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No.101

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「………かな?」
「きれ……だ…ね」
「まだ……の?」

遠くの方から、微かに誰かの話し声が聞こえて来た。その声は途切れ途切れで聞こえづらいが、恐らくサーシャとあまり年齢の変わらない年頃の子供達のものだろう。

(んっ…頭が痛い)

意識が覚醒し始めたと同時に、ガンガンと脳が揺さぶられる様な痛みと不快感がサーシャを襲う。

(この痛み…前世で覚えがあるわ)

前世、敵対する組に誘拐された時があった。
その時、無理矢理薬で意識を奪われ誘拐された。その後、意識を取り戻した時も今と同様な痛みと不快感が襲った。

(これは、強制的に意識を奪われた時に起こる痛みだわ。つまり、私は何者かに誘拐された……と言うことよね)

ある程度の現状を素早く把握したサーシャは、状況を更に詳しく把握する為に動く。直ぐには目を開けず、未だ眠っている様に見せながら僅かに手足を動かす。

(手足に拘束は…無し。匂いは…これは雨?ううん、湿気の匂いだわ。つまり、水辺の近くか風通りの悪い部屋にいるのね)

次に、周囲の音に耳を澄ます。
すると、直ぐに先程の子供達の声が鮮明に聞こえて来た。

「ねぇ、ロイ。この子大丈夫かしら…」
「恐らく、オレ達と同じ様に魔法で眠らされてるだけだと思うから大丈夫だと思う。多分、そのうち目を覚ますんじゃないかな」
「すごくキレイ!」
「ボクしってる!てんしっていうんでしょ?」
「わたし、てんしはじめてみた!」
「う~ん、この子はオレ達と同じ人間だよ……多分。なぁ、ロザリー?」
「当たり前でしょ!………多分」

未だ小さな声で「天使、天使じゃ無い」と話し合う彼等に、サーシャは遂に耐えきれなくなり目を開ける。

「あっ!おきた!」

サーシャの直ぐ側にいた同い年位の男の子が最初に気付く。その声に反応して、残りの4人がこちらを見る。

「君、大丈夫?まだ頭が痛いだろ?」

兄アランと同い年位の一番年長の少年が、心配そうにサーシャに声をかける。その背後では、赤髪のサーシャより少し上くらいの少女が他の子供達を背中に庇いながら此方を見つめていた。

「ほら、水を飲んで。冷たくは無いけど、少しは痛みがマシになるから」
「ありがとうございます」

サーシャは、少年の差し出した水を躊躇いなく飲む。

(ここにいる子供達は、私と同じで誘拐された子供達ね)

薄汚れ、少し痩せ細った整った顔立ちの子供達。そして、自分達を閉じ込める頑丈そうな檻を見てサーシャは人身売買の為に誘拐されたのだと確信した。



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