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第1章

No.37

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「アルフォンスさんって、凄い人なんだ…」

一通り、文字を写し終えて私は休憩する。

私は今、文字の練習代わりにこの国の歴史書の一部を写していた。その内容が、「16年前に起こったドラゴニールとスネラークの争い」。

「アルフォンス様は、この国の守護竜とまで言われる方ですからね。実際、アルフォンス様はこの国…アスガルナ大陸でも5本の指に入る実力者なんですよ」

リディアさんが、まるで自分の事の様に誇らしげに教えてくれる。

「凄いですね」

まさか、国1番では無く大陸屈指の実力だとは思わなかった。

「それにしても、マコ様は本当に教え甲斐のある生徒ですね。書き写しも完璧に出来ています。文字の書き取りは、もう教える事がありません」
「そんな…。リディアさんの教え方が上手なんですよ」

リディアさんに褒められ、照れる。
この頃には、私の中でリディアさんは本当の姉の様な存在だった。だから、褒められると素直に嬉しさが込み上げる。

「これからは、マコ様自身の手で色々調べる事が出来ますね」
「それで、お願いなんですが…。これから街の図書館で調べ物をしたいんです」
「それは当然の事ですね。ですが、お昼をしっかり食べてからです。何事も、お腹が空いていては上手くいかないですからね」

(ここの料理って、凄く美味しいんだよね…。だから、つい食べ過ぎちゃうよ)

そんな事を思っていると、グゥ~っとお腹が鳴る。

(なっ!?私のお腹の馬鹿!!)

「ほら、マコ様のお腹も賛成らしいですよ?」

クスクスと笑うリディアさん。
私は、恥ずかしさの余りリディアさんの顔が見れない。

「今日は、マコ様が食べたことの無い果物を料理長が用意したんですよ?」

そう言って、リディアさんが昼食を運んで来る。
温かいポトフに似たスープに、この国の主食である少し硬い黒パンと少量のサラダ。そして、リディアさんが言っていた食べたことの無い果物。

「うわぁ~。この果物は、初めて見ます」

それは、握り拳程の大きさの完熟前のバナナに似た果物だった。

「これは、バーナンと言う南の方で取れる果物なんです」

(バーナン…。思いっきり、バナナだよね?)

この世界の食べ物の名前は、地球の物と何処か似ていて覚えやすくて助かっている。

「バーナンは、皮を剥いて食べるんですよ」

そう言って、リディアさんが皮を剥いたバーナンを私に差し出す。

「ありがとうございます」

受け取り、お礼を言ってバーナンを一口齧る。

「!?」

(何これ!?)

噛んだ途端、甘さの中に何処か酸味がある味が広がる。

(これって、ミカンの味だよね!?)

まさか、バナナの見た目の果物がミカンの味がするとは。

「…異世界恐るべし」

思わず、そう口に出してしまった。
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