9 / 46
出会い編
8
しおりを挟む
「適当に」と言ったのに、全力で突っ込んでくるカイル。私の正面まで来たと思ったら、そのまま真上に飛んで左手をかざす。
「"来れ、全てを滅する灼熱の炎よ"」
その呪文と共に魔法陣が展開される。
そして、魔法陣から燃え盛る炎が現れ私を包み込む。
「へ~。中々…」
アリアは、瞬時に周りに展開した魔法壁で炎を防ぐ。視界は炎で塞がれ、カイルの姿が見えなくなる。確かに今の広範囲の攻撃は、相手に傷を負わせる事や、防がれた場合に敵の視界を遮って自身の身を隠す事も出来る戦闘ではかなり有効な手段だと言えるだろう。
「……でもね」
そう呟いて、アリアは右手を自身の背後に向ける。
「殺気が全然隠せて無いよ」
瞬時に展開した魔法陣から風の刃が現れ、炎の壁を切り裂く。その勢いのまま、炎の壁の向こうに居たカイルを襲う。
「っ!?」
カイルは慌てて風の刃を剣で受け止める。
だが、勢いを殺し切れずに五メートルほど吹き飛ばされた。
「攻撃を防がれた後に、視界が遮られてるのを利用した奇襲攻撃は凄く良かったと思うよ。……でも、いくら姿が見えなくても殺気を隠せないんじゃ意味が無いね」
(それにしても……)
少し引っかかる事があったが、カイルの声に気が散る。
「師匠は…どうやって殺気を消しているんですか?」
「私?……う~ん。なんて言えばいいのかなぁ。まぁ、心を常に穏やかに保つ…かな」
「心を常に穏やかに…」
「そう。戦いの時は常に心を穏やかに保つの。そうして感情で見えなくなるモノを冷静に捉える。心を一定に保ってれば殺気なんかも自然と消えるよ」
「成る程…。勉強になります!」
カイルは構えていた剣を下ろし、深く息を吐くとゆっくりと目を閉じた。そうして暫く自然体で深呼吸をしていると、殺気が徐々に消えていく。
(教えて直ぐに出来るようになるなんて…。流石は、勇者候補。素質があるな)
そして完全に殺気が消えると、カイルは目を開け剣を再び構える。その姿は、先程とはまるで別人だ。
「師匠、もう一度行きます」
「どんと来い」
剣に炎の魔法を付加する。
そして、今までで1番のスピードでアリアに近付くと剣で斬りつけて来る。剣とぶつかった魔法壁の部分が、灼熱の炎でゆっくりと焼かれていく。
「…っ!ハァ!」
さらに剣に力を込めたカイルを見る。
「流石は勇者。…だけど」
目の前のカイルの額に手を近付ける。
「まだ周りが見えてない」
「ぐぁっ!!」
その言葉と共に、形のいい額に身体強化の魔法をかけた手でデコピンをする。すると勢い良く後方へ吹き飛ぶカイル。
「……ちょ、ちょっと強過ぎたかなぁ?」
吹き飛んだカイルはピクリとも動かない。急いで近付き様子を伺うと、カイルは完全に気絶していた。
「………良かった、殺して無かった」
ホッとしながら気絶したカイルを家に運ぶ。
(この分だと、暫くは目を覚まさないよね?)
その予想は当たり、カイルが目を覚ましたのは翌朝の事だった。
「"来れ、全てを滅する灼熱の炎よ"」
その呪文と共に魔法陣が展開される。
そして、魔法陣から燃え盛る炎が現れ私を包み込む。
「へ~。中々…」
アリアは、瞬時に周りに展開した魔法壁で炎を防ぐ。視界は炎で塞がれ、カイルの姿が見えなくなる。確かに今の広範囲の攻撃は、相手に傷を負わせる事や、防がれた場合に敵の視界を遮って自身の身を隠す事も出来る戦闘ではかなり有効な手段だと言えるだろう。
「……でもね」
そう呟いて、アリアは右手を自身の背後に向ける。
「殺気が全然隠せて無いよ」
瞬時に展開した魔法陣から風の刃が現れ、炎の壁を切り裂く。その勢いのまま、炎の壁の向こうに居たカイルを襲う。
「っ!?」
カイルは慌てて風の刃を剣で受け止める。
だが、勢いを殺し切れずに五メートルほど吹き飛ばされた。
「攻撃を防がれた後に、視界が遮られてるのを利用した奇襲攻撃は凄く良かったと思うよ。……でも、いくら姿が見えなくても殺気を隠せないんじゃ意味が無いね」
(それにしても……)
少し引っかかる事があったが、カイルの声に気が散る。
「師匠は…どうやって殺気を消しているんですか?」
「私?……う~ん。なんて言えばいいのかなぁ。まぁ、心を常に穏やかに保つ…かな」
「心を常に穏やかに…」
「そう。戦いの時は常に心を穏やかに保つの。そうして感情で見えなくなるモノを冷静に捉える。心を一定に保ってれば殺気なんかも自然と消えるよ」
「成る程…。勉強になります!」
カイルは構えていた剣を下ろし、深く息を吐くとゆっくりと目を閉じた。そうして暫く自然体で深呼吸をしていると、殺気が徐々に消えていく。
(教えて直ぐに出来るようになるなんて…。流石は、勇者候補。素質があるな)
そして完全に殺気が消えると、カイルは目を開け剣を再び構える。その姿は、先程とはまるで別人だ。
「師匠、もう一度行きます」
「どんと来い」
剣に炎の魔法を付加する。
そして、今までで1番のスピードでアリアに近付くと剣で斬りつけて来る。剣とぶつかった魔法壁の部分が、灼熱の炎でゆっくりと焼かれていく。
「…っ!ハァ!」
さらに剣に力を込めたカイルを見る。
「流石は勇者。…だけど」
目の前のカイルの額に手を近付ける。
「まだ周りが見えてない」
「ぐぁっ!!」
その言葉と共に、形のいい額に身体強化の魔法をかけた手でデコピンをする。すると勢い良く後方へ吹き飛ぶカイル。
「……ちょ、ちょっと強過ぎたかなぁ?」
吹き飛んだカイルはピクリとも動かない。急いで近付き様子を伺うと、カイルは完全に気絶していた。
「………良かった、殺して無かった」
ホッとしながら気絶したカイルを家に運ぶ。
(この分だと、暫くは目を覚まさないよね?)
その予想は当たり、カイルが目を覚ましたのは翌朝の事だった。
0
お気に入りに追加
222
あなたにおすすめの小説
【完結】もうやめましょう。あなたが愛しているのはその人です
堀 和三盆
恋愛
「それじゃあ、ちょっと番に会いに行ってくるから。ええと帰りは……7日後、かな…」
申し訳なさそうに眉を下げながら。
でも、どこかいそいそと浮足立った様子でそう言ってくる夫に対し、
「行ってらっしゃい、気を付けて。番さんによろしくね!」
別にどうってことがないような顔をして。そんな夫を元気に送り出すアナリーズ。
獣人であるアナリーズの夫――ジョイが魂の伴侶とも言える番に出会ってしまった以上、この先もアナリーズと夫婦関係を続けるためには、彼がある程度の時間を番の女性と共に過ごす必要があるのだ。
『別に性的な接触は必要ないし、獣人としての本能を抑えるために、番と二人で一定時間楽しく過ごすだけ』
『だから浮気とは違うし、この先も夫婦としてやっていくためにはどうしても必要なこと』
――そんな説明を受けてからもうずいぶんと経つ。
だから夫のジョイは一カ月に一度、仕事ついでに番の女性と会うために出かけるのだ……妻であるアナリーズをこの家に残して。
夫であるジョイを愛しているから。
必ず自分の元へと帰ってきて欲しいから。
アナリーズはそれを受け入れて、今日も番の元へと向かう夫を送り出す。
顔には飛び切りの笑顔を張り付けて。
夫の背中を見送る度に、自分の内側がズタズタに引き裂かれていく痛みには気付かぬふりをして――――――。
ミルクティーな君へ。ひねくれ薄幸少女が幸せになるためには?
鐘ケ江 しのぶ
恋愛
アルファポリスさんではまった、恋愛モノ、すかっとしたざまあを拝読したのがきっかけです。
初めてこの分野に手を出しました。んん? と思うわれる箇所があるかと思いますが、温かくお見守りください。
とある特殊な事情を持つ者を保護している、コクーン修道院で暮らす12歳の伯爵令嬢ウィンティア。修道女や、同じ境遇の子供達に囲まれて、過去の悲惨な事件に巻き込まれた、保護されている女性達のお世話を積極的に行うウィンティアは『いい子』だった。
だが、ある日、生家に戻る指示が下される。
自分に虐待を繰り返し、肉体的に精神的にズタズタにした両親、使用人達、家庭教師達がまつそこに。コクーン修道院でやっと安心してすごしていたウィンティアの心は、その事情に耐えきれず、霧散してしまった。そして、ウィンティアの中に残ったのは………………
史実は関係ありません。ゆるっと設定です。ご理解ください。亀さんなみの更新予定です。
あなたのためなら
天海月
恋愛
エルランド国の王であるセルヴィスは、禁忌魔術を使って偽の番を騙った女レクシアと婚約したが、嘘は露見し婚約破棄後に彼女は処刑となった。
その後、セルヴィスの真の番だという侯爵令嬢アメリアが現れ、二人は婚姻を結んだ。
アメリアは心からセルヴィスを愛し、彼からの愛を求めた。
しかし、今のセルヴィスは彼女に愛を返すことが出来なくなっていた。
理由も分からないアメリアは、セルヴィスが愛してくれないのは自分の行いが悪いからに違いないと自らを責めはじめ、次第に歯車が狂っていく。
全ては偽の番に過度のショックを受けたセルヴィスが、衝動的に行ってしまった或ることが原因だった・・・。
愛してほしかった
こな
恋愛
「側室でもいいか」最愛の人にそう問われ、頷くしかなかった。
心はすり減り、期待を持つことを止めた。
──なのに、今更どういうおつもりですか?
※設定ふんわり
※何でも大丈夫な方向け
※合わない方は即ブラウザバックしてください
※指示、暴言を含むコメント、読後の苦情などはお控えください
【完結】薔薇の花をあなたに贈ります
彩華(あやはな)
恋愛
レティシアは階段から落ちた。
目を覚ますと、何かがおかしかった。それは婚約者である殿下を覚えていなかったのだ。
ロベルトは、レティシアとの婚約解消になり、聖女ミランダとの婚約することになる。
たが、それに違和感を抱くようになる。
ロベルト殿下視点がおもになります。
前作を多少引きずってはいますが、今回は暗くはないです!!
11話完結です。
愛しのあなたにさよならを
MOMO-tank
恋愛
憧れに留めておくべき人だった。
でも、愛してしまった。
結婚3年、理由あって夫であるローガンと別々に出席した夜会で彼と今話題の美しい舞台女優の逢瀬を目撃してしまう。二人の会話と熱い口づけを見て、私の中で何かがガタガタと崩れ落ちるのを感じた。
私達には、まだ子どもはいない。
私は、彼から離れる決意を固める。
皇帝は最愛の幼馴染に狂おしいほどの愛を捧ぐ
桜百合
恋愛
カサンドラ帝国では、第一皇子と第二皇子の派閥による跡目争いが勃発していた。第一皇子ルクスは、幼馴染であり初恋の相手でもあるエレノアと婚約していたのだが、エレノアの実家が第二皇子派へと寝返ってしまう。彼女との破局を余儀なくされ、ルクスは別の女性と婚約するが、エレノアへの思いを断ち切ることができない。やがて皇帝となったルクスは、エレノアの婚約の知らせを耳にした。失った存在の大きさに気付き焦りを強めたルクスは、エレノアを手に入れるための計画を立て始める。
※身を焦がすほどの執着愛が書きたくなり、執筆開始致しました。設定ゆるふわですが、ご了承くださいませ。
※直接的な言葉のRシーンはありませんが、ふわりとした表現はあるのでR-15です。ヒーローがヒロインに無理やり強いる場面があります(一度だけです)ので、気になる方はご注意ください。
※ムーンライト様でR-18版を掲載しております(完結済み)
【完結】今夜さよならをします
たろ
恋愛
愛していた。でも愛されることはなかった。
あなたが好きなのは、守るのはリーリエ様。
だったら婚約解消いたしましょう。
シエルに頬を叩かれた時、わたしの恋心は消えた。
よくある婚約解消の話です。
そして新しい恋を見つける話。
なんだけど……あなたには最後しっかりとざまあくらわせてやります!!
★すみません。
長編へと変更させていただきます。
書いているとつい面白くて……長くなってしまいました。
いつも読んでいただきありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる