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王都編

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アリアが心の中で強くそう思った時、扉を叩く音がした。

「失礼致します。グフィム殿下がいらっしゃいました」

エルガさんの声と共に扉が開き、グフィム殿下とエルガさんが入って来た。

「やあやあ、ようこそ我が家へ」

赤い髪を優雅にかきあげながら、こちらに歩いてくるグフィム殿下。ソファーから立ち上がり、グフィム殿下に挨拶する。

「本日は、お招き頂きありがとうございます」
「こちらこそ、来てくれてとても嬉しいよ」

私の手を取り、指先に軽く口付ける。

「師匠に触るな」

パシリと殿下の手を叩くカイル。
そうして、アリアのキスされた手を無言で拭う。

(王太子殿下になんて態度を。しかもちょっと痛い…)

「おや?何だい、嫉妬してるのかい?大丈夫!俺の1番はカイル、お前だけだよ」
「キモい」

殿下の危ない発言に、カイルは嫌悪の表情を浮かべる。

「そんなこと言うなよ。俺とお前の仲だろ?」

やれやれと肩をすくめる殿下。

「……お前には付き合ってられない。師匠、帰りましょう」

カイルはメイドさんに箱を用意して貰い、残っていたクッキーを詰め込んでいく。

「来たばかりじゃないか。料理長が腕を振るって料理を準備してるのに食べていかないのか?」

その言葉に、アリアはピクッと反応する。

(王宮の料理長が腕を振るった料理…)

「…カイル、私は帰らないよ」
「師匠っ!」
「招いて貰って直ぐ帰るなんて、とても失礼でしょ?」
「しかしっ…!」
「それにね」

不満そうなカイルに近付き、耳元で囁く。

「これは訓練の一環だよ」
「訓練の?」
「そう。どんな状況でも冷静でいる訓練。カイルの苦手な殿下と居ても冷静でいられないなら、魔王討伐なんて夢のまた夢だよ」

ハッとしたカイルを見て、もう一押し。

「もし帰るまでに冷静でいられたら、私のとっておきの技を1つ教えてあげる」
「………約束ですよ?」

勿論と、私は頷いた。

(料理長の料理が食べれるなら、喜んで幾らでも教えるよ!)
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