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11 ティミアside

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私の名前は、ティミア・トールディン。
トールディン公爵家の娘である。

この国の宰相である父と穏やかで優しい母、それにとてもカッコいいお兄様に優しい使用人達に囲まれて育った私。そんな私には、誰にも話した事がない秘密がある。

私には、前世の記憶があった。

前世では、地球に住むごく普通の女子高生だった。人見知りをする性格だった為に友達はとても少なかったけれど、皆んな優しい人達ばかりだった。

そんな平凡な人生を生きていたある日、突然立っていられないほどの胸の痛みが私を襲った。救急車に運ばれ病院で検査した結果、私は不治の病に侵されている事を知った。その後、残りの時間を家族と共に過ごし、私は家族に見守られながらゆっくりと息を引き取った。


ーーそして、次の瞬間にはティミア・トールディンとして生まれ変わっていたのだ。


最初は酷く混乱した。
だが、今世の優しい家族や使用人達と過ごすうちに私は徐々にこの世界に馴染んでいった。
そうして5歳になった頃、我が家に王妃主催のお茶会の招待状が届いた。その時、父からある話を聞かされた。

現状、公爵家の中で第二王子と歳の近い娘がいる家は我がトールディン家だけ。そして、父はこの国の宰相。その為、私が第二王子の第一婚約者候補として名が上がっている事。

それを聞いた時、私は気が遠くなった。
私は前世と同じ人見知りな性格をしている。そんな私が第二王子の婚約者?考えただけでも無理である。ーー何より、私を第二王子が気にいるとは思えない。

ふわふわと纏りのない茶色い髪に何処にでもある緑の瞳。そして、他の子供よりふっくらとした身体。他の貴族の子供達が私を陰で『子豚ちゃん』と呼んでいるのを知っている。

精神年齢が二十歳近いといっても、人見知りの性格の私。例え、相手が子供だとしても悪口を言われるのは堪える。

ーー子供は正直だ。

しかも、5歳頃の子供と言ったら思った事を直ぐに口にする。その為、大人達も「あのトールディン家の娘は醜い」と噂する。その噂をわざと広める様に話すのは、宰相をしている父をよく思わない貴族達だ。父は、自身のせいで娘に辛い思いをさせている事を何度も謝った。

(お父様のせいじゃないわ…)

私が太っているから。
そのせいで、敵対する貴族達や他の子供達に攻撃する口実を与えてしまっているのだ。

そう分かっているから、ティミアはダイエットを頑張った。食事にも気を付けたし、運動も頑張った。

ーーだが、それでも駄目だった。

元々、食事を沢山取るわけでも無かったのだ。この体型は元々の生まれつきなのだ。それを知った時、ティミアは何度も泣いた。家族達は、そんな彼女を優しく抱き締めた。

『ティミア、泣かないでおくれ。お前は何にも悪くない』
『私のティミア。大丈夫、貴女は可愛いわ』
『そうだよ。いつか、ティミアの友達になりたいって言ってくれる人が必ず現れるよ』

両親や兄の言葉に、ティミアは泣く事をやめた。ティミアが泣くと、家族が悲しむからだ。それに、大好きな両親がくれた健康な身体だ。前世で病気で亡くなったティミアにとって、それだけあれば幸せだと気付いたのだ。

それに、兄の言葉がティミアを前向きにしていた。

『いつか、ティミアの友達になりたいって言ってくれる人が必ず現れるよ』

その言葉を胸に、今日まで過ごして来た。
ーーそして今。

「私も、マカロンが大好きなの。ねぇ、貴女のオススメの美味しいマカロンは何?教えてくれない?」

王妃主催のお茶会に舞い降りた天使が、私に笑いかけていた。




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