28 / 106
No.27
しおりを挟む
色々あったお茶会から1週間。
サーシャ達家族は、未だアベルシュタイン領には戻らず王都の邸宅で過ごしていた。
本来なら、お茶会が終わり次第直ぐに帰る予定だった。しかし、サーシャが帰る事を嫌がったのだ。
理由は一つ。
今世で得た、初めての友達だ。
この国の宰相を務めるジルロは、王都にある城に最も近い高級住宅地に本邸を構えて住んでいる。そうすると、必然的に彼の家族達もそこに住む事になる。
サーシャ達が住む本邸があるアベルシュタイン領は、王都から馬車で半日程の場所にある。決して行き来出来ない距離では無いが、子供が移動するには少し無理がある。
(もしも、アベルシュタイン領に帰ったらティミアと殆ど会えなくなる…!)
今世でやっと得た友達。
しかも、同じ前世の記憶のある話の通じる希有な相手。
ーーそんなティミアと、1ヶ月に数回しか会えない?
そんなの、絶対に無理である。
そんな事になるくらいなら、毎日行き来出来る距離である王都の邸宅に一人で残った方がマシだ。そう考えて、サーシャは父ダリルに言った。
『お父様、お願いがあるの。私、アベルシュタイン領に帰りたく無い。アベルシュタイン領に帰ったら、ティミアと会えなくなるもの。だから、此処に残りたいの』
そう言ったサーシャに、ダリルはあっさりと許可を出した。娘命のダリルならもっと渋ると思っていただけに、サーシャは拍子抜けした。だが、此処に残ってイイと言う許可を貰えた事を喜んだ。
***
『お父様ありがとう!私、ちゃんと毎日手紙を書くから!』
『何を言ってるんだい?私達も、此処に残るよ』
『えっ?だって、領地の事は…?』
『そんなの、セバスチャンが居るから大丈夫だよ。此処にサーシャが残るのに、私達が帰る訳ないだろう?』
『そうだよ。それに、俺も王都で少し用があるしね』
『私も、久し振りにミレーヌに会いたいわ』
『決まりだね。暫くは、皆んなで王都で暮らそう』
***
そういう訳で、サーシャだけでなく家族全員が王都で暫く過ごす事になったのだ。正直、家族と一緒に入れるのは嬉しい。
そんな事を思いながら部屋で本を読んでいると、部屋の扉がノックされた。
「どうぞ」
「失礼します。お嬢様、トールディン公爵令嬢ティミア様がお越しになりました」
「…!すぐ行くわ!」
メイドの言葉に、サーシャは読んでいた本を置いて直ぐに部屋を飛び出す。そうして、大きな玄関に向かうと使用人に付き添われたティミアの姿があった。
「ティミア!いらっしゃい!」
「サーシャ!」
満面の笑みを浮かべて歓迎するサーシャに、ティミアは嬉しそうに笑った。そう、今日は待ちに待ったティミアとの初めてのお買い物をする日なのだった。
サーシャ達家族は、未だアベルシュタイン領には戻らず王都の邸宅で過ごしていた。
本来なら、お茶会が終わり次第直ぐに帰る予定だった。しかし、サーシャが帰る事を嫌がったのだ。
理由は一つ。
今世で得た、初めての友達だ。
この国の宰相を務めるジルロは、王都にある城に最も近い高級住宅地に本邸を構えて住んでいる。そうすると、必然的に彼の家族達もそこに住む事になる。
サーシャ達が住む本邸があるアベルシュタイン領は、王都から馬車で半日程の場所にある。決して行き来出来ない距離では無いが、子供が移動するには少し無理がある。
(もしも、アベルシュタイン領に帰ったらティミアと殆ど会えなくなる…!)
今世でやっと得た友達。
しかも、同じ前世の記憶のある話の通じる希有な相手。
ーーそんなティミアと、1ヶ月に数回しか会えない?
そんなの、絶対に無理である。
そんな事になるくらいなら、毎日行き来出来る距離である王都の邸宅に一人で残った方がマシだ。そう考えて、サーシャは父ダリルに言った。
『お父様、お願いがあるの。私、アベルシュタイン領に帰りたく無い。アベルシュタイン領に帰ったら、ティミアと会えなくなるもの。だから、此処に残りたいの』
そう言ったサーシャに、ダリルはあっさりと許可を出した。娘命のダリルならもっと渋ると思っていただけに、サーシャは拍子抜けした。だが、此処に残ってイイと言う許可を貰えた事を喜んだ。
***
『お父様ありがとう!私、ちゃんと毎日手紙を書くから!』
『何を言ってるんだい?私達も、此処に残るよ』
『えっ?だって、領地の事は…?』
『そんなの、セバスチャンが居るから大丈夫だよ。此処にサーシャが残るのに、私達が帰る訳ないだろう?』
『そうだよ。それに、俺も王都で少し用があるしね』
『私も、久し振りにミレーヌに会いたいわ』
『決まりだね。暫くは、皆んなで王都で暮らそう』
***
そういう訳で、サーシャだけでなく家族全員が王都で暫く過ごす事になったのだ。正直、家族と一緒に入れるのは嬉しい。
そんな事を思いながら部屋で本を読んでいると、部屋の扉がノックされた。
「どうぞ」
「失礼します。お嬢様、トールディン公爵令嬢ティミア様がお越しになりました」
「…!すぐ行くわ!」
メイドの言葉に、サーシャは読んでいた本を置いて直ぐに部屋を飛び出す。そうして、大きな玄関に向かうと使用人に付き添われたティミアの姿があった。
「ティミア!いらっしゃい!」
「サーシャ!」
満面の笑みを浮かべて歓迎するサーシャに、ティミアは嬉しそうに笑った。そう、今日は待ちに待ったティミアとの初めてのお買い物をする日なのだった。
0
お気に入りに追加
4,072
あなたにおすすめの小説
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
心の声が聞こえる私は、婚約者から嫌われていることを知っている。
木山楽斗
恋愛
人の心の声が聞こえるカルミアは、婚約者が自分のことを嫌っていることを知っていた。
そんな婚約者といつまでも一緒にいるつもりはない。そう思っていたカルミアは、彼といつか婚約破棄すると決めていた。
ある時、カルミアは婚約者が浮気していることを心の声によって知った。
そこで、カルミアは、友人のロウィードに協力してもらい、浮気の証拠を集めて、婚約者に突きつけたのである。
こうして、カルミアは婚約破棄して、自分を嫌っている婚約者から解放されるのだった。
帰らなければ良かった
jun
恋愛
ファルコン騎士団のシシリー・フォードが帰宅すると、婚約者で同じファルコン騎士団の副隊長のブライアン・ハワードが、ベッドで寝ていた…女と裸で。
傷付いたシシリーと傷付けたブライアン…
何故ブライアンは溺愛していたシシリーを裏切ったのか。
*性被害、レイプなどの言葉が出てきます。
気になる方はお避け下さい。
・8/1 長編に変更しました。
・8/16 本編完結しました。
【本編完結】番って便利な言葉ね
朝山みどり
恋愛
番だと言われて異世界に召喚されたわたしは、番との永遠の愛に胸躍らせたが、番は迎えに来なかった。
召喚者が持つ能力もなく。番の家も冷たかった。
しかし、能力があることが分かり、わたしは一人で生きて行こうと思った・・・・
本編完結しましたが、ときおり番外編をあげます。
ぜひ読んで下さい。
「第17回恋愛小説大賞」 で奨励賞をいただきました。 ありがとうございます
短編から長編へ変更しました。
62話で完結しました。
愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。
石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。
ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。
それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。
愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる