13 / 106
12
しおりを挟む
仲良くなるべく声をかけた目の前のハムスターの様な可愛らしい女の子は、大きな目を更に見開きサーシャを見つめている。
(………どうしたのかしら?私、変な事をした?)
笑顔を浮かべながら、頭の中で必死に考える。そうして、ある事に気が付いた。
(私、落ちてるマカロンを拾っちゃった…!)
前世では、落ちた物は拾って捨てる。それが当たり前だったが、今世のサーシャは侯爵令嬢だ。貴族は、落ちた物を自身で拾わない。側に控える使用人に全てを任せるのだ。
貴族の世界には、『3秒ルール』などと言う庶民の謎のルールは無い。
それなのに、前世の感覚で落ちているマカロンを拾ってしまった。側から見れば、礼儀作法のなっていないと思われる行為だ。
(あーあ、やっちゃったなぁ。普段から気を付ける様にしてたんだけど…)
やはり、長年染み付いた感覚は中々抜けないと再認識しながらも、表面上はなんて事ない様に振る舞いながらマカロンを側にあるお菓子の並ぶテーブルの端に置く。此処におけば、直ぐに支給係の者が片付けてくれるだろう(勿体ないが)。
「私ったら、名乗らずに失礼しました。私、アベルシュタイン家が娘、サーシャ・アベルシュタインと言います」
「あっ!わ、私はトールディン公爵が娘、ティミア・トールディンと言いますっ!」
「まぁ、トールディン公爵家の…。先に話しかけた無礼、お許し下さい」
そう言って、サーシャはティミアに頭を下げる。本来、身分の高い者に身分の低い者が先に話しかけるのは失礼に値する。下手をしたら、不敬罪で訴えられる事もあるのだ。
「そ、そんな!頭を上げて下さい!きょ、今日は、身分関係のない集まりです!だ、だから頭を上げて下さい!」
そう言って頭を上げさせようとするティミアに、サーシャは「おや?」と疑問に思った。
此処に集まっているのは、5歳~7歳程の子供達だ。前世で言えば、幼稚園の年中組から小学一年生程の年齢の子供達の集まりだ。貴族としての教育を受けているとは言え、難しい事柄まで真に理解するのは難しいだろう。それなのに、目の前の少女は本当に物事を理解して話している様に感じた。
ーーそう、まるで前世の記憶のあるサーシャの様に。
だから、サーシャはある言葉を口にした。この世界に生まれてからは、一度も口にしたことのない言葉を。
「『こんにちは』」
懐かしい、もはや遠い記憶の中の二度と行く事は出来ない、もう一つの故郷の言葉。
この世界では馴染みの無い音を聴いて、目の前の少女は驚愕の表情を浮かべた。
「ど、どうして…」
その言葉を聞いて、サーシャは確信した。
彼女も、サーシャと同じ転生者だと。
(………どうしたのかしら?私、変な事をした?)
笑顔を浮かべながら、頭の中で必死に考える。そうして、ある事に気が付いた。
(私、落ちてるマカロンを拾っちゃった…!)
前世では、落ちた物は拾って捨てる。それが当たり前だったが、今世のサーシャは侯爵令嬢だ。貴族は、落ちた物を自身で拾わない。側に控える使用人に全てを任せるのだ。
貴族の世界には、『3秒ルール』などと言う庶民の謎のルールは無い。
それなのに、前世の感覚で落ちているマカロンを拾ってしまった。側から見れば、礼儀作法のなっていないと思われる行為だ。
(あーあ、やっちゃったなぁ。普段から気を付ける様にしてたんだけど…)
やはり、長年染み付いた感覚は中々抜けないと再認識しながらも、表面上はなんて事ない様に振る舞いながらマカロンを側にあるお菓子の並ぶテーブルの端に置く。此処におけば、直ぐに支給係の者が片付けてくれるだろう(勿体ないが)。
「私ったら、名乗らずに失礼しました。私、アベルシュタイン家が娘、サーシャ・アベルシュタインと言います」
「あっ!わ、私はトールディン公爵が娘、ティミア・トールディンと言いますっ!」
「まぁ、トールディン公爵家の…。先に話しかけた無礼、お許し下さい」
そう言って、サーシャはティミアに頭を下げる。本来、身分の高い者に身分の低い者が先に話しかけるのは失礼に値する。下手をしたら、不敬罪で訴えられる事もあるのだ。
「そ、そんな!頭を上げて下さい!きょ、今日は、身分関係のない集まりです!だ、だから頭を上げて下さい!」
そう言って頭を上げさせようとするティミアに、サーシャは「おや?」と疑問に思った。
此処に集まっているのは、5歳~7歳程の子供達だ。前世で言えば、幼稚園の年中組から小学一年生程の年齢の子供達の集まりだ。貴族としての教育を受けているとは言え、難しい事柄まで真に理解するのは難しいだろう。それなのに、目の前の少女は本当に物事を理解して話している様に感じた。
ーーそう、まるで前世の記憶のあるサーシャの様に。
だから、サーシャはある言葉を口にした。この世界に生まれてからは、一度も口にしたことのない言葉を。
「『こんにちは』」
懐かしい、もはや遠い記憶の中の二度と行く事は出来ない、もう一つの故郷の言葉。
この世界では馴染みの無い音を聴いて、目の前の少女は驚愕の表情を浮かべた。
「ど、どうして…」
その言葉を聞いて、サーシャは確信した。
彼女も、サーシャと同じ転生者だと。
10
お気に入りに追加
4,082
あなたにおすすめの小説
婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた
cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。
お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。
婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。
過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。
ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。
婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。
明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。
「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。
そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。
茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。
幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。
「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?!
★↑例の如く恐ろしく省略してます。
★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。
★コメントの返信は遅いです。
★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません
異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~
水無月 静琉
ファンタジー
神様のミスによって命を落とし、転生した茅野巧。様々なスキルを授かり異世界に送られると、そこは魔物が蠢く危険な森の中だった。タクミはその森で双子と思しき幼い男女の子供を発見し、アレン、エレナと名づけて保護する。格闘術で魔物を楽々倒す二人に驚きながらも、街に辿り着いたタクミは生計を立てるために冒険者ギルドに登録。アレンとエレナの成長を見守りながらの、のんびり冒険者生活がスタート!
***この度アルファポリス様から書籍化しました! 詳しくは近況ボードにて!
踏み台(王女)にも事情はある
mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。
聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。
王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。
転生幼女。神獣と王子と、最強のおじさん傭兵団の中で生きる。
餡子・ロ・モティ
ファンタジー
ご連絡!
4巻発売にともない、7/27~28に177話までがレンタル版に切り替え予定です。
無料のWEB版はそれまでにお読みいただければと思います。
日程に余裕なく申し訳ありませんm(__)m
※おかげさまで小説版4巻もまもなく発売(7月末ごろ)! ありがとうございますm(__)m
※コミカライズも絶賛連載中! よろしくどうぞ<(_ _)>
~~~ ~~ ~~~
織宮優乃は、目が覚めると異世界にいた。
なぜか身体は幼女になっているけれど、何気なく出会った神獣には溺愛され、保護してくれた筋肉紳士なおじさん達も親切で気の良い人々だった。
優乃は流れでおじさんたちの部隊で生活することになる。
しかしそのおじさん達、実は複数の国家から騎士爵を賜るような凄腕で。
それどころか、表向きはただの傭兵団の一部隊のはずなのに、実は裏で各国の王室とも直接繋がっているような最強の特殊傭兵部隊だった。
彼らの隊には大国の一級王子たちまでもが御忍びで参加している始末。
おじさん、王子、神獣たち、周囲の人々に溺愛されながらも、波乱万丈な冒険とちょっとおかしな日常を平常心で生きぬいてゆく女性の物語。
縦ロールをやめたら愛されました。
えんどう
恋愛
縦ロールは令嬢の命!!と頑なにその髪型を守ってきた公爵令嬢のシャルロット。
「お前を愛することはない。これは政略結婚だ、余計なものを求めてくれるな」
──そう言っていた婚約者が結婚して縦ロールをやめた途端に急に甘ったるい視線を向けて愛を囁くようになったのは何故?
これは私の友人がゴスロリやめて清楚系に走った途端にモテ始めた話に基づくような基づかないような。
追記:3.21
忙しさに落ち着きが見えそうなのでゆっくり更新再開します。需要があるかわかりませんが1人でも続きを待ってくれる人がいらっしゃるかもしれないので…。
公爵家の次男は北の辺境に帰りたい
あおい林檎
BL
北の辺境騎士団で田舎暮らしをしていた公爵家次男のジェイデン・ロンデナートは15歳になったある日、王都にいる父親から帰還命令を受ける。
8歳で王都から追い出された薄幸の美少年が、ハイスペイケメンになって出戻って来る話です。
序盤はBL要素薄め。
優秀な姉の添え物でしかない私を必要としてくれたのは、優しい勇者様でした ~病弱だった少女は異世界で恩返しの旅に出る~
日之影ソラ
ファンタジー
前世では病弱で、生涯のほとんどを病室で過ごした少女がいた。彼女は死を迎える直前、神様に願った。
もしも来世があるのなら、今度は私が誰かを支えられるような人間になりたい。見知らぬ誰かの優しさが、病に苦しむ自分を支えてくれたように。
そして彼女は貴族の令嬢ミモザとして生まれ変わった。非凡な姉と比べられ、常に見下されながらも、自分にやれることを精一杯取り組み、他人を支えることに人生をかけた。
誰かのために生きたい。その想いに嘘はない。けれど……本当にこれでいいのか?
そんな疑問に答えをくれたのは、平和な時代に生まれた勇者様だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる