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第2章

No.134

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王城の奥、王族達が暮らす王宮にある薔薇などの様々な花が咲き誇る中庭。一面を見渡せるガゼボに真琴は居た。

「この紅茶は、遠くからわざわざ仕入れさせてる私のお気に入りのローズマリーと言う紅茶なの。匂いは甘いのだけれど、後味はサッパリしていて美味しいのよ。どうぞお飲みになって」
「はぁ。………いただきます」

真琴に、笑顔で紅茶を勧める目の前の女性。
その女性に勧められるままに、目の前の紅茶を口にする。甘い香りが鼻腔をくすぐり、流れ込んできた紅茶は香りに反してサッパリとした味でとても飲みやすく真琴は気に入った。

「ね?美味しいでしょ?」
「はい、マリアンヌ王妃様」
「いやね、マリアンヌって呼んで?私もマコって呼ぶから」
「ははは……」

一体、何処に国の母たる王妃を名前で呼べる平民がいるのだ。だが、それ以外の呼び方は許さないとマリアンヌの妙に圧のある美しい笑顔は告げていた。

(どうしてこうなった?)

***

ーー時は少し遡る。

朝、いつも通りに渋るアルフォンスを仕事に送り出した後、少し読書をする為に部屋で本を読んでいた時だった。

ーーガタガタッ

(ん?)

外から音が聞こえて来る。
窓の外を見ると、門から一台の馬車がやって来た。

(お客さん?)

最初は、アルフォンスが忘れ物を取りに戻ったのかと思った。だが、その馬車は見慣れたサザーランド公爵の馬車では無い。つまり、お客様という事だ。

(誰だろう…?)

疑問に思うが、この世界に知り合いが居ない真琴には関係無いだろう。そう思い、再び視線を本に戻す。

それから暫く。

(……ん?)

バタバタと誰かの走る足音が部屋に近付いて来ている事に気が付いた。

「何だろう?」

滅多な事では走らない屋敷の人達。
それなのに、どんどん近付いて来る足音。
不思議に思い、パタンと本を閉じてソファーから立ち上がった時だった。

「マコ様っ!今すぐお着替えを!!」

バタンと勢い良く扉を開けたリディアさんが、入って来て早々に声を上げる。背後には、数人のメイドさん達。

「え?一体、どうしたんで…」
「詳しい事は後で!!さぁ、やるわよ!」
「「「はいっ!」」」

「すか?」と最後まで言い終えないうちに、リディア率いるメイド軍団達により、あれよあれよと言う間に翠の肩が出る動きやすいドレスに着替えさせられた。

「髪は…」
「もう少し、編み込んだら?」
「耳飾りは…」

そうして、あっという間に何処ぞの御令嬢の様な真琴が完成した。

「さぁ、早く行きましょう!これ以上お待たせしては大変です!」
「あの、だから何が起こって…」

真琴の戸惑いには誰も答えてくれず、あれよあれよという間に先程窓から見えた馬車にリディアと共に乗せられる。そうして、何も分からない真琴を乗せた馬車は王城に向かったのだ。


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