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No.100

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未だ不穏な会話を続ける2人を見て、サーシャはいい加減げんなりとしていた。

(一体、いつまでくだらない事で言い争うつもりかしら…)

かれこれ30分は続いている。
未だ続きそうな2人のやり取りを見ているうちに、サーシャは喉が渇いてきた。

本来なら、護衛であるザックに飲み物を頼む所だ。しかし、その護衛であるザックはルイスとサーシャに関してのマウントを取り合っている。

(うーん…)

図書館の目の前の人通りの先には、飲み物を売る屋台。人通りも多い上に、今はお昼過ぎで明るい。そうそう面倒事は起きないだろう。そう判断したサーシャは、言い合う2人からソッと離れて屋台に向かった。

「いらっしゃい、いらっしゃい!搾りたての新鮮なジュースはどうだい!」

屋台の店主であるふくよかな女性が、大きな声で客寄せを行っている。

「あの、すみません」
「いらっしゃ……おや!なんて綺麗な子なんだい。一瞬、天使かと思っちまったよ!」

そう言って、女性はにっこりと笑う。

「いらっしゃい、小さな天使様。何が欲しいんだい?アタシのオススメは、今朝取れたばかりのレールモンのジュースだよ」

レールモンとは、前世でのレモンと似た様な味のさっぱりとした果物である。しかし、色は黄色では無くショッキングピンクだが…。

「じゃあ、それでお願いします」
「あいよ!ちょっと待ってな!」

暫くして、女性は透明な色の飲み物を渡してくる。

「ほら、搾りたてのレールモンのジュースだよ!」
「ありがとうございます」

(いっつも思うけど、何であの色からこんな透明なジュースが出来上がるんだろう?)

そんな疑問を抱きながらもジュースを受け取る。

「あの、代金は…」
「それはアタシの奢りだよ。こんな天使の様に綺麗な子がうちの屋台にジュースを買いに来てくれたんだ。それだけで、良い宣伝効果になるさ!それなのにお前さんから代金を貰ったら、バチが当たっちまうよ!」

そう言って笑う女性に、サーシャはお礼を言いながらザック達の元へと戻る。

(思いがけずに得しちゃった!今日は良い事があるかも…)

思いがけない幸運に、サーシャは上機嫌になった。そうして、人混みの先に未だ言い争う2人が見えた。



ーーそこで、サーシャの記憶は途絶えた。



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