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No.70

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そして誕生日当日。

「きゃーーっ!素敵よ、サーシャ!」
「うちの娘は、なんで可愛いんだっ!!」
「サーシャ、こっち向いて!」

パシャパシャと言う前世で馴染みのある音と共に、サーシャの着飾ったドレス姿が魔道具に収められていく。

「皆んな、そろそろ止めにしなーー」
「あっ、その顔イイわ!」
「サーシャは、困った顔も可愛いな!」
「サーシャ、素敵だよ!」

困った顔で止めようとするサーシャの言葉を遮り、家族達はますますテンションが上がる。

(いや、もう本当にいい加減終わってよ…)

実は、彼此30分はこの状態が続いている。

現在のサーシャは、髪は緩く巻きながら結い上げ、明るく足元がふんわりとしたグリーンのドレスを着ていた。その姿は、まさに天使の様に愛らしかった。準備を手伝ったメイド達から絶賛されながら、家族が待つ部屋に向かったサーシャを待ち受けていたのは、メイド達よりも更に激しい称賛の嵐だったのだ。

「ハァ…。こんなに可愛いサーシャを人前に出すなんて、危険過ぎる。やっぱり、誕生日会は中止にしよう」

(はいっ!?)

漸く落ち着いたと思ったダリルの口から、とんでもない言葉が飛び出した。

(誕生日会の時間迄、残り1時間。それなのに、一体何言ってるの!?)

「俺も、それに賛成だよ。こんなに可愛いサーシャを何処ぞの馬の骨とも分からない奴等の前に出したくないな…」

(いや、兄よ。招待客は、皆んな由緒ある家柄やお父様達の親しいご友人だから)

その時、ミランダが男達二人を嗜める。

「ちょっと、これだから男の人は。今更、誕生日会をキャンセルなんて出来る訳ないでしょう?皆様、忙しい中で都合を付けて来てくれるのに」
「しかしっ!何処ぞのクソガキがサーシャに惚れて、色目を使うかもしれない…!」
「そうだよ母様!何かあってからじゃ遅いよ!」
「だから、落ち着いて。そんな先の見えない事を心配するのはやめて。……それに、急に自分達の都合だけで人を振り回す人は、いつか信頼を失うわ」
「ぐっ…!………わかった」
「………ごめんなさい、母様」

(流石は、お母様っ!)

そうサーシャが感激した時だった。

「………勿論、私の可愛いサーシャに色目を使う様な方は、後できちんと調べさせてもらうわ。……そう、何から何まで…ね」

真っ黒い笑顔を浮かべてそう話すミランダ。
それを見て、「やっぱり自分の家族は、かなり過保護だ」と思うサーシャであった。

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