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No.5 働いてます
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「カーラ!皿を洗う時は、余り水を無駄遣いするんじゃ無いよ!カール!向こうの床、汚れてるから掃除頼んだよ!」
「うんっ!」
「分かった」
「リオ!悪いけど、そっちが片付いたらこっちも頼むね!」
「は、はいっ!」
忙しさに目が回る莉緒に、ミラからの指示が飛ぶ。返事をした莉緒は、急いで空いた席の皿などを片付ける。
現在、莉緒はミラの職場でもある宿屋「ダンテ」でカーラとカールと共に働いていた。ミラ達に保護された日から既に1ヶ月が経った。その間に、莉緒は一緒に住むミラにこの世界の事を教わっていた。
この世界は、一つの大陸で出来ている。
そこに四つの大国とそれを囲む様に数多くの小国が存在する。現在、莉緒の住む町の名はドナ。大国の一つであるルケドナの王都から馬車で2日ほどの位置にある、それなりに大きな町だった。
運のいい事に、会話は勿論の事、読み書きも日本と同様難なく出来る事が判明した。莉緒は、それでミラに頼んだのだ。
『ミ、ミラさん』
『ん?何だい?』
『わ、私…よ、読み書きが出来ますっ!』
『へぇ~!すごいじゃ無いか!』
『だ、だから、わ、私にも何か出来るし、仕事…ありませんか…?』
何も覚えていない子供を放り出す事なんて出来ないと言ってくれたミラのお陰で、莉緒は何も知らない場所で放り出されずに済んだ。見た目は若返って子供でも、中身は成人した大人である。優しくしてくれたミラ達に、少しでも恩返しがしたくて莉緒は子供でも出来る仕事を探していた。
『じゃあ、アタシの働いている所なんてどうだい?最近、手伝いの子が結婚して辞めちまったばっかりでね。丁度、人手が欲しかったのさ』
その言葉に飛び付いて、現在莉緒は宿屋「ダンテ」で働く事になったのだ。……まぁ、莉緒が働くと言ったら自分も働くと言い出した双子も一緒に働く事になったのだが。
「おっ!リオちゃん、今日も相変わらずビビってるな!」
「ま~だ慣れねぇか」
「転ぶなよ~」
オドオドしながら客の間を通り抜けて、空いた席の皿などを片付ける。その莉緒に向かって、宿屋の食事を食べに来た常連客から声が掛かる。
「しっかし、よくあの内気な性格でこんな人と関わる仕事が出来たよなぁ~」
(私も、そう思います)
一人の男性客の何気無く溢れた言葉に、莉緒は深く頷いた。
初め、ミラの職場が宿屋だと知った時。
莉緒は、一瞬「無理」だと思った。
だが、ミラ達の好意でお世話になっている身。そして、自分から仕事を紹介して欲しいとお願いしておいて、何も覚えていない莉緒を自身のよく知る安全な自身の職場を紹介してくれたミラに、人見知りをする性格だから出来ませんなんて言えなかった。
『ミラさんの好意を絶対に無駄にしちゃ駄目だ』
そう強く思った莉緒は、「是非、働かせて下さい」とお願いして現在に至る。結果はーー。
「リオちゃん、そんなに慌てると転んじまうぞ~」
「すすす、すみませんっ!」
「リオちゃ~ん!酒のお代わり頼むぜ」
「た、た、たたた…」
「たたた?」
「た、ただひみゃ!」
ご覧の通り。
人見知りは全然直っていないが、それでも今日もリオは最後まで仕事をやり切るのだった。
「うんっ!」
「分かった」
「リオ!悪いけど、そっちが片付いたらこっちも頼むね!」
「は、はいっ!」
忙しさに目が回る莉緒に、ミラからの指示が飛ぶ。返事をした莉緒は、急いで空いた席の皿などを片付ける。
現在、莉緒はミラの職場でもある宿屋「ダンテ」でカーラとカールと共に働いていた。ミラ達に保護された日から既に1ヶ月が経った。その間に、莉緒は一緒に住むミラにこの世界の事を教わっていた。
この世界は、一つの大陸で出来ている。
そこに四つの大国とそれを囲む様に数多くの小国が存在する。現在、莉緒の住む町の名はドナ。大国の一つであるルケドナの王都から馬車で2日ほどの位置にある、それなりに大きな町だった。
運のいい事に、会話は勿論の事、読み書きも日本と同様難なく出来る事が判明した。莉緒は、それでミラに頼んだのだ。
『ミ、ミラさん』
『ん?何だい?』
『わ、私…よ、読み書きが出来ますっ!』
『へぇ~!すごいじゃ無いか!』
『だ、だから、わ、私にも何か出来るし、仕事…ありませんか…?』
何も覚えていない子供を放り出す事なんて出来ないと言ってくれたミラのお陰で、莉緒は何も知らない場所で放り出されずに済んだ。見た目は若返って子供でも、中身は成人した大人である。優しくしてくれたミラ達に、少しでも恩返しがしたくて莉緒は子供でも出来る仕事を探していた。
『じゃあ、アタシの働いている所なんてどうだい?最近、手伝いの子が結婚して辞めちまったばっかりでね。丁度、人手が欲しかったのさ』
その言葉に飛び付いて、現在莉緒は宿屋「ダンテ」で働く事になったのだ。……まぁ、莉緒が働くと言ったら自分も働くと言い出した双子も一緒に働く事になったのだが。
「おっ!リオちゃん、今日も相変わらずビビってるな!」
「ま~だ慣れねぇか」
「転ぶなよ~」
オドオドしながら客の間を通り抜けて、空いた席の皿などを片付ける。その莉緒に向かって、宿屋の食事を食べに来た常連客から声が掛かる。
「しっかし、よくあの内気な性格でこんな人と関わる仕事が出来たよなぁ~」
(私も、そう思います)
一人の男性客の何気無く溢れた言葉に、莉緒は深く頷いた。
初め、ミラの職場が宿屋だと知った時。
莉緒は、一瞬「無理」だと思った。
だが、ミラ達の好意でお世話になっている身。そして、自分から仕事を紹介して欲しいとお願いしておいて、何も覚えていない莉緒を自身のよく知る安全な自身の職場を紹介してくれたミラに、人見知りをする性格だから出来ませんなんて言えなかった。
『ミラさんの好意を絶対に無駄にしちゃ駄目だ』
そう強く思った莉緒は、「是非、働かせて下さい」とお願いして現在に至る。結果はーー。
「リオちゃん、そんなに慌てると転んじまうぞ~」
「すすす、すみませんっ!」
「リオちゃ~ん!酒のお代わり頼むぜ」
「た、た、たたた…」
「たたた?」
「た、ただひみゃ!」
ご覧の通り。
人見知りは全然直っていないが、それでも今日もリオは最後まで仕事をやり切るのだった。
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