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第1章

No.127

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翌朝。
いつも通りに、リディアさんが起こしに来た。そのまま、用意された淡い緑色のワンピースを着る。

(……うん。寝癖も無し)

鏡で全身を何時もより隈なくチェックし、問題がない事を確認する。

「ーーよしっ!」

軽く両頬を叩き、気合いを入れる。
そうして、アルフォンスとの朝食を取る為に食堂に向かった。

***

食堂には、既にアルフォンスが居た。

「真琴、おはよう」
「おっ、…おはようございます」

何時もの爽やかな笑顔では無く此方が胸焼けするほど甘い笑顔を向けられ、真琴は動揺しながらも何とか挨拶を返す。。

(朝からそんな胸焼けしそうな笑顔は反則ですっ!)

だが、一々笑顔に動揺していたら話が出来ない。
本当なら、朝食の時では無く落ち着いた別の場所話すべき事だろう。だが、騎士団長で忙しいアルフォンスに2人っきりの時間を作って貰う訳にはいかない。それに、後回しにして今言わないと上手く言えない気がしたのだ。

(女は度胸っ!!)

真琴は、食事に手を付けようとするアルフォンスに向かって口を開いた。

「ア、アルフォンスさんっ!」

手を止め、真琴を見るアルフォンスに真琴は勢いのまま喋り出した。

「わ、私っ!アルフォンスさんが好きです!真面目な所も、優しい所も、赤い竜の姿も…全部が好きですっ!今まで、家族の元に帰るって言ってアルフォンスさんにも帰る方法を探してもらってたのに、ごめんなさい。私、アルフォンスさんと一緒に居たいっ!でも、帰る方法も探したーー」

言葉が途中で止まった。
何故なら、いつの間にかアルフォンスに抱き締められていたからだ。

「真琴」
「っ!」

耳元で甘く自分の名を囁かれ、身体がビクッと反応する。それに反応したかの様に、鼓動が早くなり顔が熱くなる。

「真琴…。好きだ」

その言葉に、ドキンッとより一層心臓が痛いくらいに跳ねる。

「最初は、番だから本能で求めた。だが、一緒に過ごして真琴を知るたびに、もっと好きになった」

そう言って、私の顔を両手で包む。

「知らない世界で、自分のやれる事を見つけ一生懸命に頑張る姿。人前では明るく振る舞い、一人で声を殺して無く姿。他者に対して、感謝を伝える事が出来る……そんな、強く優しい真琴が好きだ」

その言葉に、ポロッと涙が溢れる。
その涙を優しく拭い、アルフォンスは笑った。

「帰る方法は、これからも一緒に探そう。俺と一緒に居たいと思ってくれたからと言って、探す事を止める事は無い。帰る先には、君の大切な家族が居るんだから」
「………っ!」

その言葉に、必死に頷く。

「あっ…、ありが…とう」

震える声で、感謝を伝える。

(ありがとう、アルフォンスさん。私の我儘を聞いてくれて…)

お父さん、お母さん、紗希、晃、圭太、圭子、由香。

ねぇ、皆んな聞いて?
私、好きな人が出来たよ。
真面目で優しい赤い竜。

そんな、人に恋をしました。







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