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第3章

No.111 恥ずかしい

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「おはよう」
「っ!」
「クリスさん。おはようございます」

次の日、友達と教室にやって来たクリスが私達に挨拶をする。私は、昨日の事を思い出しいつも通りに出来なかった。

(だって、鼻を噛まれたんだよ?普通、人の鼻を噛む?)

それに、なんだか昨日からクリスを見ていると胸がドキドキするのだ。

(おかしい…。今までこんな事無かったのに)

「ティア?大丈夫?」
「うわぁっ!?」

突然、至近距離からクリスに顔を覗かれる。驚いて思わず変な声が出てしまった。

「だだ…大丈夫!!むしろ普段より元気だよ!」

主に、心臓が。

「そう?なら良いよ」

そう言って、クリスは私の頭をポンポンと軽く叩く。私は、その様子をポカーンとしたマヌケ顔で見つめる。

「お~い!クリス~」
「今行く。それじゃ、後でね」

友達に呼ばれたクリスは、そう言って友達の方に向かう。

「きゃ~!!ティアちゃん、昨日クリスさんと何かあったの?」

そう言われて思い出した鼻カプ事件。

「………………………特に何も」
「…ティアちゃん、嘘ヘタだね」

呆れた様なサーシャの目が痛い。

「何があったの?あっ!もしかして、付き合う事になったとか?」
「付き合う!?あああ…あり得ないよ!」
「そうなの?てっきり付き合い始めたのかと…。さっきのクリスさん、すっごく甘い顔してたから」

Wデートしたかったのになぁ…と残念がるサーシャ。もし仮に付き合っていたとしても、王太子殿下と一緒のデートは御免被りたい。

「………そんなに甘い顔してた?」
「うん。ティアちゃんにだけ、すっごく甘い顔で話してたよ」
「うぅ~」

恥ずかしい。何が?と訊かれたら答えられないが、とにかく無性に恥ずかしい。

(昨日からどうなってるの?)

「ほら、席に着け~。授業を始めるぞー」

フォレン先生がそう言って教室に入って来たので皆、急いで席に着く。

「今日は、このクラスに編入生が入る事になった。ほら、入って来い」

そう言って、廊下にいる誰かにフォレン先生が声をかける。

「はい」

(ん?この声…)

「「「「キャ~~!!」」」」

クラスの女子達の悲鳴が上がる。

入って来たのは、背の高い男子生徒。
黒いサラサラの肩までの髪。ルビーの様な真っ赤な瞳。爽やかな朝の筈なのに、艶のある何処か気怠げな夜の様な雰囲気と色気を纏う彼。

「今日からこのクラスに編入する事になった、ノア=ドラニアです。よろしく」

(ノアっ!?)

にっこりとノアが笑うと、数人の女子がふらりと倒れる。

(どうして此処に…)

その時、昨日のノアの言葉が頭に蘇った。

『本当は、僕も凄く寂しいよ。でも、

確かに、「直ぐにまた会えるから」とは言っていた。だが、こんなに早く…しかもこんな形でだとは思わなかった。

思わずクリスを見ると、何やら苦々しい顔でノアを睨んでいた。

(それ、幼馴染に向ける顔じゃないでしょ) 

「これからドラニアと仲良くしろよ。それじゃあ、今日の授業を始めるぞ」

そう言ってフォレン先生は授業を始めた。
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