漆黒の魔女

ハルン

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その後、使用人に呼ばれた両親が駆け寄ってくるなり母は姉を叩いた。

「アンタみたいなのがルークに近付かないでっ!ルークを妬んで殺そうとしたんでしょうっ⁉︎」

父に抱かれだ僕は咄嗟に叫んだ。

「違うんだ母さん!僕の不注意で…。」
「大丈夫よルーク。さぁ、家に帰って身体を休めなきゃ。…二度とこの子に近付かないで頂戴。」

叩かれて下を見ている姉を残し両親や使用人達と共に屋敷に戻る。

「側にいながらルークを助けなかった使用人はクビにする。」
「大丈夫よ。これからは魔法の勉強も初めて身を守れるようにしましょうね。ルークは魔力が大きいから大丈夫よ。」

魔力の少ない平民などは簡単な生活魔法しか使えない。王族や貴族などの魔力の大きい者達は攻撃魔法や守りの魔法が使える。

(だけど魔法を習い始めて使える様になるのは大体15歳くらいだ。なのに姉さんは池の水を完全に操ってた…。)

それよりも、溺れて苦しかった時に助けてくれたのは姉さんだった。会う度に見下し蔑んでいた僕を迷いなく助け、叱り、本気で心配してくれた。

(…そんな姉さんが出来損ないなわけない。傲慢な僕や姉を嫌っている両親や使用人の誰よりも優れた人だ。僕達こそが人として出来損ないだ。)

その数日後。
みんなの目を掻い潜り姉の住む離れに行った。姉の乳母に案内され姉に会う。

「ルーク、身体はもう大丈夫なの?…言っておくけど貴方を叩いたことは謝らないわ。」
「…うん。今日はお礼を言いに来たんだ。姉さんをバカにして来た僕を迷わず助けてくれて…ありがとう。」

言った後、姉の顔が怖くて見れなく下を向く。そんな僕を姉はやさしく抱き締める。

「自分の悪い事を認め謝る事は簡単そうで本当は凄く難しいの。それが出来る貴方は勇気ある子よ。…それに貴方は私の大切な弟ですもの。助けるのは当たり前よ。」

その瞬間、僕は声を上げて泣いた。
同時に思った。

(この人の側に居たい。こんな僕を大切な弟だと言ってくれたこの人の役に立ちたい。この優しい姉を護りたい。)

それからはみんなの目を盗み月に数回姉を訪ねる。姉は優しく僕を迎えてくれる。15歳の姉に送る花束を自分で作りたくて指を傷だらけにしながらも作り姉に渡した。不恰好な花束を本当に嬉しそうに貰ってくれたカーラ姉さん。僕はカーラ姉さんを守れるように強くなろう。

僕は姉さんに感謝しているんだ。

(僕は姉さんに諭され人間にして貰ったから。)
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