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No.48

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(誰だろう?セバスチャンかな…?)

父が自分を呼ぶ様にセバスチャンに頼んだのかと思い、サーシャは返事をする。

「どうぞ」

そうして、開いた扉から入って来た人物を見てサーシャは自身の顔が引き攣るのが分かった。

「やあ、サーシャ嬢」
「………」

入って来たのは、セバスチャンでもアランでもこの屋敷の誰でも無い、キラキラと美しい笑みを浮かべた本日の客人であるクリスだった。クリスは、護衛や屋敷の使用人、家族などを連れず一人だった。

「如何して此処に?」などと、馬鹿な事は聞かない。案内人も連れずに一人で来た時点で、彼がサーシャに会いに来たと言う事は直ぐに分かった。

(物凄く面倒な予感しかしない…)

そう思いながらも、サーシャは本来の五歳児の子供の様に振る舞った。

「わぁ~!クリス王子様!どうしたんですか?」

そう言って、カッコいい王子様に会えて興奮している様に喋りながらクリスに近付く。勿論、一定の距離は保ちながら。この距離なら、クリスが何かしようとして来ても直ぐに逃げる事が出来る。

(でも、油断は出来ない…)

唯一の逃げ道である扉は、クリスの背後。
何より、彼はサーシャと同類の人間だ。きっと、それは相手も察した筈だ。………それでも、万が一の可能性にかけて唯の子供の振りをする。

「サーシャ嬢は、本当に面白いね。まさか、この期に及んで無知な子供のフリをするなんて」

ーーだが、それも無駄だった様だ。

クリスは、そう言いながら目の前のサーシャを見つめる。

「今日は、サーシャ・アベルシュタイン嬢がどんな人物か見に来ただけだったんだけど…。まさか、自分と同類の女の子に出会えるとは思わなかったよ」

その言葉に、サーシャは無垢な子供のフリを止める。そうして、無表情で目の前の歪な笑みを浮かべるクリスを見る。

「………で?わざわざ護衛や屋敷の使用人を連れずに一人でやって来てまで、私に何の様ですか?」
「言っただろう?今日は、君がどんな人物か見に来たんだよ」
「そうですか。それじゃあ、目的は達成しましたよね?早くお戻りになられては?」

さっさと部屋から追い出そうとするサーシャに、クリスは楽しげに笑う。

「酷いなぁ~。もう少しくらい、お喋りでもしようよ。折角、私と同類の人間に会えたんだ。親交を深めようよ」
「結構です」
「連れないなぁ …」

どんなに冷たく接しても、クリスは笑うばかりで部屋を出て行こうとはしない。

(本当に面倒臭い…)

これだから、自分と同類の人間には会いたく無いのだ。日本では、「類は友を呼ぶ」と言うことわざがある。だが、もう一つの諺もある。

ーー同族嫌悪。

今、サーシャがクリスに対して抱いている感情そのままの言葉だった。
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