弱で、病院へ入退院を繰り返していた鈴木菜緒は、ホラーゲームの世界で目を覚ました。 どうやら自分は、村の為に身を捧げ一生を終える薄幸の美少女(紗世)に転生したらしい。 一緒に逃げようと手を差し伸べる弟と共に、紗世は村を脱出する。 死ぬことはちっとも怖くない。それはいつだって身近にあった。 ただ、何も成し遂げられずに死ぬことだけが怖い。 せめてこの世界が無事エンディングを迎えられるように、大団円で終わるように、紗世はそれだけを願って吊り橋効果満載のホラーゲームを突き進む…! しかし弟くん、いくら閉鎖的な村で育った姉弟だからと言って、少し過保護過ぎじゃないかな。 そもそも、ゲームに君は出てこなかったよ。

別れた婚約者が「俺のこと、まだ好きなんだろう?」と復縁せまってきて気持ち悪いんですが

リオール
恋愛
婚約破棄して別れたはずなのに、なぜか元婚約者に復縁迫られてるんですけど!? ※ご都合主義展開 ※全7話  

逆行転生、一度目の人生で婚姻を誓い合った王子は私を陥れた双子の妹を選んだので、二度目は最初から妹へ王子を譲りたいと思います。

みゅー
恋愛
アリエルは幼い頃に婚姻の約束をした王太子殿下に舞踏会で会えることを誰よりも待ち望んでいた。 ところが久しぶりに会った王太子殿下はなぜかアリエルを邪険に扱った挙げ句、双子の妹であるアラベルを選んだのだった。 失意のうちに過ごしているアリエルをさらに災難が襲う。思いもよらぬ人物に陥れられ国宝である『ティアドロップ・オブ・ザ・ムーン』の窃盗の罪を着せられアリエルは疑いを晴らすことができずに処刑されてしまうのだった。 ところが、気がつけば自分の部屋のベッドの上にいた。 こうして逆行転生したアリエルは、自身の処刑回避のため王太子殿下との婚約を避けることに決めたのだが、なぜか王太子殿下はアリエルに関心をよせ……。 二人が一度は失った信頼を取り戻し、心を近づけてゆく恋愛ストーリー。

【完結】復讐の館〜私はあなたを待っています〜

リオール
ホラー
愛しています愛しています 私はあなたを愛しています 恨みます呪います憎みます 私は あなたを 許さない

引退したオジサン勇者に子供ができました。いきなり「パパ」と言われても!?

リオール
ファンタジー
俺は魔王を倒し世界を救った最強の勇者。 誰もが俺に憧れ崇拝し、金はもちろん女にも困らない。これぞ最高の余生! まだまだ30代、人生これから。謳歌しなくて何が人生か! ──なんて思っていたのも今は昔。 40代とスッカリ年食ってオッサンになった俺は、すっかり田舎の農民になっていた。 このまま平穏に田畑を耕して生きていこうと思っていたのに……そんな俺の目論見を崩すかのように、いきなりやって来た女の子。 その子が俺のことを「パパ」と呼んで!? ちょっと待ってくれ、俺はまだ父親になるつもりはない。 頼むから付きまとうな、パパと呼ぶな、俺の人生を邪魔するな! これは魔王を倒した後、悠々自適にお気楽ライフを送っている勇者の人生が一変するお話。 その子供は、はたして勇者にとって救世主となるのか? そして本当に勇者の子供なのだろうか?

処理中です...