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第1章

No.2

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「おいおい、アル。生まれたばかりの赤ん坊に色気を求めるなよ」

バンラートの言葉すら、混乱している今のアルフォンスには聞こえなかった。

「とにかく!俺の番はこの赤ん坊じゃ無い!!こんな番は要らないっ!」

混乱したままそう言った時だった。

『いらないの?』
『いらないって!』
『いらないって、いったよ!』

何処からか声が聞こえて来た。

「何の声だ?」

バンラートや部下達、老夫婦とアルフォンスが周りを見渡す。

『じゃあ、つれてこう!』
『つれてこう!』
『いらないなら、もらっちゃおう!』

そんな声が聞こえた時だった。

「ああっ!?」

老婦人の悲鳴の様な叫びが聞こえて来た。
慌てて老婦人を見ると、腕の中でスヤスヤと穏やかに眠っていた赤ん坊が淡い光に包まれて透け始めていた。

「なっ!?」

その場にいた者達は、その光景に驚く。一体、何が起きているのか分からない。その間にも、赤ん坊は、みるみる透けて行く。


ーー俺の番が消えて行く


「っ!駄目だ!!」

己の幼い番が消えて行く光景に、青褪めながらアルフォンスは手を伸ばす。しかし、その手は赤ん坊をすり抜け触れない。

「頼むっ!やめてくれ!」

訳も分からず必死に叫ぶ。しかし、その声は聞き届けられなかった。赤ん坊は、アルフォンス達の目の前で老婦人の腕の中から完全に消えてしまった。

「嫌っ~!!私の孫が!!」
「どうしてこんな事にっ!」

老夫婦が悲痛な声で叫ぶ。

「っ!お前達!今すぐ辺りを捜索しろ!俺とアルはミルドニア国王に事情を説明し、魔術師を借りて来る!」

アルフォンスは、呆然と赤ん坊の居なくなった場所を見つめる。

ーー俺の番は?
ーー何処に行ったんだ?
ーーさっきまで目の前で寝ていたのに

目の前が歪み、耳鳴りがする。

ーー俺の大切な運命の番は、何処に行ったんだ?

「………ル、アルっ!」

肩を強く掴まれ、揺さ振られる。ハッとして前を見ると、バンラートが俺を呼んでいた。

「しっかりしろ!今すぐ、ミルドニア国王に協力を要請してお前の番を探すぞ!!」
「あ、ああ…」

何とか頷き、バンラートの後を追い王宮へ向かう。

その後、事情を説明しミルドニアの魔術師や兵達を借りて大々的に捜索された。しかし、1週間経っても赤ん坊は見つからなかった。
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