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第1章

No.35

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ドラゴニール王国王都バザン。
そのバザンにある一軒の古ぼけた酒場。
周りの騒音など気にせずに、端の席で何やら顔を寄せ合い何かを話している黒いローブを着た2人の男。

「…その情報は本当なのか?」

背の高い方の男が、小柄なもう1人の男に聞き返す。

「あぁ、間違いない」

そう、断言する小柄な男。
背の高い男は、今聞いた話を信じられなかった。


ーー血濡れの火竜が、己の屋敷に女を囲っている


ここ何十年間もの間、浮いた話どころか女の影1つなかった冷酷なあの男が「女」を屋敷に囲っている?

「その根拠は?」

小柄な男は、ニヤリと笑う。

「元々、あの男が女を囲ってるって噂はあったんだ。その噂の確認をしてたら、見たんだよ」
「見た?」
「あぁ。あの男が、黒髪の女と一緒に街に居るのをな!」

小柄な男は、目をギラギラさせながら話す。

「それは、使用人とかじゃ無いのか?」
「それは絶対にありえねぇ!だって、あの男自らエスコートしてたんだぜ?しかも、髪飾りなんか買ってやがった!」

その話を聞いて、背の高い男は頷く。

「髪飾りを…。それは間違いないな」
「だろ?」

竜人が、異性にアクセサリーを贈るのには意味がある。異性にプレゼントを贈る事は、「貴方が大切です」という意味があるのだ。
だから、どんな遊び人でもお菓子などは贈るがアクセサリーだけは、本命の異性にしか送らないのだ。

「あの男に、漸く弱点が出来た!今が、チャンスだ!」
「落ち着け」

興奮して、段々と声が大きくなる小柄な男を背の高い男が落ち着かせる。

「漸く、やって来たチャンスだ。感情のままに行動して失敗する訳には行かない」

そう言って、背の高い男は木で出来たジョッキの中の生温いエールを一口飲む。そうして、興奮して渇いた喉を潤してから口を開く。

「しっかりと計画を立てて、あの男に絶望を味あわせてやるんだ」
「そうだな。俺らの祖国を滅ぼしたあの男に復讐を!」

小柄な男は、ジョッキを持ち上げエールを飲み干す。

「ゴクゴク…ゴク。ぷはぁっ!…それで?これからどうするんだ?」
「先ずは、仲間を集める。何、あの男に恨みを持ってる奴は沢山いる。ちょっと声をかければ、あっという間に集まるさ」
「だな。それから?」

背の高い男は、薄気味悪い笑顔を浮かべる。
それを見た、小柄な男はゾッと背筋が凍る。

「計画を立てて、女を攫う。あぁ…。大切に囲っている女が無残にも殺されたら、あの男はどんな顔をするかな」

そう言って、小さく笑う背の高い男。
小柄な男も、その光景を思い浮かべてニヤニヤと笑う。それから、真っ先に口を開く。

「それじゃあ、俺は早速仲間を集めて来る」
「それでは、私は武器を」

そう言って、2人は立ち上がる。

「「全ては、祖国の為に」」




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