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第1章

No.33

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夕刻になると、人々は急ぎ足で家へと向かう。
その代わり、夜の街である歓楽街が灯りを灯し出す。

「今日はどうだった?」
「本当に楽しかったです」

あれから色々な店に寄り、買い物などをして良い気分転換になった。

「それに、こんなに素敵な髪飾りを買ってくれてありがとうございます」

私の頭には、銀に翠の石が付いた髪飾りがある。
これは、アルフォンスさんが買ってくれたものだ。髪飾りが揺れるたび、シャランと綺麗な音が鳴る。

(本当に、綺麗な音だなぁ)

「気に入ってくれたなら嬉しい」
「大事にします」

そうして、馬車に戻りもう屋敷に戻るのかと思ったが。

「すまない。最後に、もう一箇所だけ行きたい場所があるんだ。………あの場所に向かってくれ」

そう言って、アルフォンスさんは御者の人に何処かに向かう様に頼む。

「何処に行くんですか?」
「………ずっと、君を連れて行きたかった場所に」

馬車は、街を出て屋敷を通り過ぎ森の中に入って行く。

(何処まで行くんだろう…)

暫く森の中を走ると、一気に開けた場所に出た。

「アルフォンス様、到着しました」
「わかった。…手を」
「ありがとうございます。………わぁ!!」

アルフォンスさんの手を取って馬車を降り、顔を上げる。すると、目の前に一面美しい花畑が視界に映る。

沈みかける夕日に照らされ、風に舞い上がった花弁がとても美しかった。

「こっちだ」

アルフォンスさんは、花畑の奥にある小さいが花畑全体を見渡せる丘に私を連れて行く。
その丘の頂上付近には、私の膝あたりまでの高さのある青いクリスタルの様な綺麗な石が置かれていた。

「これって…」
「あぁ。君の両親と祖父母の墓だ」

そう言って、アルフォンスさんは墓の前にしゃがむ。

「………ずっと、此処に君を連れて来たいと思っていた。やっと、君を連れて来れた」

アルフォンスさんは、墓に向かって穏やかな声で話しかける。

「やっと、彼女をあなた達の前に連れて来れました。見て下さい。彼女はとても綺麗で美しい女性に成長しました。…彼女は、とても優しい女性です。どうやら、向こうでとても素晴らしい家族に恵まれた様です。私は、彼女を育ててくれた家族に感謝します」
「アルフォンスさん…」

私の家族をそんな風に思っていたとは思わなかった。思わず涙が滲む。

「さぁ、君も…」

そう言われて、私もアルフォンスさんの隣にしゃがむ。

「ただいま…で、いいのかな?私は、月宮真琴って言います。日本っていう国で、暮らしてました。先日、18歳になりました」

そうして、今までどうやって生きて来たかを話す。

「…だから、私は幸せです」

気持ちの全てを話し終わると、周りは暗くなり空には星が出ていた。

「すみません!こんなに長く話し込んじゃって!」

慌てて、アルフォンスさんに謝る。

「いや、18年分の話をしたんだ。話す事は沢山あるだろう。それに、君の事をもっと知れて私も嬉しかったしな」

(~っ!だから、そんな事言うっ!)

思わず顔が赤くなる。
今が暗くて助かった。

「だが、もう暗い。そろそろ帰ろう」
「はい」

そうして、私の初めてのお出かけは終わった。



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