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第3章

No.117 アナ=ベアルの今後

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「ティア嬢を呼び出した理由だけど」

アンドレイ殿下は、書類を机に置き手を組んで話し出した。

「2日前のアナ=ベアルの件で呼んだんだよ」

その言葉にスッと背筋が伸びる。

「ギルバートさんやアニー魔術師団長から話は聞いたよ。怖かっただろ?」
「…はい」

あれ程、人から明確な殺意を受けた事が無かった。殺意を向けられて身体が硬直し怖くて動けなかった。あの時、クリスやノア、お父さんやアニーさんが居なかったら、私はあの時死んでいた。

(本当に怖かった…)

あの時の恐怖は、身体が…心が覚えている。
夜、眠ると夢の中に現れる程に。

「辛い事を思い出させるが、話を聞かせて貰うよ」
「大丈夫です」

震える手を隠し、頷く。

「…そうか。では、今からいくつか質問をする。それに答えてくれ」

そう言って殿下は質問をする。

「アナ=ベアルから恨まれる心当たりは?」
「…多分」

私は、話した。
アナがヒロインで、私が悪役令嬢。そして、私が何かの役割をしていない事を責められていると。

入院生活が長かった前世の月宮雫は、乙女ゲームなどをした事がなくヒロインや悪役令嬢などを知らなかった。

「そうか。…つまり、アナ=ベアルによる理由無き逆恨みだね」
「ですね。俺もこんな意味の分からない逆恨み初めて見ました」

殿下の言葉に、フォレン先生も同意する。

「では、アナ=ベアルを教師達による監視から逃す存在に心当たりは?」

そう言われて思い浮かべたのは、ノアに言われた反乱軍の存在。だが、それを話すと要らぬ心配をかける。何より、この事はノアが直接話すと言っていた。

「分かりません」
「…そうか。今回アナ=ベアルには、無期限の監視と制約付きの刑が言い渡された。制約の内容は、『今後一切、悪意を持って人に近付く事を禁ずる』。アナ=ベアルは、今後自身が悪意を持った相手に近付く事が出来なくなる」

つまり、私に悪意を持っても制約により近付く事が出来ない。それを聞いて、身体から力が抜ける。

「これで、君の安全は保証される」
「ありがとうございます」

殿下に向かって頭を下げる。

「礼には及ばない。これは、当然の措置だ」

その後、殿下にもう一度お礼を言ってフォレン先生と一緒に部屋を出る。

「これで一応、ムーンライドの安全は確保されたな」
「はい」

フォレン先生が私の頭を撫でる

「人に殺されそうになったんだ。怖かったろう?」

優しくそう言われて、ジワリと涙が滲む。

「好きなだけ泣け。泣けば心が軽くなるぞ」

その言葉に涙が溢れた瞬間。

「ティア!!」

私を呼ぶ声が廊下に響いた。

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