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出会い編

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それは、ある日突然だった。

「ん?」

突然、窓の外を見るアリア。
そんな彼女に、カイルが尋ねる。

「師匠?どうしました?」

カイルの作った朝食を食べていると、此方に向かってくる何かの反応を感じたのだ。

「なんか来る」
「魔獣か魔物ですか?」
「ううん。この気配は人だけど…」

帰らずの森の奥にあるこの家に来る人物など、今まで一度も居なかった(カイルは別である)。ここに来る事自体、かなりの強者で無くては不可能なのだ。

(一体、何の用で?)

ーートントン。

家のドアが叩かれる。
カイルは、すかさず右手に剣を召喚し攻撃態勢に入る。

(……まずは、そのエプロンと左手のフライパンを如何にかしなよ)

その反応速度は素晴らしいが、ビジュアル的にはダメダメだ。そんなカイルを横目に、アリアは訪問者を招き入れる。

「どうぞ~」
「失礼します」

優しげな声と共に、1人の男性が入って来た。

(やっぱり知らない人だ)

若葉の様な緑の長い髪を1つにまとめ肩から垂らした20代後半位の背の高い男性だった。

「ニースさん」
「やっと見つけましたよ…カイル」
「カイル、知り合い?」

驚いた表情のカイル。
どうやら、彼は彼を知っている様だ。

「はい。彼はオルフェイア王国騎士団団長の…」
「初めまして。オルフェイア騎士団団長、ニコリアス・ファイドランと言います」

胸に手を当てお辞儀をする彼は優雅で、とても騎士団団長には見えない。

「私は、アリア・ダングスマンです。それで?騎士団長様が一体何の用でこんな辺境の家へ?」
「実は…」

彼の話はこうだ。
オルフェイア王国唯一の勇者候補であるカイル。
そんな彼がある日突然、『もっと強くなる為に修行して来ます』と言ったきり行方不明になった。数日後、メイドがカイルの部屋を掃除しに来ると身の回りの荷物が無くなり、机には一枚の書き置きが残されていた。

『俺は、帰らずの森で運命の師匠に出会いました。師匠の元で更に強くなるべくお世話になります』

これを見た国王が正確に状況を確認するべく、ニコリアス率いる少数の騎士団を帰らずの森に派遣したのだ。

「カイル……ちゃんと言ってこなかったの?」
「一応、書き置きを置いて来たのですが」
「それだけじゃ駄目でしょ」

まさか、書き置きだけを残してここに住んでいたとは。

(そりゃあ、捜索されるよ)

「…あれ?そういえば、他の騎士団の人は?」
「彼等は途中でリタイアしました。やはり、この森で生きているだけであって強いですね。魔獣や魔物の強さが桁違いでした」

その強い魔獣や魔物の居るこの森を、無傷でここまで彼は来た。

(騎士団団長は伊達じゃないか)

「それではカイル。詳しい説明をお願いします」

黒い笑顔を浮かべたニコリアスがカイルに迫る。


***


「…成る程、状況は把握しました。アリアさん」

姿勢を正し私に向き合うと頭を下げる。

「我が国の勇者を助けて頂き有難うございます。この場に居ない陛下の代わりに、心より御礼申し上げます」
「そんな大したことしてないです。だから頭をあげて下さい」
「ありがとうございます」

その黄色い目を優しく細め、彼は穏やかな笑みを浮かべた。



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