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No.28 ???
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莉緒達が別れた頃、ルケドナ王国の誇るルケドナ城のとある一室。深紅の上質なソファーに一人の人物が優雅に腰掛けていた。
肩下まである金の髪を、自身の瞳と同じ緑の紐で一つに纏めた20代前半ほどの美しい青年だった。
彼の名は、ルアン・ディナス・ルケドナ。
ルケドナ王国現国王アルベルト・ディナス・ルケドナの一人息子である。
ルアンが一人優雅にワインを飲んでいると、部屋の扉がノックされる。ルアンが扉の側に控える使用人に目配せすると、使用人は静かに扉を開ける。それと同時に、部屋に一人の騎士が一礼して入って来る。それと同時に、使用人は部屋を出る。
パタンと扉の閉まる音と共に、騎士はルアンの前に立つ。
「ルアン様、ただいま戻りました」
サラリと、彼の艶のある黒髪が揺れる。
「やぁ、お帰りガル」
ルアンは、自身の忠実な騎士であるガルを美しい笑みを向けて出迎える。
「それで?どうだった?」
「はい、確かに独立組織ナイトレイドのリーダーであるアルス・バーナードが行方不明でした」
その言葉に、ルアンは口角を上げる。
「どうも最近、ナイトレイドが騒ついてると思ってたけど…まさか、アルス・バーナードが行方不明だとはね」
「ルアン様の予想が当たりましたね」
「あの揺るが無いナイトレイドが騒ついてると下から報告があった時は、驚いたな。あの組織は、アルス・バーナードを崇拝する信者達の集まりと言っても過言では無い。そんな彼等が揺らぐなんて、彼等の神アルス・バーナードに何かあったとしか考えられないからね」
そう言って、一口ワインを飲む。
「………それで、彼の居場所は分かったかい?」
「いえ、未だ捜索中です。組織の者達の誰一人、彼の行方は把握できてい無い様です」
「そっか~。まぁ、簡単に見つかると思って無いけどね」
そう言ってルアンはソファーから立ち上がると、背後にある大きな窓辺に立った。
「不思議だよね。自分の思い通りに動く周囲や環境を捨てて、行方をくらませるなんて。………何か理由があるね」
その言葉に、ガルは小さく頷く。
「私もそうだと思います」
「引き続き、捜索を頼むよ。もしも、彼を私の部下として引き込む事が出来れば、大変便利だろうね。表の君と裏の彼。………うん、とても良いね」
「ルアン様、あまり楽しみ過ぎると…」
「いいじゃないか。最近、楽しい事があまり無くてつまら無いんだ。あ~あ、何処かに私を楽しませてくれる存在いないかな」
そう言って、眼下に映る王都を見下ろす。
窓に映る愉しそうな己の主人を見て、ガルは小さく溜息をついたのだった。
肩下まである金の髪を、自身の瞳と同じ緑の紐で一つに纏めた20代前半ほどの美しい青年だった。
彼の名は、ルアン・ディナス・ルケドナ。
ルケドナ王国現国王アルベルト・ディナス・ルケドナの一人息子である。
ルアンが一人優雅にワインを飲んでいると、部屋の扉がノックされる。ルアンが扉の側に控える使用人に目配せすると、使用人は静かに扉を開ける。それと同時に、部屋に一人の騎士が一礼して入って来る。それと同時に、使用人は部屋を出る。
パタンと扉の閉まる音と共に、騎士はルアンの前に立つ。
「ルアン様、ただいま戻りました」
サラリと、彼の艶のある黒髪が揺れる。
「やぁ、お帰りガル」
ルアンは、自身の忠実な騎士であるガルを美しい笑みを向けて出迎える。
「それで?どうだった?」
「はい、確かに独立組織ナイトレイドのリーダーであるアルス・バーナードが行方不明でした」
その言葉に、ルアンは口角を上げる。
「どうも最近、ナイトレイドが騒ついてると思ってたけど…まさか、アルス・バーナードが行方不明だとはね」
「ルアン様の予想が当たりましたね」
「あの揺るが無いナイトレイドが騒ついてると下から報告があった時は、驚いたな。あの組織は、アルス・バーナードを崇拝する信者達の集まりと言っても過言では無い。そんな彼等が揺らぐなんて、彼等の神アルス・バーナードに何かあったとしか考えられないからね」
そう言って、一口ワインを飲む。
「………それで、彼の居場所は分かったかい?」
「いえ、未だ捜索中です。組織の者達の誰一人、彼の行方は把握できてい無い様です」
「そっか~。まぁ、簡単に見つかると思って無いけどね」
そう言ってルアンはソファーから立ち上がると、背後にある大きな窓辺に立った。
「不思議だよね。自分の思い通りに動く周囲や環境を捨てて、行方をくらませるなんて。………何か理由があるね」
その言葉に、ガルは小さく頷く。
「私もそうだと思います」
「引き続き、捜索を頼むよ。もしも、彼を私の部下として引き込む事が出来れば、大変便利だろうね。表の君と裏の彼。………うん、とても良いね」
「ルアン様、あまり楽しみ過ぎると…」
「いいじゃないか。最近、楽しい事があまり無くてつまら無いんだ。あ~あ、何処かに私を楽しませてくれる存在いないかな」
そう言って、眼下に映る王都を見下ろす。
窓に映る愉しそうな己の主人を見て、ガルは小さく溜息をついたのだった。
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