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(………ど、どうしよう。凄く静かなんだけど…!)

サーシャは、現在困惑していた。

***

ダリルが知り合いの貴族に呼ばれて離れた為、サーシャは子供達が集まる場所へと向かった。そこには、沢山の同い年くらいの子供達が楽しそうに側にいる子と話していた。

(凄い、もう友達が居るのね…。私も、絶対に二人はゲットするわ!)

そう意気込んだサーシャは、笑顔を浮かべてなるべくお淑やかに見えるように歩きながら子供達の集まる場所にやって来た。

しかし、サーシャがその場に足を踏み入れた途端、あれだけ賑わっていた子供達が一斉に無言になりサーシャをガン見して来たのだった。

(な、何?何でこんなに静かになるの?…しかも、ガン見しすぎじゃ無い?)

想像もしていなかった反応に、ヒクッと笑顔が引き攣りそうになる。

(………ま、まさか、ドレスの裾や髪型が乱れてるとか!?)

頭の中に、トイレから戻った女の子のスカートがパンツに入り込んでいて慌てるイメージが過ぎる。(女性なら、一度は経験があるかも知れない)

内心慌てながら、しかし表面には出さずにさり気無く…そして素早くドレスの裾を確認する。

(………よし、大丈夫。パンツは見えてない)

髪型も確認したいが、此処には鏡が無い。何処にも引っ掛けていない為、うちのメイド達の腕前を信じるしか無い。

(きっと、後から来たから注目されてるだけよ。そうよ、気にする事ないわ!単に物珍しいだけよ)

やはり、何処の世界でも後から来ると否応にも注目を集めてしまうものだ。

それに、前世では「人一人殺してます」という顔をした奴や、顔に傷のある厳つい男達と共に過ごしていたのだ。……正直、最初は困惑したが今はこんなに可愛らしい子供達にガン見されても何とも思わない。あれらの男達に比べたら、子猫に見られている様なものだ。

そう思っていた時、足元に何かが転がって来た。

不思議に思い足元を見ると、そこには可愛らしいマカロンが一つ足元に転がっていた。

「あっ!」

マカロンを拾うと、慌てた様な声が聞こえて来る。その声に向かって顔を上げるーーと。

(な、な、な、何この子!?すっごく可愛い!!)

そこには、ふわふわの茶色い髪に緑の瞳の少しふっくらとした女の子がいた。どうやら、彼女が食べようと持っていたマカロンを落とした様だ。

(やだ!ハムスターみたいで凄く可愛い!決めたわ!絶対にこの子とお友達になるわ!)

サーシャは、そう心に決めて素早く…だが、お淑やかに見えるように歩いて少女の前に立つ。そうしてなるべく可愛らしく見えるように笑いながら、少女にマカロンを差し出す。

「これ、貴女のマカロンでしょ?」
「あっ、えっ、その…」
「私も、マカロンが大好きなの。ねぇ、貴女のオススメの美味しいマカロンは何?教えてくれない?」

そう言って、サーシャはこの日一番の美しい笑みを浮かべたのだった。








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