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No.70 回想

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「一緒に仇を取りませんか?」

そう言って優しく差し伸べられ握り締めた手は、とても温かかった。

私が17歳になった頃、両親が死んだ。原因は薬物の取引現場に遭遇してしまった事だ。両親は、口封じの為に殺されてのだ。
両親が死んで1人になった私に誰も手を差し伸べてくれなかった。中途半端に大きい私を引き取りたがる親戚などいなく、私は1人で生きて行くことになった。突然、両親を失い悲しみに暮れていた私は仕事も長続きしなかった。いつしか、親戚に家も奪われ仕事もクビになり1人路地裏を彷徨う生活。
誰もが見て見ぬ振りをする毎日。
これが一生続くと思っていた時だった。

その日は雨が降っていた。

身体を濡らさないよう物陰に隠れていた時、ふと影がさした。

「ローナ・ダフマンさん?」
「え?」

久し振りに呼ばれた自分の名前に顔を上げる。そこには、見た事もない様な綺麗な人が傘を差して立っていた。

「初めまして、私はシャロン・ディノスと言います。ずっと貴女を探していました」
「私を…?」

こんな薄汚れた私に何の用だろう。シャロンと名乗ったこの人は、私に優しく話しかける。

「貴女のご両親の件を新聞で読んで貴女に会いに来ました。………単刀直入に言います。ローナ・ダフマンさん、貴女は両親の仇を取りたくないですか?」
「両親の仇…」

両親が死んだ時、考えなかった訳じゃない。憎くて憎くて殺した相手に復讐したいと思った。でも、こんな何の力もない小娘に一体何が出来る?そんな想いで1度は諦めたこの激しい想い。

「2度と貴女の様な辛く悲しい想いをする人が現れない様に。何より、両親の仇を取る為に」
「………本当に、仇が取れるの?」
「取れます」

そう力強く言った目の前のこの人は、私に手を差し出す。

「今直ぐは無理ですが、必ず。10年経ってでも必ずやり遂げましょう。いえ、やり遂げてみせます」

その迷いない真っ直ぐな目を見て、私はその人の手を取った。私は、確信したのだ。

ーーこの人は必ず仇を取らせてくれる。

そうして5年後、シャロン様は約束通り仇を討ってくれた。
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