上 下
136 / 244
第2章

No.135

しおりを挟む
そうして真琴を乗せた馬車は、王城の大きく立派な門を潜り抜ける。そうして王城で働く人々が出入りする玄関口が見えてきた。

(あれ?)

だが、馬車はそこで止まらず更に奥へと進んで行く。

「リディアさん、これって一体どういう事なんですか?」
「はっ!私とした事が説明がまだでした。……申し訳ありません。この馬車は現在、王城の奥にある王族方達の住む王宮へ向かっています」
「王宮…!?」

(何で!?)

驚きで思わず大きな声が出てしまう。
私は慌てて口を手で塞ぎ、リディアさんの話の続きを聞く。

「この馬車は、王族方が使用する馬車です。通常、王族方が出かける際に使用するか、個人的に誰かを王宮に呼び出した時などに使われます」
「……それって、バンラート様からの呼び出しですか?」

王族の知り合いなど、国王であるバンラートしかいない。しかも、知り合いと言ってもアルフォンス関係だ。現在、アルフォンスは城で騎士団長として仕事をしている。それなのに真琴を城では無く王族の住む王宮に呼び出すなんて。

「いえ、マコ様を王宮へ招待されたのは国王バンラート様の番であらせられる王妃マリアンヌ様です」


ーー王妃マリアンヌ。


綺麗な栗色の髪にエメラルドの瞳を持つ、国王バンラートの人間の番である。元々ドラゴニールの辺境伯グルーニア家の1人娘だったマリアンヌ。マリアンヌが21歳の時、グルーニア伯爵領を視察に訪れたバンラートに番だと認識された。
王妃として相応しい様に王都のタウンハウスから王宮に上がって王妃勉強をしている時、蛇獣人の国の王シュネルに誘拐された。

その後の事は、真琴の知っている通りだ。

現在は、37歳。
国王夫婦に現在子供はおらず、王宮にはバンラートとマリアンヌ、それに信用出来る数人の使用人達が居るだけだ。

(王妃様が私に何の用…?)

会ったことも喋った事も無い王妃様からの突然の呼び出し。どう言った用事なのか見当もつかない。

「マコ様、そろそろ王宮に着きます」

色々と考えていると、リディアさんから声がかけられる。その声に反応して窓の外を見ると、周囲を圧倒する様な王城とは違い、何処か落ち着く様な建物が見えてきた。

(想像していたのと結構違うなぁ)

王族の住む場所だ。
正直、豪華絢爛な建物を想像していた。

「マコ様。王妃様にお会いになる場合は、私は同伴出来ません。ですが、焦らずに日頃から習っている礼儀作法を思い出して下さい」

マコ様なら出来ますと、本気で信じてくれているリディアさんの顔を見て緊張が解れる。

(そうだよ、あんなに礼儀作法の練習をしたんだ。先生やリディアさん達にも褒められたんだから大丈夫)

「はいっ!日頃の練習の成果を出し切って来ます!」

そう意気込んで、王宮前に止まった馬車から降りる。

ーーだが、真琴は知らない。

この数分後には、先程までの意気込みは消えて困惑を浮かべる事になることを。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

番が見つかったら即離婚! 王女は自由な平民に憧れる

灰銀猫
恋愛
王女でありながら貧しい生活を強いられていたエリサ。 突然父王に同盟の証として獣人の国へ嫁げと命じられた。 婚姻相手の王は竜人で番しか愛せない。初対面で開口一番「愛する事はない」と断言。 しかも番が見つかるか、三年経ったら離婚だそう。 しかしエリサは、是非白い結婚&別居婚で!とむしろ大歓迎。 番至上主義の竜人の王と、平民になることを夢見る王女の、無関心から始まる物語。 ご都合主義設定でゆるゆる・展開遅いです。 獣人の設定も自己流です。予めご了承ください。 R15は保険です。 22/3/5 HOTランキング(女性向け)で1位になれました。ありがとうございます。 22/5/20 本編完結、今後は番外編となります。 22/5/28 完結しました。 23/6/11 書籍化の記念に番外編をアップしました。

【完結】恋人との子を我が家の跡取りにする? 冗談も大概にして下さいませ

水月 潮
恋愛
侯爵家令嬢アイリーン・エヴァンスは遠縁の伯爵家令息のシリル・マイソンと婚約している。 ある日、シリルの恋人と名乗る女性・エイダ・バーク男爵家令嬢がエヴァンス侯爵邸を訪れた。 なんでも彼の子供が出来たから、シリルと別れてくれとのこと。 アイリーンはそれを承諾し、二人を追い返そうとするが、シリルとエイダはこの子を侯爵家の跡取りにして、アイリーンは侯爵家から出て行けというとんでもないことを主張する。 ※設定は緩いので物語としてお楽しみ頂けたらと思います ☆HOTランキング20位(2021.6.21) 感謝です*.* HOTランキング5位(2021.6.22)

あなたに愛や恋は求めません

灰銀猫
恋愛
婚約者と姉が自分に隠れて逢瀬を繰り返していると気付いたイルーゼ。 婚約者を諫めるも聞く耳を持たず、父に訴えても聞き流されるばかり。 このままでは不実な婚約者と結婚させられ、最悪姉に操を捧げると言い出しかねない。 婚約者を見限った彼女は、二人の逢瀬を両親に突きつける。 貴族なら愛や恋よりも義務を優先すべきと考える主人公が、自分の場所を求めて奮闘する話です。 R15は保険、タグは追加する可能性があります。 ふんわり設定のご都合主義の話なので、広いお心でお読みください。 24.3.1 女性向けHOTランキングで1位になりました。ありがとうございます。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

王弟殿下の番様は溺れるほどの愛をそそがれ幸せに…

ましろ
恋愛
見つけた!愛しい私の番。ようやく手に入れることができた私の宝玉。これからは私のすべてで愛し、護り、共に生きよう。 王弟であるコンラート公爵が番を見つけた。 それは片田舎の貴族とは名ばかりの貧乏男爵の娘だった。物語のような幸運を得た少女に人々は賞賛に沸き立っていた。 貧しかった少女は番に愛されそして……え?

アリシアの恋は終わったのです。

ことりちゃん
恋愛
昼休みの廊下で、アリシアはずっとずっと大好きだったマークから、いきなり頬を引っ叩かれた。 その瞬間、アリシアの恋は終わりを迎えた。 そこから長年の虚しい片想いに別れを告げ、新しい道へと歩き出すアリシア。 反対に、後になってアリシアの想いに触れ、遅すぎる行動に出るマーク。 案外吹っ切れて楽しく過ごす女子と、どうしようもなく後悔する残念な男子のお話です。 ーーーーー 12話で完結します。 よろしくお願いします(´∀`)

【完結】時を戻った私は別の人生を歩みたい

まるねこ
恋愛
震えながら殿下の腕にしがみついている赤髪の女。 怯えているように見せながら私を見てニヤニヤと笑っている。 あぁ、私は彼女に完全に嵌められたのだと。その瞬間理解した。 口には布を噛まされているため声も出せない。 ただランドルフ殿下を睨みつける。 瞬きもせずに。 そして、私はこの世を去った。 目覚めたら小さな手。 私は一体どうしてしまったの……? 暴行、流血場面が何度かありますのでR15にしております。 Copyright©︎2024-まるねこ

運命の番?棄てたのは貴方です

ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。 番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。 ※自己設定満載ですので気を付けてください。 ※性描写はないですが、一線を越える個所もあります ※多少の残酷表現あります。 以上2点からセルフレイティング

処理中です...