貴方の事を愛していました

ハルン

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「あら、思い出話が楽しくてつい長居しちゃったわね」
「もう行くのか?」

カインの言葉に、キャロラインは頷く。

「勿論よ。今日の主役は、デビュタントする彼女達よ?ずっと貴方達とお喋りして、エスコート相手を取り上げる様な事はしないわよ。それに、そろそろ夫の所に戻らないと」

キャロラインはそう言って、ある場所を見つめる。その場所に視線を向けると、そこには数人の男性達と談笑しながらも此方をチラチラと伺うルーク達よりも少し年上の男性の姿があった。それを見たルークは、クスッと笑う。

「フィオール侯爵は、相変わらず君の事が心配なんだね」
「フフッ。あんなイカつい顔をしていて、案外可愛いでしょう?」
「いや、それは仕方ないだろ。お転婆キャロラインは、目を話した隙に何するか分からないからな」
「ちょっとカイン、それどう言う意味かしら?」

ギロっとカインを睨むキャロライン。
ギクッとするカインに、カレンが言った。

「お兄様、それだから女性と長続きしないんですのよ」
「ちょっ!?おまっ…!」
「事実では無いですか。少しはルーク様を見習ったら如何ですか?ミレーナ様も、ルーク様は完璧な婚約者だと思いますよね?」

その言葉に、ミレーナは照れながら頷く。

「は、はい。ルークは、とても優しくて私には勿体無い程に素敵な婚約者です」
「おや、ミレーナにそんな風に思って貰えてるなんて嬉しいな」

ルークは嬉しそうに笑いながら、ミレーナの腰を抱き寄せる。

「ちょっ、ルークっ!」
「ほらね?話してた通り、僕の婚約者は可愛いだろ?」
「本当ね。ルークが可愛いって言ってたのがよく分かるわ」
「最近フラれたばかりの俺の前でイチャつくなよ!」
「自業自得ですわ」

そうして暫く喋った後、キャロラインは夫の元へ帰って行った。

「しかし、キャロラインは変わんないな」
「そうだね。まぁ、元気そうで何よりだよ」

そう言うルークは、普段と変わらない姿だった。
その事に、心の何処かでミレーナは安堵した。

(やっぱり、ルークがキャロライン様を見詰めていたと思ったのは気の所為だったんだわ)

「おっ、そろそろデビュタントの挨拶が始まるな。じゃあな、ルークにミレーナ嬢。また今度会おう」
「では、失礼します」

カインとカレンがミレーナ達に挨拶して離れて行く。そのすぐ後に、音楽が鳴り響き王族が会場に現れる。

「緊張するかい?」
「するわよ。これから陛下に挨拶しなくちゃならないんだもの」
「大丈夫、僕がそばに居る。それに、ミレーナなら完璧に出来るよ。さて、僕達もそろそろ行こうか」

緊張しながらもルークにエスコートされ、陛下への挨拶の列に並ぶ。そうして暫くしてミレーナの番がやって来た。目の前の陛下に緊張していたミレーナだが、隣のルークの温もりに勇気を貰いながら何とかデビュタントの挨拶を済ませる。

そうしてミレーナは、大人として社交界の仲間入りを果たしたのだった。





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