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第1章
No.51
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「クソッ!」
黒いローブを着た背の高い男は、 苛立たしげにテーブルの上の物をなぎ払う。
ここは、現在この男が根城として使っている古く寂れた一軒家。裏通りに面した場所にあるこの場所は、滅多に人も立ち寄らず男にとっては好都合な場所だった。
「おいおい、どうしたんだよ?荒れてんな」
そう言って、小柄な黒いローブの男が部屋に入って来る。その手には、食料の入った袋。食料調達に出ていた背の高い男の仲間だ。
「………あの男の囲っている女に精神魔法をかけたが、あの男に気付かれた」
それに、小柄な男は驚いた。
背の高い男は、精神系の魔法の腕は一流だ。それなのに、あの男に気付かれた?
「まさか、直ぐにか?」
「いや、2日目の早朝だ」
それでも、驚きを隠せない。
「もう少しだったのにっ… !」
ギリっと歯を噛み締める背の高い男。
男が真琴にかけた魔法は、一見ただ眠っている様に見える。だが、本当は精神…夢の世界で相手を捉え2度と現実世界に戻れなくする魔法だ。
この魔法は、他者に気が付かれにくいというメリットがある。だが、その一方で相手の精神を捉えるまでに時間がかかるというデメリットがある。
(それなのに…!)
あの男…アルフォンスに気付かれた。
己のの魔法に自信を持っていたが、それを呆気なく見破られた。その事実に、アルフォンスに対しての憎しみが更に募る。
「………まぁ、一筋縄ではいかない事は分かっていた」
深呼吸をして溢れ出す怒りや憎しみの感情に蓋をして、背の高い男は表面上は落ち着きを取り戻す。
だが、その目には未だ消える事のない黒い感情がチラリと垣間見える。
「それで、そっちの方はどうだ?」
「あぁ、順調だぜ。ちょっと、声をかけたらそれなりの人数が集まってきたぜ」
そう言って、小柄な男は散らかった床の上を歩いて何も置いてないテーブルに袋を置く。
「それより、面白い話を聞いたんだ」
「面白い話?」
ニヤリと笑う小柄な男を、背の高い男は不審げな目で見る。
「あぁ。とある貴族の令嬢が暗殺の依頼をしてるんだ」
「それが?貴族にはよくある事だろう」
確かに、貴族の中では邪魔な相手を己の手を使わずに始末する為に暗殺者を雇う事は多い。日常茶飯事だと言ってもいい。それで、生きて行く者もいるくらいだ。それの何が、一体面白い話なのだろう。
「面白いのは此処からだ。その令嬢の依頼が、『とある名のある貴族が最近囲い出した女の暗殺』なんだぜ?」
それを聞いて思い浮かべたのは、たった1人。
「………確かに面白い話だな」
「だろ?」
背の高い男は、クククッと笑う。
「是非、その令嬢にお会いしたいな。きっと、いい駒になってくれる」
2人は目を合わせてニヤリと嗤いあった。
黒いローブを着た背の高い男は、 苛立たしげにテーブルの上の物をなぎ払う。
ここは、現在この男が根城として使っている古く寂れた一軒家。裏通りに面した場所にあるこの場所は、滅多に人も立ち寄らず男にとっては好都合な場所だった。
「おいおい、どうしたんだよ?荒れてんな」
そう言って、小柄な黒いローブの男が部屋に入って来る。その手には、食料の入った袋。食料調達に出ていた背の高い男の仲間だ。
「………あの男の囲っている女に精神魔法をかけたが、あの男に気付かれた」
それに、小柄な男は驚いた。
背の高い男は、精神系の魔法の腕は一流だ。それなのに、あの男に気付かれた?
「まさか、直ぐにか?」
「いや、2日目の早朝だ」
それでも、驚きを隠せない。
「もう少しだったのにっ… !」
ギリっと歯を噛み締める背の高い男。
男が真琴にかけた魔法は、一見ただ眠っている様に見える。だが、本当は精神…夢の世界で相手を捉え2度と現実世界に戻れなくする魔法だ。
この魔法は、他者に気が付かれにくいというメリットがある。だが、その一方で相手の精神を捉えるまでに時間がかかるというデメリットがある。
(それなのに…!)
あの男…アルフォンスに気付かれた。
己のの魔法に自信を持っていたが、それを呆気なく見破られた。その事実に、アルフォンスに対しての憎しみが更に募る。
「………まぁ、一筋縄ではいかない事は分かっていた」
深呼吸をして溢れ出す怒りや憎しみの感情に蓋をして、背の高い男は表面上は落ち着きを取り戻す。
だが、その目には未だ消える事のない黒い感情がチラリと垣間見える。
「それで、そっちの方はどうだ?」
「あぁ、順調だぜ。ちょっと、声をかけたらそれなりの人数が集まってきたぜ」
そう言って、小柄な男は散らかった床の上を歩いて何も置いてないテーブルに袋を置く。
「それより、面白い話を聞いたんだ」
「面白い話?」
ニヤリと笑う小柄な男を、背の高い男は不審げな目で見る。
「あぁ。とある貴族の令嬢が暗殺の依頼をしてるんだ」
「それが?貴族にはよくある事だろう」
確かに、貴族の中では邪魔な相手を己の手を使わずに始末する為に暗殺者を雇う事は多い。日常茶飯事だと言ってもいい。それで、生きて行く者もいるくらいだ。それの何が、一体面白い話なのだろう。
「面白いのは此処からだ。その令嬢の依頼が、『とある名のある貴族が最近囲い出した女の暗殺』なんだぜ?」
それを聞いて思い浮かべたのは、たった1人。
「………確かに面白い話だな」
「だろ?」
背の高い男は、クククッと笑う。
「是非、その令嬢にお会いしたいな。きっと、いい駒になってくれる」
2人は目を合わせてニヤリと嗤いあった。
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