上 下
125 / 244
第1章

No.124

しおりを挟む
「………様、マ……様」

何処か遠くから、真琴を呼ぶ声が聞こえる。
その声に導かれる様に、深く沈んだ意識が浮上する。

「マ……様、マコ様」
「んっ…」

今度は、はっきりと声が聞こえる。
目をゆっくりと開けると、目の前には心配そうなリディアさんが映る。

「リディア…さん?」
「マコ様、随分お疲れですね。…まぁ、あんな事があった後ですものね。帰りの馬車が到着したので呼びに来たのですが…。とてもぐっすりとお眠りになってましたよ」

どうやらバンラート様達が出て行った後、ソファーで眠ってしまっていたらしい。

(さっき、皆んなの夢を見てた気がする…)

はっきりとは思い出せないが、最後は皆んなで笑っていた気がする。

(よかった。皆んな、笑ってた)

真琴が居なくても、しっかりと笑っていた家族を思い出し、その事に少しの悲しみを覚えると共に深く安堵する。

「………え?」

(私が居ないのに、笑ってた事に安心した…?)

普通、自分が居ないのに普段通りに笑っている事に不満を覚えたりするのでは?

「マコ様?」

リディアさんに呼びかけられて、ハッと我に返る。

「あっ、何でもないです」
「では、帰りましょう。そうして、今日はゆっくりと休みましょう」
「はい」

そうして、私はリディアさんが呼んだ馬車に乗り城を後にした。

***

「マコ様っ!よくご無事で!!」
「ルイザさん!!」

屋敷に戻ると、屋敷の人達と共に少し緩く動きやすそうな服を着たルイザさんが居た。
真琴を見ると、大きな声を上げて真琴に走り寄る。

「ルイザさん!!…よかった、無事で。怪我は大丈夫ですか?」
「はい。城の優秀な治癒師達のお陰で、傷も殆ど無いです。………それより。マコ様の護衛でありながら、護る事が出来ず危険な目に合わせてしまい申し訳ありません」

そう言って、ルイザは真琴に頭を下げた。

「そんなっ!頭を上げて下さいっ!!」
「しかし…」
「私を、命懸けで護ろうとしてくれた人に感謝すれど恨むなんて事はありません」

そうだ。護衛がその様な仕事だとしても、命を懸けてまで護ろうとしてくれる人は、どれ位いるだろう?

(そんな人を恨んだりするわけない)

「ルイザさんが良ければ、これからもよろしくお願いします」
「っ!………はい。今度こそ、マコ様をどんな危険からもお守り致します」
「あっ!勿論、命大事に…ですよ?」
「ふふっ。…はい、分かりました。命大事に…ですね」
「です」

そう言って、2人でクスクスと笑い合う。
それにつられた屋敷の人達も笑いながら、真琴の無事を喜んだのだった。



しおりを挟む
感想 172

あなたにおすすめの小説

獣人の彼はつがいの彼女を逃がさない

たま
恋愛
気が付いたら異世界、深魔の森でした。 何にも思い出せないパニック中、恐ろしい生き物に襲われていた所を、年齢不詳な美人薬師の師匠に助けられた。そんな優しい師匠の側でのんびりこ生きて、いつか、い つ か、この世界を見て回れたらと思っていたのに。運命のつがいだと言う狼獣人に、強制的に広い世界に連れ出されちゃう話

辺境の薬師は隣国の王太子に溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
一部の界隈でそれなりに有名だった薬師のアラーシャは、隣国に招かれることになった。 隣国の第二王子は、謎の現象によって石のように固まっており、それはいかなる魔法でも治すことができないものだった。 アラーシャは、薬師としての知識を総動員して、第二王子を救った。 すると、その国の第一王子であるギルーゼから求婚された。 彼は、弟を救ったアラーシャに深く感謝し、同時に愛情を抱いたというのだ。 一村娘でしかないアラーシャは、その求婚をとても受け止め切れなかった。 しかし、ギルーゼによって外堀りは埋められていき、彼からの愛情に段々と絆されていった。 こうしてアラーシャは、第一王子の妻となる決意を固め始めるのだった。

この世界に転生したらいろんな人に溺愛されちゃいました!

めーめー
恋愛
前世は不慮の事故で死んだ(主人公)公爵令嬢ニコ・オリヴィアは最近前世の記憶を思い出す。 だが彼女は人生を楽しむことができなっかたので今世は幸せな人生を送ることを決意する。 「前世は不慮の事故で死んだのだから今世は楽しんで幸せな人生を送るぞ!」 そこから彼女は義理の弟、王太子、公爵令息、伯爵令息、執事に出会い彼女は彼らに愛されていく。 作者のめーめーです! この作品は私の初めての小説なのでおかしいところがあると思いますが優しい目で見ていただけると嬉しいです! 投稿は2日に1回23時投稿で行きたいと思います!!

女性の少ない異世界に生まれ変わったら

Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。 目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!? なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!! ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!! そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!? これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。

転生したら竜王様の番になりました

nao
恋愛
私は転生者です。現在5才。あの日父様に連れられて、王宮をおとずれた私は、竜王様の【番】に認定されました。

拾った宰相閣下に溺愛されまして。~残念イケメンの執着が重すぎます!

枢 呂紅
恋愛
「わたしにだって、限界があるんですよ……」 そんな風に泣きながら、べろべろに酔いつぶれて行き倒れていたイケメンを拾ってしまったフィアナ。そのまま道端に放っておくのも忍びなくて、仏心をみせて拾ってやったのがすべての間違いの始まりだった――。 「天使で、女神で、マイスウィートハニーなフィアナさん。どうか私の愛を受け入れてください!」 「気持ち悪いし重いんで絶対嫌です」  外見だけは最強だが中身は残念なイケメン宰相と、そんな宰相に好かれてしまった庶民ムスメの、温度差しかない身分差×年の差溺愛ストーリー、ここに開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

竜王陛下の番……の妹様は、隣国で溺愛される

夕立悠理
恋愛
誰か。誰でもいいの。──わたしを、愛して。 物心着いた時から、アオリに与えられるもの全てが姉のお下がりだった。それでも良かった。家族はアオリを愛していると信じていたから。 けれど姉のスカーレットがこの国の竜王陛下である、レナルドに見初められて全てが変わる。誰も、アオリの名前を呼ぶものがいなくなったのだ。みんな、妹様、とアオリを呼ぶ。孤独に耐えかねたアオリは、隣国へと旅にでることにした。──そこで、自分の本当の運命が待っているとも、知らずに。 ※小説家になろう様にも投稿しています

くたばれ番

あいうえお
恋愛
17歳の少女「あかり」は突然異世界に召喚された上に、竜帝陛下の番認定されてしまう。 「元の世界に返して……!」あかりの悲痛な叫びは周りには届かない。 これはあかりが元の世界に帰ろうと精一杯頑張るお話。 ──────────────────────── 主人公は精神的に少し幼いところがございますが成長を楽しんでいただきたいです 不定期更新

処理中です...