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第1章
案内役
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アレックスに腕を掴まれガス達の元へと連れて行かれたマリオン。孤児院の前には、飛んで行った物を集め終えた皆が既に揃っていた。
「おや、レックス様にマリオン。二人は一緒に居たんですね」
アレックスと共にやって来たマリオン達を見て、ガスは穏やかに笑いながら声をかけてくる。
「えぇ。先程、裏手の所で偶然会いまして。ガス殿、今回の滞在期間中に案内役を付けると言っていましたよね?」
「はい、そう言いました」
ガスの返答に、アレックスは笑顔を浮かべてマリオンを自身の側に軽く引っ張る。
「うわっ…!」
軽くとは言え、いきなり腕を引っ張られたマリオン。軽くバランスを崩し驚きの声が出るが、何とか体勢を整える。ホッと安心したマリオンの耳に、驚きの言葉が聞こえて来た。
「ならば、その案内役はこのマリオンにお願い出来ませんか?」
「へっ…?」
(な、何で…?)
呆然とアレックスを見ると、美しい笑顔が返って来た。その笑顔に、マリオンは顔から血の気が引いて行くのがわかった。
(こ、怖い………)
子供達は、そのアレックスの美しい笑顔に見惚れている。本来なら、マリオンも同じ立場に居ただろう。ーーしかし、先程アレックスに呪いの話を聞かれてしまった。その為、その美しい笑顔が『逃がさないぞ』と言っている様に見えるのだ。いや、見えるのでは無くそう言っているのだ。
「ですが、マリオンは仕事探しをしている最中でして……」
ガスが、そう言って困った様にちらりとマリオンを見る。
(院長先生!もっと、言って下さい!!)
「そ、そうです!オレ…、私は職探しの最中で今日も探しに行く予定でして……!」
「なら、今日一日君を案内役として雇おう」
「えっ…」
「それなら、問題ないだろう?今日、直ぐに仕事が見つかるとは限らない。それなら、給料が発生する案内役の方が君にとって良い話の筈だ。ーー勿論、君の職探しを一日潰す事になるんだ。金額は多めにする」
「いや、でも…」
「そうだ。最初は、街の中を案内して貰いたい。その後は、君のお勧めの場所を。あぁ、途中で何か食べるのも良いな」
マリオンに口を挟む暇も与えず、アレックスは話し続け予定を立てて行く。
「それなら、この時間帯は広場の屋台の串肉がオススメですよ。食べ歩きに向いていますし、その串肉はとても美味しいんですよ」
(院長先生ーー!!)
いつの間にか、マリオンが案内役をする事がガスの中で決まっているらしい。アレックスに、オススメの屋台料理を紹介している。
「食べ歩き出来るのは嬉しいですね。他には何かオススメはありますか?」
「勿論です。マリオン、広場に行ったらオススメの料理をレックス様に教えて差し上げて下さい」
「えっ…と、」
「頼みましたよ。私達は、頂いた食材で夕飯の準備をしますから」
「えっ!?それはーー!」
それは、マリオンの仕事だった筈だ。用意される食材を、マリオンがどれ程心待ちにしていたのかガスは知っている筈なのに。
(どうしてーー)
縋る様にガスを見つめるマリオンに、彼は優しく声をかける。
「マリオン、これは運命です」
その言葉に、マリオンは表情を引き締めた。そうして、ジッとガスを見つめる。暫くニコニコと微笑むガスを見つめてから、マリオンは溜息を吐く。
「………わかりました。案内役を引き受けます」
「美味しい夕食を準備しておきますね」
あんなに渋っていたのに引き受ける気になったマリオンをアレックスは不思議そうに見つめてくる。その視線を感じながら、心の中でもう一度溜息を吐いたのだった。
「おや、レックス様にマリオン。二人は一緒に居たんですね」
アレックスと共にやって来たマリオン達を見て、ガスは穏やかに笑いながら声をかけてくる。
「えぇ。先程、裏手の所で偶然会いまして。ガス殿、今回の滞在期間中に案内役を付けると言っていましたよね?」
「はい、そう言いました」
ガスの返答に、アレックスは笑顔を浮かべてマリオンを自身の側に軽く引っ張る。
「うわっ…!」
軽くとは言え、いきなり腕を引っ張られたマリオン。軽くバランスを崩し驚きの声が出るが、何とか体勢を整える。ホッと安心したマリオンの耳に、驚きの言葉が聞こえて来た。
「ならば、その案内役はこのマリオンにお願い出来ませんか?」
「へっ…?」
(な、何で…?)
呆然とアレックスを見ると、美しい笑顔が返って来た。その笑顔に、マリオンは顔から血の気が引いて行くのがわかった。
(こ、怖い………)
子供達は、そのアレックスの美しい笑顔に見惚れている。本来なら、マリオンも同じ立場に居ただろう。ーーしかし、先程アレックスに呪いの話を聞かれてしまった。その為、その美しい笑顔が『逃がさないぞ』と言っている様に見えるのだ。いや、見えるのでは無くそう言っているのだ。
「ですが、マリオンは仕事探しをしている最中でして……」
ガスが、そう言って困った様にちらりとマリオンを見る。
(院長先生!もっと、言って下さい!!)
「そ、そうです!オレ…、私は職探しの最中で今日も探しに行く予定でして……!」
「なら、今日一日君を案内役として雇おう」
「えっ…」
「それなら、問題ないだろう?今日、直ぐに仕事が見つかるとは限らない。それなら、給料が発生する案内役の方が君にとって良い話の筈だ。ーー勿論、君の職探しを一日潰す事になるんだ。金額は多めにする」
「いや、でも…」
「そうだ。最初は、街の中を案内して貰いたい。その後は、君のお勧めの場所を。あぁ、途中で何か食べるのも良いな」
マリオンに口を挟む暇も与えず、アレックスは話し続け予定を立てて行く。
「それなら、この時間帯は広場の屋台の串肉がオススメですよ。食べ歩きに向いていますし、その串肉はとても美味しいんですよ」
(院長先生ーー!!)
いつの間にか、マリオンが案内役をする事がガスの中で決まっているらしい。アレックスに、オススメの屋台料理を紹介している。
「食べ歩き出来るのは嬉しいですね。他には何かオススメはありますか?」
「勿論です。マリオン、広場に行ったらオススメの料理をレックス様に教えて差し上げて下さい」
「えっ…と、」
「頼みましたよ。私達は、頂いた食材で夕飯の準備をしますから」
「えっ!?それはーー!」
それは、マリオンの仕事だった筈だ。用意される食材を、マリオンがどれ程心待ちにしていたのかガスは知っている筈なのに。
(どうしてーー)
縋る様にガスを見つめるマリオンに、彼は優しく声をかける。
「マリオン、これは運命です」
その言葉に、マリオンは表情を引き締めた。そうして、ジッとガスを見つめる。暫くニコニコと微笑むガスを見つめてから、マリオンは溜息を吐く。
「………わかりました。案内役を引き受けます」
「美味しい夕食を準備しておきますね」
あんなに渋っていたのに引き受ける気になったマリオンをアレックスは不思議そうに見つめてくる。その視線を感じながら、心の中でもう一度溜息を吐いたのだった。
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