ちょっとハッとする話

狼少年

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身鏡様

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呪いの手鏡は存在します。実際に私はそれを手にした事もあるのだから間違いありません。

いつ?何処で?どんな風に?どんな形をしてたの?呪われて大丈夫なの?
色々な人に色々と聞かれますが、順を追って説明してくことにしますね。

あれはまだ私が小学校の低学年くらいの頃でしょうか。って事はもう30年以上も前の事ですよ。あの頃は何もかも煌めいていて毎日が楽しくて、大人になったらもっと楽しいと思っていましたが、蓋を開けてみたら大人は大変ですね。

おっと話が逸れましたね。戻りましょう。
そう…私が小学生のクソガキだった頃です。実家の隣の離れに祖母が1人で住んでいました。
祖母はとても厳しく意地悪な人で、昔話に出て来る隣の意地悪ばぁさんを想像してくれればそのままです。
私はそんな祖母の事が恐くて嫌いで仕方ありませんでした。それもそうです。家で遊んでいても庭で遊んでいても祖母は私を監視し、そしていつもこう言うのです。

「そんなことをしたら身鏡様に怒られるぞ」



耳にタコが出来る程聞かされた身鏡様とは何なのか?私はその時は知りません。知らないけれども祖母は言うのです。

「身鏡様はいつもお前の事を見ている。今の行いが必ずお前に返って来るから、毎日毎日精進しなさい」



いつしか私も身鏡様とはとても恐い神様だと思い込んで、同級生達に何かに付けて身鏡様と口にしていたら、あだ名が「神様」になった程です。

そんな私が悠々凡々と毎日を繰り返し、12歳の誕生日を迎えた日の朝5時。私は父と母に起こされました。
父も母も何故か真っ白な服に身を包み、私も同じ服を着た訳です。後にそれが白装束と言う衣装である事を知るのですが、その時は知りません。

まだ早朝で暗い中を父と母は「眠いだ、嫌だの、面倒くさい」などと言う私を連れて離れの祖母の家に向かいます。

祖母も同じく白装束を身に纏い私達を待っていました。いつもは閉まっている仏壇の扉が開いていて、その中には手鏡が一つ祀ってあります。パッと見普通の手鏡です。本当に普通の……

あれは儀式なのでしょうか……何やら祖母がブツブツと呪文みたいな文句を唱え出します。聞き取れたのは私の名前と身鏡様という言葉。父も母もいつもとは違う必死の形相でした。一通り儀式が終わったのか祖母が私に仏壇の手鏡をそっと渡してきて、一言

「身鏡様を覗き給え」

私は言われた通りに手鏡を覗き込みます。
そこには鏡を覗く私の顔が。
何だ……ただの鏡じゃないかと思った矢先です。






「ピッ」と頭の何処かで音がなり。

次の瞬間

視界に現れたのは

『2953』

という不可思議な数字。父と母は私に真剣な顔で尋ねてきます。

「いくつだ?」と

私がその数字を伝えると、母は泣き崩れ、父は下を向いたまま動かなくなりました。
祖母はというと今までに無い程の優しい顔で私を抱きしめてくれました。
意味がわかりません。






兄は20歳の若さでこの世を去りました。

実はこれ全て兄の話です。私と言った方が話しやすかったので……
まぁ半分以上は私の実体験ですがね。



もうお気付きかと思いますが。視界に現れた数字はその人に残された日にちなんです。
呪いの手鏡の正体は寿命を教えてくれる便利な物だったと言う訳ですが……


あなたは自分の死ぬ日を知りたいですか?



え?私の数字?私の数字ですか……
私の数字はあと………………

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