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No.7 美味しいシチューと不審者
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家に帰った後、莉緒はミラと共にダンテに貰った肉を使い野菜たっぷりのシチューを作った。
「本当に莉緒は手際が良いね。初めて会った時は、見た事がないけど質の良い服を着てたから、どっかの良い所のお嬢様だと思ってたんだけどね~。でも、包丁の扱いには慣れてる。本当に不思議だね」
「は、はは…」
こちらに来る前は、自炊していたのだから手慣れていて当然だ。だが、記憶喪失という風に説明している手前、何も言えない。
「もしかしたら、記憶を失う前は料理をしてたのかも」
「そうだよ!だって、リオは凄く料理上手だもん!」
カールとカーラの言葉に、ミラは頷く。
「まぁ、稀に息抜きで料理をするお嬢様もいるって聞くしね。しかし、記憶をなくしても身体が覚えてるもんなんだねぇ」
感心した様に莉緒を見るミラの視線から逃れる様に、ひたすらシチューを口に流し込む。
「………お代わり」
今まで無言で食べていたジェフは、静かにミラに空の皿を渡す。これで3回目のお代わりだ。どうやら、ジェフもかなりシチューが気に入った様だ。
「あっ!お父さん、またお代わりしてる!私の分も取っといてよね!」
「オレのも」
「お代わりならまだあるから、そんな慌てて食べるんじゃないよ!……全く、少しはリオを見習って欲しいね。リオは、お代わりするかい?」
「えっと、お願いします…」
ミラの言葉に、おずおずと莉緒は空になった皿を差し出すのだった。
******
「不審者?」
食事が終わりのんびりしていた所に、ジェフが今日警備隊で話題になった事を話した。ミラのいかぶしげな声に、ジェフはコクリと頷く。
「………数週間ほど前から、隣町に怪しい男が目撃されてるらしい」
ジェフの話によると、此処から歩いて半日ほどの場所にあるトランという町に数週間前から不審な人物が現れるらしい。ローブを深く被った男は、トランにやって来る前は他の町に居たらしく、数週間は町に留まっていたそうだ。
「唯の旅人じゃ無いのかい?」
「それが誰かを探しているらしい」
「そうなのかい?どんな人を探してるんだい?」
「それが、どんな人物を探しているか誰にも言わないんだ」
(確かに、それは怪しい人物だなぁ)
ジェフの話を聞きながら、莉緒はそう思った。
人を探しているのに、誰にもどんな人物かを教えない。特徴を言えば、その探している人を知っている人が見つかるかもしれないのに。全く意味が分からない。
「変な人がいるもんだね~」
「もしかしたら、その男は盗賊で人探しと言って町の下見をしているとも限らない」
「だから不審者かい、なるほどね。もしかしたら、この町にも来るかも知れないね…」
ミラの言葉に、ジェフはコクンと頷く。
「アンタ達、話は聞いたね?変な人を見かけたら、騒がす近づくんじゃ無いよ」
「はーい!」
「分かった」
「は、はいっ!」
(近くの町に不審者がいるなんて…)
しかも、盗賊かもしれない人物だ。
どうかこの町にやって来ませんようにと、莉緒は強く願うのだった。
「本当に莉緒は手際が良いね。初めて会った時は、見た事がないけど質の良い服を着てたから、どっかの良い所のお嬢様だと思ってたんだけどね~。でも、包丁の扱いには慣れてる。本当に不思議だね」
「は、はは…」
こちらに来る前は、自炊していたのだから手慣れていて当然だ。だが、記憶喪失という風に説明している手前、何も言えない。
「もしかしたら、記憶を失う前は料理をしてたのかも」
「そうだよ!だって、リオは凄く料理上手だもん!」
カールとカーラの言葉に、ミラは頷く。
「まぁ、稀に息抜きで料理をするお嬢様もいるって聞くしね。しかし、記憶をなくしても身体が覚えてるもんなんだねぇ」
感心した様に莉緒を見るミラの視線から逃れる様に、ひたすらシチューを口に流し込む。
「………お代わり」
今まで無言で食べていたジェフは、静かにミラに空の皿を渡す。これで3回目のお代わりだ。どうやら、ジェフもかなりシチューが気に入った様だ。
「あっ!お父さん、またお代わりしてる!私の分も取っといてよね!」
「オレのも」
「お代わりならまだあるから、そんな慌てて食べるんじゃないよ!……全く、少しはリオを見習って欲しいね。リオは、お代わりするかい?」
「えっと、お願いします…」
ミラの言葉に、おずおずと莉緒は空になった皿を差し出すのだった。
******
「不審者?」
食事が終わりのんびりしていた所に、ジェフが今日警備隊で話題になった事を話した。ミラのいかぶしげな声に、ジェフはコクリと頷く。
「………数週間ほど前から、隣町に怪しい男が目撃されてるらしい」
ジェフの話によると、此処から歩いて半日ほどの場所にあるトランという町に数週間前から不審な人物が現れるらしい。ローブを深く被った男は、トランにやって来る前は他の町に居たらしく、数週間は町に留まっていたそうだ。
「唯の旅人じゃ無いのかい?」
「それが誰かを探しているらしい」
「そうなのかい?どんな人を探してるんだい?」
「それが、どんな人物を探しているか誰にも言わないんだ」
(確かに、それは怪しい人物だなぁ)
ジェフの話を聞きながら、莉緒はそう思った。
人を探しているのに、誰にもどんな人物かを教えない。特徴を言えば、その探している人を知っている人が見つかるかもしれないのに。全く意味が分からない。
「変な人がいるもんだね~」
「もしかしたら、その男は盗賊で人探しと言って町の下見をしているとも限らない」
「だから不審者かい、なるほどね。もしかしたら、この町にも来るかも知れないね…」
ミラの言葉に、ジェフはコクンと頷く。
「アンタ達、話は聞いたね?変な人を見かけたら、騒がす近づくんじゃ無いよ」
「はーい!」
「分かった」
「は、はいっ!」
(近くの町に不審者がいるなんて…)
しかも、盗賊かもしれない人物だ。
どうかこの町にやって来ませんようにと、莉緒は強く願うのだった。
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