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出会い編
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閉め切った部屋に朝日が差し込む。
その部屋の中は、少し大きめのベッドと小さなクローゼットしか無い殺風景な部屋だった。そんなベッドの上に、シーツを被った大きな塊があった。
その塊が、モゾモゾと億劫そうに動く。
「うぅ~ん。おきな…い……と」
そのベッドの中の住人は小さく呟くと、のそのそと顔を出す。そうして出て来たのは、一人の女性だった。夜を閉じ込めた様な艶のある肩甲骨辺りまでの長さの髪に、日に焼けていない白い肌。そして髪と同じ黒い瞳。20~22歳位の何処か幼さを感じさせる様なごく平凡な彼女。
名はアリア・ダングスマン。
帰らずの森の最深部に立つ小さな一軒家に住んでいる、一人の魔女である。
「あー、眠い。でも、今日は果物取りに行かなくちゃ…」
未だ重い瞼を擦りながらベッドから降り、クローゼットから黒い服を取り出す。着ていた白いワンピースを脱ぐと、のんびりと袖に腕を通す。そして、これまた黒いズボンを履き、黒い編み込みブーツをゆっくりと履く。身支度を終えた途端、ここ数日まともに食べていないお腹が、「キュ~」と自己主張する。
「………まず何か食べよう」
部屋を出て階段を降りキッチンに向かう。火打ち石で火を付けその上にフライパンを乗せる。温まったのを確認したら、ベーコンと卵を入れて暫く放置。その間に顔を洗い髪を梳かし上の方で一つに纏める。再びキッチンに戻り火の通ったベーコンと卵を薄くスライスしたパンに乗せて食べる。食べ終わり洗い物を済ませた頃には、完全に目が醒める。
「よし!今日は少し遠出した先で見つけた果物を取りに行こう」
家の周りは、深い森に囲まれた場所にある。此処に住む時に作った家の側の小さな畑には、色々な野菜が植えられている。丹精込めて育てている野菜達に満遍なく水をあげてから出発する。
***
「おっかしいな~。今日は動物が全然いないや」
普段は所々に鳥やウサギなどの動物がいるのだが、歩いて数十分経っても一向に姿を見ない。
「魔獣か魔物が近くに居るのかな?」
動物達は、魔獣や魔物の気配に敏感だ。
しかし、そうだとしたら可笑しい。魔獣や魔物は、アリアの縄張り付近には滅多にやって来ない。それは、本能で彼女に勝てないと分かっているのと、魔獣や魔物避けの魔法が展開されているからである。
「う~ん…」
ーードオォーン!!
その時、少し離れた場所から大きな音が聞こえて来た。それは一回だけでは無く、立て続けに何度も聞こえて来る。
「……誰か戦ってる?」
この森に、こんなに深い場所まで入って来る人など殆ど居ないのだが…。不思議に思いつつ、アリアはその場所に向かう。
そうして辿り着いたその場所には、一匹の2メートル程のクマの魔獣と1人の青年がいた。
(うわっ!滅多に見ないレベルのイケメンだ!)
日の光に反射し、キラキラと輝く金の髪に深い青の瞳のイケメンが、手に淡く光を纏う剣を持って目の前の魔獣に対峙していた。周りの木々がなぎ倒されているのを見ると、間違い無く此処が音の発生源だろう。
その部屋の中は、少し大きめのベッドと小さなクローゼットしか無い殺風景な部屋だった。そんなベッドの上に、シーツを被った大きな塊があった。
その塊が、モゾモゾと億劫そうに動く。
「うぅ~ん。おきな…い……と」
そのベッドの中の住人は小さく呟くと、のそのそと顔を出す。そうして出て来たのは、一人の女性だった。夜を閉じ込めた様な艶のある肩甲骨辺りまでの長さの髪に、日に焼けていない白い肌。そして髪と同じ黒い瞳。20~22歳位の何処か幼さを感じさせる様なごく平凡な彼女。
名はアリア・ダングスマン。
帰らずの森の最深部に立つ小さな一軒家に住んでいる、一人の魔女である。
「あー、眠い。でも、今日は果物取りに行かなくちゃ…」
未だ重い瞼を擦りながらベッドから降り、クローゼットから黒い服を取り出す。着ていた白いワンピースを脱ぐと、のんびりと袖に腕を通す。そして、これまた黒いズボンを履き、黒い編み込みブーツをゆっくりと履く。身支度を終えた途端、ここ数日まともに食べていないお腹が、「キュ~」と自己主張する。
「………まず何か食べよう」
部屋を出て階段を降りキッチンに向かう。火打ち石で火を付けその上にフライパンを乗せる。温まったのを確認したら、ベーコンと卵を入れて暫く放置。その間に顔を洗い髪を梳かし上の方で一つに纏める。再びキッチンに戻り火の通ったベーコンと卵を薄くスライスしたパンに乗せて食べる。食べ終わり洗い物を済ませた頃には、完全に目が醒める。
「よし!今日は少し遠出した先で見つけた果物を取りに行こう」
家の周りは、深い森に囲まれた場所にある。此処に住む時に作った家の側の小さな畑には、色々な野菜が植えられている。丹精込めて育てている野菜達に満遍なく水をあげてから出発する。
***
「おっかしいな~。今日は動物が全然いないや」
普段は所々に鳥やウサギなどの動物がいるのだが、歩いて数十分経っても一向に姿を見ない。
「魔獣か魔物が近くに居るのかな?」
動物達は、魔獣や魔物の気配に敏感だ。
しかし、そうだとしたら可笑しい。魔獣や魔物は、アリアの縄張り付近には滅多にやって来ない。それは、本能で彼女に勝てないと分かっているのと、魔獣や魔物避けの魔法が展開されているからである。
「う~ん…」
ーードオォーン!!
その時、少し離れた場所から大きな音が聞こえて来た。それは一回だけでは無く、立て続けに何度も聞こえて来る。
「……誰か戦ってる?」
この森に、こんなに深い場所まで入って来る人など殆ど居ないのだが…。不思議に思いつつ、アリアはその場所に向かう。
そうして辿り着いたその場所には、一匹の2メートル程のクマの魔獣と1人の青年がいた。
(うわっ!滅多に見ないレベルのイケメンだ!)
日の光に反射し、キラキラと輝く金の髪に深い青の瞳のイケメンが、手に淡く光を纏う剣を持って目の前の魔獣に対峙していた。周りの木々がなぎ倒されているのを見ると、間違い無く此処が音の発生源だろう。
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